OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スカッと熱くいきましょう

2005-12-20 17:47:29 | Weblog

ようやく天候が回復しつつあるのか、今日は比較的穏やかでした。しかし融けかかった雪は始末が悪く、除雪の手が回らない道路はシャーベット状態で、相変わらず車はノロノロと……。

こんな時こそ、スカッと楽しいジャズを聴きたいということで、本日は――

Pairing Off / Phil Woods (Prestige)

一応、フィル・ウッズ名義になっていますが、プレスティッジお得意のジャム・セッション盤か……? と思いきや、中身はきちんと企画にスジを通した面白いアルバムです。

それはタイトルどおり、フロントのトランペットとアルトサックスに名手を2人ずつ配し、そこでバトル物の趣向を盛り込んだからです。

参加メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ジーン・クイル(as)、トミー・フラナガン(p)、ダグ・ワトキンス(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) というオールスターズで、録音は1956年6月15日とされています。

で、ジャズにおけるバトル物の面白さは、単なるアドリブの競い合いに加えて、わざわざ演奏スタイルが似ている者を対峙させるという趣向があるのです。

その意味で、フィル・ウッズとジーン・クイルは、共にチャーリー・パーカー直系のスタイルを白人らしくスマートに解釈したアドリブ・フレーズが持ち味でしたから、これ以外にもバトル物のアルバムを多数発表している人気コンピでした。

またケニー・ドーハムはモダンジャズ創成期から活躍する名手、それに対するドナルド・バードは当時メキメキと売り出していた新鋭という立場でしたが、共に歌心を大切にしていた黒人ハードバッパーでした。

ということで、このアルバムはその2人~4人の絡みと鬩ぎ合いにポイントを置いた作りになっています。

まず初っ端の「The Stanley stomper」はグルーヴィなフィル・ウッズのオリジナルで、先発はもちろんフィル・ウッズ♪ タメの利いたドライブ感満点のアドリブを披露すれば、続くドナルド・バードも粘っこいフレーズを積み重ねていきます。しかし続くジーン・クイルは最初から突っ込んだような激情を吐露、それにつられて、いつもは冷静なケニー・ドーハムがリズム隊にノセられてしまうのは臨場感があります。

演奏はこの後、ピアノとベースのソロを経て、いよいよお目当てのバトル・シーンへ突入! ウッズとクイル、バードとドーハムがそれぞれに4~8小節ずつ対決していきますが、ウッズとクイルはスタイルが酷似していますので、聴き手は集中力を要求されます。個人的にはウッズはドライブ感が強く、クイルはややギスギスした部分が持ち味かと、聞き分けています。

幸いにも、このアルバム裏にある原盤解説では、曲毎にソロ・オーダーが明記してありますので、楽しく鑑賞出来る配慮は嬉しいところです。

2曲目は仄かな哀愁漂うアップテンポの「Cool Aid」で、ウッズ→ドーハム→クイル→バードとフロント陣のソロが回され、バトルの部分もそのとおりの掛け合いが熱くさせてくれます。フィリー・ジョーの煽りたてるドラムスも見事です。

B面に入っては、まず「Pairing Off」がアルバム・タイトルになっただけあって強烈です。かなりアップテンポな演奏ですが、テーマ部分の即興パートが乱れそうで乱れないあたりはスリルがあります。

アドリブ・パートはドナルド・バードが先発で快調に飛ばせば、ジーン・クイルは最初から熱血スタイルをたっぷり披露します。続くケニー・ドーハムは落ち着いた中にも歌心を大切にしたフレーズがベテランの味♪ そして大トリに登場のフィル・ウッズは持ち味のドライブ感に満ちた猛烈なソロを展開するという、4者の持ち味が存分に発揮された名演は、ピアノ・ソロを挟んで激しく対峙していくので、完全に熱くなります。おまけに、そこにフィリー・ジョーのドラム・ブレイクまでもが割り込んでくるのですから、たまりません。

そして大団円の「Suddenly It's Sprin」は、一応、スタンダード曲ということになっていますが、これって、スタン・ゲッツ(ts) でお馴染みの人気曲「ディア・オールド・ストックホルム」に良く似ているのですから、演奏は哀愁という隠し味が効いています。

もちろんウッズ対クイル、バード対ドーハムのバトルを中心として展開されるアドリブ合戦は聴き応えがありますが、ここは素直に曲の雰囲気に浸りきった各人の名人芸に酔いしれて下さいませ♪

ちなみにホーン対決がメインではありますが、実は縁の下の力持ち的なリズム隊も素晴らしい出来で、特にフィリー・ジョーはクッションの効いたドラムミングで本領を発揮しています。

ということで、これはジャズ名盤のガイド本にも、あまり紹介されないアルバムではありますが、ジャズの楽しさに極まった作品だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僻みモード

2005-12-19 17:33:49 | Weblog

今日も忙しい限りでした。結局、年末年始は実家に戻れず、というか、今年は雪がたっぷりあるので、家族、親戚、友人達が赴任地の私の家にやってくる展開になりました。

でも、やつらは遊び、こっちは仕事……。僻みモードに入りつつ、本日の1枚は――

Sketches Of Spain / Miles Davis (Sony)

歴史上、名盤ということになっていますが、私には理解出来ないんです……。

もちろん、スパニッシュ・モードに哀愁を感じるんですが、聴いていて、グッとこないですねぇ、これは……。

第一、マイルスがアドリブを吹いている気がしないです。

というこのアルバムは、マイルス&ギル・エバンスのコラボレーションの頂点とされる作品で、録音は1959年11月と1960年3月とされています。メンバーはマイルスが主役で、ギル・エバンスのアレンジを演奏するオーケストラの面々、つまり、作り物感覚が濃厚になっています。

演奏では、あまりにも有名な「アランフェス協奏曲」のジャズ・バージョンを筆頭に、ギル・エバンスの作編曲が冴えた演奏ですが……。

たいくつだなぁ……。ちっとも熱くなれないんです。

でも、名盤とされているんですから、いつかは私にも分かる時が来るはずだと信じて、思い出したように鳴らしてみるんですが、本日もダメでした……。トホホ……。

僻みモードが全開になりつつあります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白い地獄に熱いジャズ

2005-12-18 18:24:40 | Weblog

今日は本当に地獄見ました、白い地獄です。

朝から辺りは真っ白というか、猛吹雪でホワイトアウト状態……。車を掘り出す除雪はスノーダンプという大きなソリの様な道具を使うのですが、雪を乗せてこれを押すのは重労働で、ほとんど相撲の朝稽古です。ヘトヘトですよ……。

で、ようやく出発すると道路は除雪が間に合わないほど、雪に埋もれていますし、視界が悪くてノロノロ運転も恐いほどです。ここを歩いたら、完全に「八甲田山」の世界です。

ということで、本日は熱い、景気の良い1枚を――

A Blowing Session / Johnny Griffin (Blue Note)


瞬間芸が持ち味のジャズですから、とにかくアドリブの饗宴が上手くいけば名演になるかといえば、それは、否、だと思います。やはりそこに、纏め役というか、強力なリーダーが存在しなければ、ただの独り善がりで終わるのが、ジャズの恐さというものでしょう。

で、このアルバムは、リー・モーガン(tp)、ジョニー・グリフィン(ts)、ハンク・モブレー(ts)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、そしてアート・ブレイキー(ds) という、ウルトラ級のメンツで録音され、一応、ジョニー・グリフィンのリーダー盤として発売されたのですが、これが混乱の極みというか、全員が縺れてしまった問題作だと、私は思います。

録音されたのは1957年4月6日、まず、A面1曲目はモダンジャズの定番曲「The Way You Look Tonight」が、定石どおりに高速で演奏されますが、このバージョンは早吹き王のグリフィンが十八番とあって、尚一層、猛スピードになっています。それはテーマから最初のアドリブ・パートを一気呵成に駆け抜けるグリフィンの一人舞台と言えるほどですが、他のメンバーも負けていません。続くリー・モーガン、ハンク・モブレーが必死に追走していますし、コルトレーンも得意のシーツ・オブ・サウンドで夥しい音符を放出しています。

しかし、それだけの演奏です。つまり、リズム隊とのコンビネーションが上手くいっていませんし、聴き手の前を高速で通り過ぎる新幹線的なやりとりは、和めません。

そのあたりを鑑みて、最後のパートではアート・ブレイキーとグリフィンの対決やウイントン・ケリーとの絡みも聞かせますが、疲れます、正直言って……。

2曲目はグリフィンのオリジナルでファンキーな「Ball Bearing」ですが、ここでは先発のコルトレーンが、この曲をどう解釈していいのか迷ったように縺れます。その酩酊を上手く処理して現実に引き戻すのが、続くリー・モーガンの溌剌としたソロですが、三番手のグリフィンが全く独り善がりをやって、またまた演奏が混迷していきます。そしてリズム隊も完全にバラバラになりかけるのです。さらにハンク・モブレーまでもが、いつものペースを崩してコルトレーン調をやってしまい??? まったく落ち着かない演奏です。

B面のトップはスタンダード曲「All The Things You Are」がアップテンポで演じられますが、これもグリフィンの十八番とあって、テーマを独り悠然と歌い上げるところは流石に和みます。しかしそことアドリブ・パートのバランスの悪さは全く遺憾です。続くコルトレーンも好き勝手にやっているだけのように聞こえます。ただしリー・モーガンはマイペースながら、演奏そのものを大切にしていて好感が持てますし、次にハンク・モブレーが出てくるあたりでは、ブレイキーのドラムスも絶好調でジャズ・メッセンジャーズを想起させてくれます。

あぁ、そうか!♪ このアルバムはブレイキーをリーダーとして、つまりジャズ・メッセンジャーズの作品として聴けば良いわけねっ♪ するとどうでしょう、これまで雑と思われてきた演奏が、急にイキイキと♪

こうして覚悟が出来てみると、オーラスのブルース「Smoke Stack」が爽快に聴こえてしまいます。ウイントン・ケリーの颯爽としたイントロに導かれたテーマ・リフの楽しさからグリフィンがグルーヴィにジャズ魂を爆発させます。もちろんブレイキーとのコンビネーションもバッチリ♪ そして続くリー・モーガンも何時もの調子でリズムに対する自在のノリを聞かせますし、モブレーはやや縺れ気味ですが、ここではブレイキーの煽りが強烈です。しかし残念ながら次のコルトレーンが思い余って技足りず状態……。それでも執拗に突っ込んでいくリズム隊は最高です。これがハードバップです!

ということで、これは裏メッセンジャーズの作品として聴きましょう。実際、グリフィン、モーガン、モブレーは歴代メッセンジャーズのレギュラーとして活躍したわけですし、あらためてブレイキーのリーダーシップの凄さに最敬礼の1枚です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

男は余裕が必要

2005-12-17 16:30:52 | Weblog

なんか雪がまたまた、酷くなってきました。明日にかけて再び大雪だとか……。雪はもう、沢山です。こっちは休みも無く仕事責めだし、こんな時は余裕の演奏ということで、本日の1枚は――

Duddy Plays The Horn / Dexter Gordon (Bethlehem)

ダディとはデクスター・ゴードンのニックネームらしいです。実際、その名のとおり、お洒落な人だったらしく、マイルス・デイビスも、そのファッション感覚に大いに憧れ、影響されたとか……。

そのダディことデクスター・ゴードンは、モダンジャズ創成期から活躍する黒人テナー・サックス奏者で、このスタイルは豪放磊落! 堂々と真っ向勝負のビバップ魂が素晴らしい演奏者です。

今日一般的には、あの名作映画「ランウド・ミッドナイト」に主演した人という認識が強いかもしれませんが、確かにその作品はデクスターの存在無くしては名作に成りえなかったと思います。全く、生き様がジャズそのものだった人なのですよ。

なにしろ若い頃は麻薬との縁が切れず、超一流の実力がありながら、モダンジャズ全盛期の1950年代はほとんど表立った活動が出来ませんでした。もちろんシャバとムショを往復していたわけです。

で、このアルバムはその1950年代に残された、数少ない録音のひとつで、もちろん内容は極上です。メンバーはデクスター・ゴードン(ts) 以下、ケニー・ドリュー(p)、ルロイ・ビネガー(b)、ローレンス・マラブル(ds) という、西海岸黒人ハードバップの名手達で、録音は1955年9月18日とされています。

まずA面冒頭のタイトル曲「Daddy Plays The Horn」は、聴けば誰もが知っているというバラエティなオトボケ・フレーズのイントロから、悠然とプルースを吹きまくるデクスターが最高です。このミディアム・テンポでの堂々とした押し出しと粘りは、余人が真似出来る域ではありません。

2曲目の「Comfirmation」はチャーリー・バーカー作曲による、ビバップの代表的なナンバーで、デクスターはここでも悠然と自己主張しますが、躍動的なリズム隊とのコンビネーションも疎かにしていないのは流石です。

そしてA面ラストはスタンダード曲の「Darn That Dream」を情感をこめて、スローに展開してくれるデクスターが最高です。ほとんど朴訥とした雰囲気ですが、実直というか、余裕たっぷりな男の自信が溢れるハードボイルドな出来になっています。

B面は、まず軽快な「Number Four」でスタート♪ グイグイとバンドを引張っていくデクスターに対し、リズム隊も鋭いツッコミを入れるという楽しさが満点です。

続く「ニューヨークの秋」はデクスター畢生の名演として有名なバージョンで、悠然とメロディを歌わせていく貫禄の演奏になっています。

そしてラストの「You Can Depend On Me」はアップテンポで演奏され、当に大団円に相応しい狂騒が楽しめます。アドリブにおけるデクスター・スタイルの特徴である有名曲からの引用も楽しく、ケニー・ドリューも本領発揮の名演になっています。

演奏された時代的に、全くコルトレーンの影響が無い演奏なので、そこには刺激が無いかもしれませんが、実はここに聴かれるスタイルこそが、ジャズの本質である即興メロディの楽しさを味わえるものだと思います。

ちなみにデクスターはこの後、またまた引退状態になり、ようやく1960年末に一線復帰するのですが、その当時のジャズ界、特にテナー・サックスはコルトレーンが大きな注目を浴びており、所謂コルトレーン流の「シーツ・オブ・サウンド」が主流になりつつありましたが、デクスターは完全に我が道を行くスタイルを貫き通しました。

そしてそれ故にアメリカで仕事が無く、欧州へ活動の場を移したりもしましたが、その実力と人気は衰えることなく、否、寧ろ高まる一方でした。

また、このアルバムで共演したケニー・ドリューも同じ頃に渡欧していますが、本格的にブレイクするのは1970年代に入ってからで、それもデクスター・ゴードンとの繋がりからのものでした。そのあたりは今回割愛させていただきますが、所謂ハードバップ・リバイバルは、このアルバムの再現を目論んで成功したという、いささか穿った聴き方も出来る、これは余裕のアルバムです。

嬉しいことに、近々、超廉価盤として再発予定なので、ジャケ写からのリンクをチェックしてみて下さい。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白いジャケット、中身は熱い!

2005-12-16 16:35:09 | Weblog

昨日で雪も峠かと書き込んだら、本日は昼前から物凄い雪になってきました。アッという間に駐車場の車が埋まっていきます。ワイパーも動かなくなるほどの重い雪です。

あたり一面、真っ白というこんな日に、私はこのアルバムを聴きます――

Bill Evans The Paris Concert, Edition One (Blue Note)

ビル・エバンスはジャズの真実の巨匠♪ 自らのスタイルを歴史にした偉大なピアニストですから、死後も続々と発掘音源が登場しましたが、その中でも最高峰なのが、このライブ盤です。白いジャケットに気品があって印象的でしょう♪

録音は1979年11月26日で、フランス国営放送局によってラジオ放送用にレコーディングされたものなので、音質は良好♪ 加えて当日のエバンスは気合も充実というか、絶好調です。メンバーはビル・エバンス(p)、マーク・ジョンソン(b)、そしてジョー・ラバーバラ(ds) という最後のレギュラー・トリオです。

演目は当時の定番で、まず1曲目はポール・サイモンが作曲した「I Do It For Your Love」ですが、私は、あえて2曲目の「Quiet Now」から聴くことにしています。何故かと言うと、この曲はエバンス派のピアニストであるデニー・ザイトリンが作ったものなので、エバンスの最もエバンスらしい部分が良く出るというか、出せるように作ってあるのです。そしてそれをエバンス自身が演じるのですから、これはたまりません♪ 最初のワン・フレーズから辺りは完全にエバンス色に染まり、静謐なムードをたたえたテーマが、エバンス派だけのハーモニー感覚で処理されていくその時の流れに、身も心も委ねて後悔することの無い演奏になっています。ビートに対するアプローチとアドリブ・メロディの美しさには絶句です。もちろん、それに寄添いながら絶妙のサポートを展開するジョー・ラバーバラのドラムスも素晴らしい!

続く3曲目はミッシェル・ルグランが作曲した「Noelle's Theme」というのもニクイところで、エバンスはピアノ・ソロでじっくりとテーマ・メロディを独自の美意識で染上げていきますが、スローな展開なのに非常に力強い演奏になっています。

その部分は4曲目の「My Romance」で炸裂します。この曲は1950年代からの定番メニューで、エバンス自身によって多くの名演が残されていますが、このバージョンは最高です。何気ない出だしからブロック・コード弾きでテーマを変奏して行き、ベースとドラムスを呼び込んでからは一気呵成にトリオによる饗宴に突入します。それはまずドラムスとベースの熱い掛け合いからエバンスのピアノがそこに割り込んでいく修羅場が、自在のテンポで演じられるのです。ここではジョー・ラバーバラのブラシによるソロが素晴らしい限りです。ちなみに私はこの人の大ファンで、この人が参加しているアルバムは、ほとんど無条件で入手するほどです。つまり間違いの無いドラマーなんです♪ それはこの演奏を聴いていただければ、ご理解いただけるかと思います。あぁ、何度聴いても熱くなります。そしてスラッと入り込んでくるエバンスのアドリブの鮮やかさ! 名演です!

そして次もハイライト♪ これも私が大好きな曲の「I Love You Porgy」がエバンスの素晴らしいピアノ・ソロで演じられのです。この解釈の美しさ、力強さ、ひとつの音にこめられた情感の深さ……。ジャズの極致だと思います。ただ、聴き入るのみです。

その緊張感を和らげてくれるのが、続く「Up With The Lark」で、ここではマーク・ジョンソンのベースとのデュオで演じられますが、このマーク・ジョンソンが、また素晴らしい! 完全に自分の世界に没頭しているエバンスの尻を、これでもかと叩くような、そして演奏そのものをリードしていくような唯我独尊ぶりを発揮しています。

歴代ビル・エバンス・トリオには夭折したスコット・ラファロを頂点として何人もの優れたベーシストが去来しましたが、マーク・ジョンソンはその中でも特に優れた力量の持ち主だと思います。

この2人のコンビネーションは続く「All Mine」にも受け継がれ、耽美溢れる展開の中で濃密に絡み合うのでした。

もうこのあたりで聴き手は悶絶ですが、それをカラッとした爽快感に変えてくれるのが最後の「Beautiful Love」です。この曲も長くエバンスの十八番になっていますが、このバージョンも何時もながらの突っ込んでいくエバンスのノリを安心して楽しめる出来になっています。もちろん、それというのもマーク・ジョンソンとジョー・ラバーバラの素晴らしいサポートがあるからです。

ということで、これは名盤! 発売されたのは、確か1983年頃で、その時は当然アナログ盤としてエレクトラ・ミュージシャンというレーベルから出たのですが、演奏時間の関係から若干、編集疑惑がありました。ところがCD時代になってそのあたりが解消され、新生ブルーノート・レーベルから再発された時に、名盤として決定的な評価を得たようです。

とにかくエバンスのファンは必ずコレクションしているはずのアルバムですし、これからエバンスをという皆様にも、激オススメの1枚です。ちなみに第2集として「Edition Two」も同時に出ていますが、そちらも最高です。

あぁ、そうでした、割愛していた1曲目の「I Do It For Your Love」を、私は最後の最後に聴きます。鳴り止まない拍手がようやく終了した後、CDならではのプログラム機能でアンコール的に聴くと、これが心に染み入るのでした……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

没個性派ジャズも良い

2005-12-15 15:21:45 | Weblog

今日は久々に太陽、見ました。青空も広がりましたし、雪はもう沢山です。

仕事も殺人的に忙しいし、夜には、多方面の宴会にも顔を出さねばならないということで、音楽も刺激的な物は辛くなっています。ということで、本日はこれを――

Introducing Andrea Pozza Trio (Philology)

イタリア人若手ピアニストのトリオ・アルパムで演目は「イエスタディズ」「4月の思い出」「恋に恋して」「ラッシュ・ライフ」等々、定番スタンダード曲中心になっているという、当に日本人が大好きなパターンが満載です。

メンバーは Andrea Pozza(p)、Luciano Milanese(b)、Stefano Bagnoli(ds) という日本では、まだまだ無名の3人組で、録音は2003年3月14日となっています。

アンドレア・ポッツァというピアニストは、ガチガチの正統派で、スタイル的にはハンク・ジョーンズ~トミー・フラナガン系の、クセが無く、綺麗なアドリブ・メロディと崩さないリズム・タッチが持ち味ということで、没個性派なんですが、そのセンスの良さは光っています。

冒頭のアップテンポ曲「Fleeting Visions」は、どっかで聴いたことのあるような雰囲気の仄かなモードが入ったポッツァのオリジナルで、トリオはなかなかの快演を聴かせてくれますので、ここでアルバムに対する期待が高まります。

しかし2曲目の「Yesterdays」はオールド・スタイルというか、ビバップのエキセントリックなところが無い、素直なモダンジャズになっています。

さらに3曲目の「These Foolish Things」になると、さらにクセが無くなり、甘さも控えめというか、真剣に聴くとかえって疲れるという妙な演奏になっているのです。つまり、これっという美味しいアドリブ・メロディが出ないんですねぇ……。

この傾向はピアノ・ソロで演じられた、バド・パウエル畢生の名曲「I'll Keep Loving You」やエリントン楽団のヒット曲「Lush Life」になると、尚更、顕著になり、???の積み重ね……。

またアップテンポの「In Walked Bud」や「4月の思い出」というビバップの定番演目でも、まったくその通りの演奏しか出来ていないという、普通、こういうアルバムは駄盤に分類されるんですが、聴き進んでいくうちに、何故か不思議な魅力が漂ってくるのです。

これはいったい、どういうことだろう……。と、思い始めるころに鳴り出すのが、10曲目のスタンダード曲「恋に恋して」で、この軽快なノリには思わずボリュームを上げてしまいます。

全体に物足りないのは、主役のピアノに対するベースとドラムスのツッコミの足りなさで、これは無難な録音にも原因があるのかも……。ですから、これぞっ、という演奏ではボリュームを上げたくなるのです。すると、どうでしょう。突然、演奏がイキイキとしてくるではありませんか♪

こうして、このアルバムを最初から大きな音で鳴らしてみると、おぉ、何と素敵なっ♪

ということで、これは完全にジャズ喫茶向きの作品です。家庭や職場ではヘッドホーンで堪能しましょうという、困った仕上がりですが、如何にもジャズという雰囲気は堪能出来ます。

ちなみに、このトリオは没個性の塊のような連中ですが、どんな社会でも実際の現場では突出した個性でバリバリ仕事をこなす人よりも、その場の空気に馴染んで、なおかつ、的確な仕事を積み重ねていける人が重宝されるのは、言わずもがなです。そのあたりをこのトリオも評価されているようで、現在のイタリアジャズ界では、ベテランのジャンニ・バッソー(ts) を始めとするいろいろなバンドで活躍中とか!

そのあたりの事情も含めて、気楽に聴いて楽しいのもジャズの内だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぬる~い1枚

2005-12-14 16:55:19 | Weblog

降り続いていた雪も、どうやら峠を越したようです。しかし仕事はこれからが山場……。全く休めなくなりそうですし、なんか今年は、やけに寒さが身に染みるのです。こういう時はヌル目の温泉にでも浸かりたいような、あるいは熱いもやしそばを食いたいような……。

結局、どちらも実現しないので、昼飯時の1枚はぬる~いアルバムを――

The Rajah / Lee Morgan (Blue Note)

ジャズは瞬間芸で、しかもモダンジャズは個人技の応酬が醍醐味ですから、独善的でも良いソロさえとれれば全てが許される部分があるのですが、それでは名盤と呼ばれるアルバムが出来上がらないのは、言わずもがなです。

ただしジャズはリズム隊がある程度しっかりしていれば、それでけっこう聴かせることが出来るので、つまりそこに突出した人が入っていれば、聴き手は満足してしまうことがあります。例えばピアノ・トリオが人気なのは、そのあたりにも要因があるのです。

で、このアルバムですが、主役のリー・モーガンに全く精彩が無いのに、それが逆にホノボノムードを生んでしまったという、憎めない仕上がりになっています。ただし発売されたのは、実際に録音されてからかなり年月が流れた1980年代に入ってからでした。

メンバーはリー・モーガン(tp)、ハンク・モブレー(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ポール・チェンバース(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、お馴染みの5人組で、録音は1966年11月29日とされています。

 この頃のリー・モーガンはコンスタントにレコーディングを行っていましたが、その出来は振幅が大きく、この日はほとんど絶不調に近いものです。つまり本来の持ち味である奔放で緊張感のある演奏になっていません。相方のハンク・モブレーも、それに調子を合わせたかのような、ノンビリムードが強く出ています。

しかしリズム隊はそれに反して躍動的♪ 特にシダー・ウォルトンとビリー・ヒギンズは絶好調なのです。

まずA面1曲目の「A Pilgrim's Funny Farm」は愛らしいテーマをモードで解釈した素敵な曲ですが、肝心のリー・モーガンの気抜けぶりが目立ちます。ハンク・モブレーもなんとなく底が見えない演奏ですが、リズム隊の躍動感が最高で、シダー・ウォルトンのソロ・パート、つまりピアノ・トリオになってからが素晴らしい限りです。ビリー・ヒギンズのシンバル・ワークも流石♪

2曲目の「The Rajah」もその傾向が強く、リー・モーガンが十八番のエキゾチックなファンキー・ナンバーですが、全く調子が上がりません。ただし擬似ジャズロックのビートを叩き出すビリー・ヒギンズが快調なので、先発でソロを取るハンク・モブレーはどうにか面目を保っています。しかし続くリー・モーガンが危なっかしいというか、音色に輝きが無く、アドリブにも閃きが感じられません。それゆえにここでもビリー・ヒギンズが軽い呻き声を交えて懸命の煽りを聞かせてくれるあたりがスリル満点で、さらにシダー・ウォルトンのピアノがそれに同調しています。それにしてもビリー・ヒギンズは素晴らしい! 最後の盛り上げは彼の存在なくしては有り得なかったと思うほどです。

そしてB面は軽くスイングする「Is That So」でスタートしますが、それでも寝ぼけ気味のフロント陣に対して、先発でソロを取るシダー・ウォルトンが快調です。しかし続くハンク・モブレーは歌心を忘れた吹奏に終始し、リー・モーガンも精彩が無いのです……。

しかし2曲目の「Davisamba」は、面目躍如というか、ボサ・ロックのビートに乗ってリー・モーガンが十八番のフレーズを連発! ここで聴かれるようなリズムに対する独特のノリが出ないと、リー・モーガンとは言えません。それに刺激されたかのようにハンク・モブレーもかなり過激なフレーズを交えて熱演です。しかも安らぎを忘れていないアドリブの組立を披露するのです。もちろんバックのリズム隊は絶好調と言いたいところですが、何故か今度はシダー・ウォルトンのソロがイマイチという、ちぐはぐさが残念です。

続く3曲目は多分シャンソンの「What Not My Love」が優しく演じられます。ここでは、幾分かすれ気味のリー・モーガンのトランペットが結果オーライの出来で和みますし、ハンク・モブレーも良いムードを演出しています。シダー・ウォルトンの歌心が滲み出るアドリブも秀逸♪

そしてオーラスはスタンダード曲の「Once In My Lifetime」が、ハードなアレンジで演奏されます。ここではまず先発のハンク・モブレーが、いつもの調子を取り戻してファンを喜ばせます。リー・モーガンもなんとか及第点ですが、それはバックで煽るビリー・ヒギンズの重たいビートによる貢献が大きいところで、待ちきれずに自分のパートに入ってしまうシダー・ウォルトンの若気の至りが憎めません。

それほどこのセッションにおけるビリー・ヒギンズは素晴らしいということで、この人を聴くためのアルバムかもしれません。後年、ビリー・ヒギンズとシダー・ウォルトンはいっしょにレギュラーバンドを組んで活動することが多くなるのですが、相性の良さはここでも存分に発揮されており、いささか弛んだフロントの2人は足を向けては寝られないところでしょう。そしてリアルタイムで発売されず、お蔵入りしたのもムベなるかなです。

しかしこのホノボノムードは捨てがたい魅力があり、最近の私のように疲れ気味の状態で聴くとズルズルと惹き込まれます。

このアルバムは数年前にCD化されましたが、残念ながら現在は廃盤らしいです。しかし演奏が演奏なので中古でも安値が付いていると思われます。否、それ故にもう再発されず、貴重盤になってしまうのでしょうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昼飯後の1枚

2005-12-13 17:27:28 | Weblog

昨日あたりから激しい雪になってきました。いよいよ、冬ですねぇ。もうすっかり雪国の冬には慣れたつもりですが、いたるところで交通事故が多発していますから、用心・用心です。つまりノロノロ運転も必要ということで、車内では音楽が欠かせません。

あと、昼飯時間には必ず何か聴いて、これを書くのも習慣になりました。ということで、本日の1枚は――

Emerson,Lake & Palmer (Island)

ビートルズが無くなって、クイーンが登場する前までのブリティッシュ・ロックでは、ゼップ、パープル、そしてエマーソン・レイク&パーマー=ELPが3大バンドで、別格としてキング・クリムゾンというのが、日本での人気度だったように思います。

もちろんストーズ、フー、ピンクフロイドあたりも人気ありましたが、彼等はどちらかといえば1960年代からの大御所、悪くいえば生き残りで、やや新鮮味が乏しかったのです。

で、ELPの何が新しかったかというと、演奏の主体がキーボードで、それまでの一座のヒーロー的なエレキギタリストが居ないというバンド構成、つまりジャズで言うところのピアノトリオでロックを演じたわけです。もちろんキーボードはシンセやオルガンも存分に使っていました。

しかもメンバーが元ナイスのキース・エマーソン(key)、元キング・クリムゾンのグレッグ・レイク(vo,b)、そして元アトミック・ルースターのカール・パーマーという剛の者でしたから、たまりません。発売されたのは1970年末ごろですが、日本では翌年発売だったような……。

ただし告白すると、私はこのアルバムが出た当時、キース・エマーソンがいたナイスというバンドは聴いたことがありませんでしたし、アトミック・ルースターなんて、名前も知りませんでした。ただし、グレッグ・レイクだけは、キング・クリムゾンで感動の名曲「エピタフ」を歌っていた人ということで、大いに気になっていたのです。

という情報をあって聴いたこのアルバムは、まったくそれまでのロックでは無い、クラシックもジャズも現代音楽も包括した本当のプログレという内容でした。ただしA面1曲目の「未開人」の出だしは、これってファズギター? というような響きが入っていて、恐らくシンセかエレキベースにファズを掛けたもんでしょうか、しかし、それを打ち消すように始まる熱いオルガンと重たいドラムスの対決は強烈でした。

曲のリフはクラシック? どうやらバルトークの曲をモチーフにしているらしいとか? 中盤からは生ピアノ主体の演奏にカール・パーマーがブラシで応戦していきますし、最後にはまた重たい展開になるという、当時の私には、何か分からないけれど、凄そうだ……。というのが感想でした。聴いているうちに圧倒されてしまうんですねぇ。カール・パーマーのドラムスが、とにかくド迫力!

ところが2曲目の「石をとれ」はグレッグ・レイクが歌う静謐なフォーク系の曲になっていて、こちらはもちろんクリムゾンの「エピタフ」の夢よ、再び状態です。キース・エマーソンの生ピアノも素晴らしく、間奏は完全にピアノ・トリオでジャズになっていきますが、クラシックの要素も残しているので、作り物感覚が横溢し、主題から逸脱しないのが上手いところです。そして次はグレッグ・レイクの生ギターのパートになり、和んだところで、再びキース・エマーソンの生ピアノでジャズっぽくいくあたりは、緊張感があって最高です。クライマックスで絡んでくるグレッグ・レイクのベースとカール・パーマーのドラムスも充分にジャズを消化しているので、イヤミではありません。

そしてA面ラストの「ナイフ・エッジ」はハードロック感覚が噴出し、バンドは暗闇を突進するのです。ここでも重くて歯切れの良いカール・パーマーのドラムスが全体を支えていますが、キース・エマーソンのオルガンも、なかなか聴かせます。

B面に入っては、まず組曲形式で演じられる「運命の三人の女神」が圧巻です。最初っから大袈裟なパイプオルガンが響きわたり、それはもちろんクラシックのイメージですが、そこからソロ・ピアノに展開され、ジャズになったり現代音楽になったりしながら、トリオの演奏へと繋がるのです。この部分でもカール・パーマーが大暴れで、タイトなリズムとセンスの良いオカズの入れ方が最高です。このあたりはアドリブというよりは、激しいリハーサルの果てに組みあがったものかもしれません。かなりカッチリとした演奏になっているので、聴いていて疲れることは否定出来ません。

それは続く「タンク」でのカール・パーマー大爆発で頂点に達します。アンサンブルでのトリオの息の合いかたも完璧ですが、疲れます、聴いていて……。

それが癒されるのが最後に収録されている「ラッキーマン」で、グレッグ・レイクの生ギターを中心としたほのぼの調の歌が、妙な感動を呼びます。「う~、彼は幸せな奴だった」というリフレインと厚みのあるコーラス、スネアを主体のドラムスが、何となくクリムゾンしていたりもします♪ 大団円でのシンセがシツコイですが、そこはクセになりますよ。

ということで、このアルバムは出来すぎ、作りすぎではありますが、静と動、疲れと安らぎがバランス良く配合された奇跡の1枚だと思います。イノセントなジャズ・ファンもけっこう聴けるロックアルバムではないでしょうか?

昼飯後に聴くと、気分が最高です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛しのティータイム

2005-12-12 17:24:39 | Weblog

週明けから仕事はゴタゴタとトラブルばっかりで、完全に身動き出来ません。よくも、まあ、これだけ色々と仕出かしてくれるもんだ……。

と、今日も私は嘆き節全開ですが、心底、幸せな気分を欲する時に聴くのが、本日の1枚です――

Strokin' / Richard Tee (Tappan-Zee)

リチャード・ティーは1960年代後半から活動しているアメリカの黒人ピアニストで、その守備範囲はスタジオ・ワークが中心ですが、1970年代中頃からはご存知、スタジオ系フュージョン・バンドのスタッフで大ブレイクした名人です。

そのスタイルは、ぐわ~ん、と地の底から湧き上がってくるようなキメのブロック・コード弾き、あるいはメロウなエレピの響きがたまりません。当然、歌伴とかバックにいて輝く人なのです。

しかし、そういう縁の下の力持ちでありながら、当時のリチャード・ティーは大変な人気で、とにかく、この人が演奏メンバーとしてクレジットされていれば、主役は誰であれ、そのアルバムが売れたという時期が本当にあったのです。それはもちろん、伴奏で真価を発揮するリチャード・ティーだけのピアノ・スタイルが快感だったからです♪

私も好きでしたねぇ~。何とも言えない幸福感があるコードを弾いてくれるんですよ♪ それだけで良かったんです。

で、そのリチャード・ティーがリーダー盤! というのは、いくらフュージョン全盛期でも驚きました。それまで録音は多数残していた人でしたが、アドリブ・ソロらしき事をやったのは、極めて少なかったのですから……。

それがこのアルバムなのです。しかし杞憂でしたねぇ~♪ 何時もながらの幸せなメロー感覚をたっぷり作り出していたのです。録音・発売は1978年、メンバーはリチャード・ティー(p,elp)、チャック・レイニー(b)、エリック・ゲイル(g)、スティーブ・ガッド(ds)、ラルフ・マクドナルド(per) 等々を軸に、ホーン隊にはトム・スコット&ブレッカー兄弟という豪華版! しかも曲が良いんですね~♪

中でも特に私が好きなのがタイトル曲の「Strokin'」で、徹底的なブロック・コード弾きで魅惑のテーマからアドリブ部分まで押し通すリチャード・ティーは、もう最高です。もちろんその部分はカラオケにもなりますから、スピーカーの前では好きな楽器でメロディを入れることも出来ますし、続けてマイケル・ブレッカー(ts) が泣きのアドリブを炸裂させるあたりは、本当に悶絶です。なんて素敵な曲なんでしょう、この展開やコード進行は、当時の日本のAORとかニューミュージックでさんざん、パクられているほどです。

それとA面ド頭の「First Love」も愛らしいメロディで人気がありますねぇ~。

そしてジャズ魂が噴出するのがオーラスの「A列車で行こう」で、思わせぶりなスローなピアノソロから、スティーブ・ガッドの爆発的なドラムスが入ってからの暴れ方は、なかなかのもんです。それもほとんどブロック・コード弾きで、ゴスペルになっていくのですよ。

ということで、これは個人的な幸せ盤なので、万人にはオススメ出来ませんが、ストレスがまったく解消出来ていない最近の私にとっては、タイトル曲だけでも、ささやかな幸せの5分22秒なのでした。

お茶の時間に聞くというのは、おやじギャグ……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宴の後は

2005-12-11 12:42:44 | Weblog

昨夜の宴会では、久々に鯨飲しましたが、酔えないですねぇ……。う~ん、ますます、悪い酒モードに入ってきました。しかも宴会が、かけもちだったので、最初のところで酒を飲んでは、次の会で失礼になるので気ばっかり使って疲れ果て……。その反動で弾けたわけですが、実際は楽しくなかったというが本音です。自分の性格が嫌になりましたね、トホホ。

というわけで、今朝はヘビィロック、聴いてます――

Shades Of Deep Purple (Tetragrammaton)

こういうのが好きだというと、「なんだ、お前はヘビメタ、嫌いなんだろう!?」と言われますが、「何、言ってんだよ~、パープルはハードロック! その前はアートロックだしさぁ」と、私は反撃します。

そうです、ディープ・パープルはデビュー当時、アートロックと分類されたんでよ。それは芸術ロックというのではなくて、ヘヴィ・サイケな雰囲気、例えばクリームとかバニラファッジあたりの音楽性を指していたわけで、このアルバムは、それがモロに出ています。

この頃のメンバーはロッド・エバンス(vo)、ジョン・ロード(org)、リッチー・ブラックモア(g)、ニック・シンパー(b)、イアン・ペイス(ds) という5人組でした。

しかし私が最初に聴いたのは、このアルバムでは無く、シングル曲の「Hush」で、昭和43年の秋の終わり頃からラジオで流れはじめ、忽ち気に入った私は、翌年正月の買い初めで、そのシングル盤を買ったのです。

その曲調は、モータウンソウル味も仄かに漂う全くのヘヴィロックで、「なーなななーなな」というコーラスのリフ、「はーしゅ、はーしゅ」というキメ、切れ込んでくるノイジーなギター、厚いオルガン、叩きつけるようなドラムス、重いベース、甘さを含んだボーカルが、それはもうポップで新鮮! 最高でした。

実はこの曲は黒人シンガーのジョー・サウスがオリジナルのカバーだったのですが、そのあたりは、この道の先駆者バニラファッジのやり口を踏襲しながらも、ファンキーな部分を極力切り捨て、白人的なロックに仕立て上げたところが新しかったと思います。つまり、どこまでもポップスバンドに近いやり方だったというわけです。ロックバンドには付物のブルースっぽさもほとんどありません。

それはB面に収録されていた「One More Rainy Day」の愕くほどのポップ味、そのクラシック音楽趣味のアレンジ等は、当時の日本のGSにも通じるものがありました。

こうしてパープルは私の心を掴んだわけですが、まさか後にあれほどのハードロック・バンドになろうとは……。実際、この頃は単なるポップス・バンドという扱いだったと思います。もちろんこれ以降もシングル盤を何枚かリリースしていますが、日本ではこの曲ほど流行ったものは、しばらくありませんでした。

そして次にブレイクするのが昭和45年、ご存知「Black Night」の大ヒットになるわけです。

さて、このアルバムは、そんな彼等のアートロック時代の演奏がたっぷり聞かれますが、その中身は意外なほどジャズが隠し味となっています。それはイアン・ペイスの抜群に上手いドラムス、ジョン・ロードのクラシックをベースにしたジャズ風オルガン、かなり遊びながらドライブするニック・シンパーのエレキ・ベースがたまらないところです。

後に一座のスターになるリッチー・ブラックモアのギターは、上手いけれども、この頃はまだ目立った存在ではありません。しかし初っ端のインスト自作曲「And The Aeddress」やハードな「Mandrake Root」における暴れ方は、ジミヘンからの影響+独自の重い音色が、後年は聴くことの出来なくなった魅力的な部分ですし、リズム・ギターの上手さも特筆物です。アドリブではスパニッシュ・モード+ブルーノート・スケールの融合が特徴的です。

バンド全体としてはカバー曲のアレンジの上手さが凄いところで、例えばビートルズの「Help」のソフトロック味、ジミヘンで有名な「Hey Joe」の中近東&クラシカルな味等々、今聴いても飽きません。

ということで、やっぱり好きだなぁ~♪ 一般的には評価低いこの時期=所謂第一期ですが、実は私は大好きなことを、ここに告白しておきます。

アルバム自体の出来も、曲間では効果音も使いながら良く纏めていますし、金属的なところが無く、むしろ暖かい作品ですよ。虚心坦懐に聴いて欲しいアルバムです。最近のCDはジャケット違うみたいですが、ボーナストラックが入っています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする