OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

熱気ブッ飛びの熱気

2012-07-30 15:07:06 | Soul

In The Beginning... / The Isley Brothers & Jimi Hendrix (T-Neck / Buddah)

すっかり成功を勝ち得た偉人の下積み時代を語る事は、その頃に苦楽を共にしたり、あるいは様々に世話をした云々という、些かの自慢話が傍目には嫉妬に思われてしまうわけですが、それでも昔の恩義を忘れないのが本当の偉人というものでしょう。

例えば未だ音楽史に屹立するジミ・ヘンドリクスが、その駆け出し時代から多くのR&Bスタアのバックバンドで働きながら、常に自らの個性を磨く事に邁進していた姿を我々が知ることになったのも、当時の音源がそれなりに纏められているからに他なりません。

平たく言えば、それは人気が爆発したジミヘンに便乗した商売なんですが、それを全て、一概に否定するのは大間違いでしょう。

もろちん中身は玉石混合、う~ん、これは酷いなぁ……、と呆れるブツも多い事は確かなんですが、しかし本日ご紹介するアイズリー・ブラザーズのLPは、なかなかの充実作として、殊更サイケおやじは愛聴している1枚です。

 A-1 Move Over And Let Me Dance Part 1
 A-2 Have You Ever Been Disappointed Part 1 & 2
 A-3 Testify Part 1 &2
 A-4 Move Over And Let Me Dance Part 2
 B-1 Wild Little Tiger
 B-2 The Last Girl
 B-3 Simon Says
 B-4 Looking For Love

ご存知のとおり、ジミヘンがアイズリー・ブラザーズのバックバンドだったI.B.スペシャルズに雇われていたのは1964年前半であり、そこを一時的に止めた後、1965年夏頃から再び同バンドに出戻ったわけですから、何もアイズリー・ブラザーズがジミヘンの個性を育てたとばかりは言えません。

ところがここに纏められた上記のトラックを聴いてみると、特にA面の4曲においては、ほとんど完全にジミヘン特有の「らしさ」が出来上がっているんですねぇ~~!?!

結局、これは個人的な思い込みもありますが、アイズリー・ブラザーズ本来の持ち味であるファンキーロックとジミヘンがやろうとしていたアイディアの相性が良かったのでしょう。

中でも初っ端に収められた「Move Over And Let Me Dance Part 1」や続篇の「Move Over And Let Me Dance Part 2」におけるファンクロック丸出しのリズムカッティングや早弾きフレーズは、完全に後のジミヘンがモロ!

実は良く知られているように、このアルバムに収められたトラックはアイズリー・ブラザーズが1964&1965年にシングル盤として出した音源ばかりなんですが、あえてジミヘンの名前を出して再発するからには、その天才のギターを前面に出したリミックスを施した事が効果的!

それはアップテンポで疾走する「Testify Part 1 & 2」の爆発的なギターワークに驚愕させられる事にも絶対的で、残念ながらサイケおやじはオリジナルミックスのシングルバージョンは何れも聴いたことが無いんですが、いやいや、ジミヘン中毒患者としては、このアルバムバージョンに手を合わせるばかり♪♪~♪

ひぇ~~、本当に凄いんですよねぇ~~♪

そしてスローテンポの「Have You Ever Been Disappointed Part 1 & 2」が、これまた味わい深い仕上がりで、本来はもっと全面に出ていたであろうホーンセクションよりはグッと強くリミックスされたジミヘンのギターゆえに、アイズリー・ブラザーズ特有のネチネチしたメロウ感覚が増幅されている感じです。

しかし一方、B面に収録のトラックは、どのように足掻いても当時の流行に沿った普通のポップス系R&Bの域を出ておらず、やはりシングル盤として世に出す以上は革新性よりは最大公約数的な大衆ウケを狙う常道の結果なのでしょう。

このあたりを付属の資料から整理すると――

 「Testify Part 1 c/w 同 Part 2 (T-Neck 501 / 1964)」
 「The Last Girl c/w Looking For Love (Atlantic 2263 / 1964)」
 「Simon Says c/w Wild Little Tiger (Atlantic 2277 / 1965)」
 「Move Over And Let Me Dance c/w Have You Ever Been Disappointed (Atlanitc 2303 / 1965)」

となりますので、制作は何れもアイズリー・ブラザーズが主導する自己のレーベル「T-Neck」なれど、その音源を発売していたのはアトランティックという大きな会社であれば、そういう方針を非難する事は出来ません。

もちろん激しいギターワークを演じていたジミヘンのプレイにしても、おそらくは相当に抑えられたミックスであったのが、オリジナルシングルの実相だと思われます。

また後に正式メンバーとなる年少の弟・アーニーが、この頃のジミヘンのギターに大きな衝撃と影響を受けた事は、特に1970年代以降に発表されていくアイズリー・ブラザーズのアルバム、あるいは同時期の巡業ライプ音源に顕著ですから、そうした有名な逸話の裏付けとして、ジミヘンの参加をウリにした音源集が1971年に出されたのは意味深でしょう。

企画やリミックスの作業も含めて、おそらくはアーニーのアイディアが相当に大きかったと推察しております。

ということで、このLPはジミヘンの死後に出た事により、なにか無断で商売をやってしまった感もありますが、もしもジミヘンが存命だったとしても、これは充分に発売されていたでしょうし、本人も納得されていたと思います。

それほど特にA面でのジミヘンのギタープレイは凄いですし、近年に纏められた4CD+1DVDのアンソロジーにも、これらの幾つかが入れられている事からして、遺族も公認するしかない素晴らしさのはずです。

とすれば、音質良好な当時のライプ音源も発掘が望まれますねぇ~。

とりあえず、暑さもプッ飛ぶ、逆療法的な熱演というわけです。

コメント (2)
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