■You're Only Lonely / J.D. Southre (Columbia)
仕事でも勉強でも、そして人間関係でも、とにかくそういうものがハードになった時、生きとして生ける者は、須らく自らの孤独を感じるのではないでしょうか?
少なくともサイケおやじは、それを自分に言い聞かせ、なんとか今日までやってきたわけですが、そこにはジャストミートの歌や演奏があった事も確かです。
例えば本日ご紹介する1979年の大ヒット曲「You're Only Lonely」は、まさにそのものズバリ!
君が孤独で ちっぽけな存在と感じるとき
君は自分を抱きしめてくれる人が必要さ
恥ずかしがることはない
君はただ 孤独なだけなんだ
と歌われてしまっては、ひとりにしておいてくれ……、なぁ~んて言っていても、本音はそういう言葉を求めているんですから、恥ずかしながら、甘っちょろい感傷に酔ってしまいそうな……。
まあ、そういう、せつなさをグッと裏返しの共犯関係に導いてくれるのも、音楽の素晴らしいところかもしれません。
歌っているジョン・デヴィッド・サウザーは、ウエストコーストロックでは1970年代初頭から、まさに縁の下の力持ち的存在で、一番知られているのはイーグルスのグレン・フライとの交友でしょう。
なにしろ同じデトロイト出身という事もあり、一緒にロングブランチ・ペニーウィッスルという、全く売れなかったデュオグループをやっていた履歴も含め、イーグルスが結成されて以降も「我が至上の愛 / Best Of My Love」「James Dean」「New Kid In Town」「The Sad Cafe」「Heartache Tonight」等々の名曲共作者として、ファンからは「6人目のイーグルス」とさえ称された事は有名でしょう。
また、そうした流れの中にはリンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル、ジェームス・テイラー、アンドリュー・ゴールド、ダン・フォーゲルバーグ、カーラ・ボノフ、ネッド・ドヒニー等々、本当に数え切れないほどのシンガーソングライターや人気歌手との接点が多々あり、曲提供やプロデュース、そしてレコーディングに参加してきた事例は今日まで夥しく残っているのですから、J.D.サウザーこそが、ウエストコーストロックを実質的にイメージづける存在なのかもしれません。
もちろん自身も1972年頃からリーダーアルバムを作っていますし、1974年には元バーズのクリス・ヒルマン、そして元バッファロー・スプリングフィールド~ポコのリッチー・フューレイと組んだサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドで2枚のLPを出しています。
ところが後者は当然のようにヒット盤として売れながら、J.D.サウザーは何故か地味な存在という印象でしたし、自分名義のアルバムも一般的には注目度の低いものだったと思います。
極言すれば、ウエストコーストロック好きだけにウケていたのが、J.D.サウザーでした。
ですから、時が流れた1979年、この「You're Only Lonely」が突如として大ヒットしたのは、長年(?)ウエストコーストロックに親しんできた者には驚きであったはずですし、また同時に当然! という思いがあったのも事実でしょう。
それは何もJ.D.サウザーが、これまでとちがった事をやったのではなく、確かにサウンド作りは時代の傾向としてタイトになっていますが、自らの書いた曲の構成やメロディの旨みは、それほど変わっていないのです。
ただし、J.D.サウザーにしても、旧態依然で漫然と曲を作ったわけでは、もちろんありません。プロとしてリアルタイムの売れセンを狙っていたことは非難されるべきものではなく、それはAORと懐メロポップスの巧みな融合♪♪~♪
当時から言われていたことですが、全篇の甘いムードから滲み出る胸キュンフィーリングは、元祖シンガーソングライターのひとりにして、往年のスタア歌手だったロイ・オービソンが1960年に放った大ヒット「Only The Lonley」を、歌詞の内容も含めて、強く想起させられます。
そして前述したとおり、タイトなバンドサウンドはワディ・ワクテル(g)、ドン・グロニック(p,key)、ケニー・エドワーズ(b)、リック・マロッタ(ds) という、まさに当時最新型のR&Rがやれる強靭なリズム隊が中心となって作り出されているんですから、これが流行らなかったらヒットチャートの神様の逆鱗にふれるにちがいありません。
それほど「You're Only Lonely」は、タイムリーヒットのウエストコーストロックとして、当時のラジオや若者が集う店ばかりではなく、パチンコ屋とか炉端焼き、あるいは商店街の有線BGM等々で流れまくっていましたから、刷り込まれている皆様も大勢いらっしゃるはずですよねぇ~♪
もちろんレコードもシングル盤だけではなく、同名LPは売れまくったわけですが、そのジャケットコンセプトが、これまた楽曲とジャストミートする秀逸なもので、J.D.サウザーの悄然とした佇まいこそが、男の哀愁とカッコ良さの代名詞だった事は言うまでもありません。
なんとっ! これをクリソツに真似たジャケットデザインでレコードを出した日本人歌手も!?
思わず失笑した皆様はリアルタイムをご存じの方々と拝察致しますが、しかし今のサイケおやじの心境は、まさに、この状態……。
もちろんカッコ良さは現実的に微塵もありませんが、仕事の先行きのシビアさにガックリしているのが本音であります。
ということで、まあ、孤軍奮闘を装ってみても、誰も助けてはくれませんから、せめて「You're Only Lonely」でも聴きながら、和みと自己憐憫に浸りきるという、些かM的な快感に覚醒しているところです。