OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ELPのあの日にかえりたい

2012-07-12 15:30:38 | Rock Jazz

Trilogy / Emersom Lake & Palmer (Island)

現在では当然の如く開催されている外タレのコンサートも、昭和50年頃までは非日常的な大イベントであって、それはもちろん人気ミュージシャンの来日そのもが極めて稀という現実の表れでした。

しかし一方、昭和45(1970)年頃からは国内でのコンサート企画そのものが大規模になっていた流れもあり、外タレ公演が野球場や野外といった大観衆の前で行われる事も、尚更に非日常感を盛り上げていたように思います。

例えが昭和47(1972)年7月に敢行された後楽園球場におけるエマーソン・レイク&パーマー=ELPの初来日公演は、当時高校生だったサイケおやじが最初に実体験した巨大イベントライプであり、しかも前座が、これまた同時期の人気バンドだったフリーなんですから、たまりません!

過言ではなく、その熱い興奮は、全く今も冷めやらぬまま、強烈な印象になっています。

もちろん、その中には会場の雰囲気に酔わされたという部分が少なからずあって、実はこの時のライプは入れてもらっていた同好会のバンド組メンバー全員で出かけたという思い出も相互作用しています。

それはチケットの手配や、そもそもこのライプに行こうっ!

と発議したのが、その頃にキーボードを担当していた上級生の女子であり、キース・エマーソンに夢中になっていた彼女とすれば、当然の行動だったのですが……。

ちょいとサイケおやじの視点から独断と偏見の状況を記しておけば、彼女は本当に日頃は無口であって、一応は2年間、同じバンド組に所属していながら、彼女が自ら喋った現場にサイケおやじが遭遇したのは、この時を含めても5回まではなかったと思うほどですよ。

なにしろ最初に練習に参加させてもらった時、いろんな段取りの打ち合わせでも全く寡黙で、この人は、いったい……???

と強く思ったんですが、リーダーだった上級生から、「ちゃんと、わかっているから」とアドバイスされ、半信半疑の納得を強いられたぐらいです。

ところが、このELPのコンサートライブに関しては実に積極的で、こうして現場会場に集い、いよいよオープニングになった時には既に半狂乱というか、日頃の地味~なムードは何処へやら!? 失礼ながら、こんなに乱れる正体って、女の性……!?

なぁ~んて、興味本位と怖さとヘンテコリンなスケベ心で、肝心な演奏がスタートする前から舞い上がってしまったですよ。

しかし、この時、初めて接したELPのライプは本当に凄くて、洋楽雑誌のレポートで読んだとおりにキーボードと格闘し、ミニムーグを弾きながら走り回るキース・エマーソン、大車輪ドラミングのカール・パーマー、そして緩急自在の力んだ歌声と強靭なベースワークや繊細なギターを披露したグレッグ・レイクが、まさに三位一体の熱演ばかり!

ちなみにジョイントとはいえ、実質的には前座であったフリーは、ポール・コゾフとアンディ・フレイザーが抜けていた事もあり、個人的には悪くなかったと思いたいのですが、最初から何か空虚な雰囲気は否定出来ませんでしたから、いよいよELPが登場し、当時の最新曲だった「Hoedown」がド頭から鳴り響いた瞬間、大袈裟ではなく、全身の血液が沸騰逆流する感じでしたねぇ~~♪

さて、そこでようやく本日の1枚は、まさにそのリアルタイムで発表されたELPの力作アルバムです。

 A-1 The Endless Enigma Part One / 永遠の謎 パート1
 A-2 Fugue
 A-3 The Endless Enigma Part Two / 永遠の謎 パート2
 A-4 From The Beginning
 A-5 The Sheriff
 A-6 Hoedown
 B-1 Triogy
 B-2 Living Sin
 B-3 Abadown's Bolero / 奈落のボレロ

まず特筆すべきは、ELPのような人気バンドが、この結成以来4枚目のLPで、初めてジャケットにメンバーの肖像が使われた事です。

まあ、正直、ルックスをウリにするようなグループではありませんが、当時のプログレはレコード全体である意味での抽象的なイメージ戦略が当たり前であって、それはキングクリムゾンやイエスの場合を鑑みても明らかでしょう。

ですから、あえて表ジャケットにメンバーが登場する事は、文字通り、なかなか自信に溢れていた表れだったのかもしれません。

そして実際、内容密度と完成度の高さは素晴らしく、A面冒頭から3トラック横断で演じられる「永遠の謎」は、フリージャズや欧州教会音楽、さらにはロックジャズの醍醐味に溢れた見事な構成と確かな演奏力が堪能出来ますよ。

またアコースティックな美メロ曲「From The Beginning」は当時、シングルカットもされていたほどのキャッチーさが、これまた如何にもELP!

つまり怖いほどの深淵な企みと親しみ易さのバランス感覚が絶妙であり、それは「The Sheriff」や「Hoedown」にも受け継がれながら、B面の重厚な世界で再び刹那の花を咲かせるのですから、一部には無用の大作主義と揶揄されつつも、聴いていて難しい……? なぁ~んいう心配は御無用です。

それはアルバムタイトル曲「Triogy」が、そのまんま三部作であり、また偏執的な「奈落のボレロ」にしても、ストレートな熱気中心の作風はプログレ=頭でっかち!? という一般認識を覆すものじゃないでしょうか。

ですから、ライプの現場の狂熱の中では、このアルバムから「Hoedown」「The Sheriff」「奈落のボレロ」が長らく定番演目になっていますし、「From The Beginning」にしてもグレッグ・レイクのソロ曲という側面は強いものの、これが後のアルバム「四部作」シリーズに繋がるわけですから、侮れませんねぇ~♪

結局、今となっては次なるアルバム「恐怖の頭脳改革」があまりにも強烈無比な大傑作である事を我々は知っているだけに、この作品が単なる過渡期の1枚と評価される意味も理解は出来ますが、リアルタイムじゃ~、これこそ無敵のELP!

告白すれば真剣にシビれきっていたサイケおやじにしても、お金が無くて当時は買えず、それでもシングルカットされていた「From The Beginning」だけは入手するという苦し紛れをやっていたんですが、しかし友人から借りてアルバムを鑑賞するという正義(?)は遂行しています。

ということで、どうにも毎年7月になると、ELPの後楽園球場ライプが青春の思い出として蘇ってまいります。

ちなみに件の上級生女子はライプの現場で演じた狂態はどこへやら、以降も相変わらず寡黙にエーストーンのキーボードを弾いていましたが、もしかしたら何かのきっかけで暴れのアクションをやってしまうんじゃ~ないか?

なぁ~んて、失礼な妄想を抱き続けたのは、サイケおやじの本質的なスケベ心の発露です。もちろん恋愛感情なんてものは微塵もありませんが、女という生き物はセックスの時には野獣になる事も!? 等々のエロ本記事に感化されていたサイケおやじとしては……、という苦しい言い訳は弄しておきます。

しかし、例えなんであろうとも、「タルカス」や「展覧会の絵」等々を力いっぱい演じてくれたあの日のELPは絶対神話になっています。

そして叶うならば、あの日の帰りたい!

コメント (13)
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