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サイケおやじの生活と音楽

幾年月、これが観たかったのだが…

2017-08-01 19:48:57 | Movie
続日本暴行暗黒史・暴虐魔 (ディメンション = DVD)

連日ご紹介しております、若松孝二監督の「日本暴行暗黒史」シリーズ復刻DVD4作の中で、サイケおやじが特に楽しみにしていたのが、実はこの「暴虐魔」です。

何故ならば、昭和42(1967)年末の公開以来、一度も観た事がなく、なにしろビデオ版すら公式発売されていなかったというのは、やはり作品内容が太平洋戦争末期から終戦翌年にかけて実際にあった猟奇連続殺人事件とその犯人の小平義雄をモデルにしているからでしょうか。

なにしろ件の小平義雄は7人以上の女性を強姦殺人の餌食とし、時には死姦までやっていたと云われているんですが、この事件の前にも傷害殺人で懲役刑を務めていたとか、あれやこれやの破天荒な人生を積み重ねていたわけで、これを若松孝二監督が映画化したというのでは、期待が高まるのは自然の成り行き???

しかし、結論から述べさせていただとく、個人的にはあまりにも期待し過ぎた所為でしょう、ようやく鑑賞出来た「暴虐魔」は、それほど面白い映画ではありませんでした。

というか、物語が淡々とした展開で、加えて舞台に設定された某地方の漁村の風景やそこでの暮らし等々が相当にリアルな質感で撮影されているもんですから、小平義雄をモデルとした主人公の丸木戸義雄がそこで地味な生活をしている内気な青年というキャラクター設定共々、とにかくそんな目立たない奴が大それた事件を!?!

という如何にも日常に潜む闇を云々という受け取り方は安易かもしれませんが、主人公が凌辱して殺害した女性の遺体を洞窟の中に隠し、それらに語りかけるという展開が続くのは、完全に精神を病んでいるわけで、ここはネタバレがあるので、あまり詳らかには出来ないものの、それにしても丸木戸義雄役の山下治の演技力は素晴し過ぎですっ!

極言すれば、それを観るだけでも、この映画の価値はあると思うばかりで、告白すればエロい場面は期待していたほどでも無かった、その肩すかしも帳消しとなるような気がするほどです。

実は既にご存じの皆様も大勢いらっしゃるはずですが、サイケおやじは山下治の本業が成人映画の監督であったという正体を今になって知ったわけでして、なるほど、分かっているちゃ~それまでだとは思いますが、同じ射精産業的な映像を作っていながらも、近年のAVや無修正映像とは取り組み方が別次元と痛感させられた次第です。

それは何も芸術的云々で語られる事ではなく、巷間云われるところの若松孝二監督作品における政治色や文学的メッセージ性の強さについて理屈っぽく鑑賞する姿勢とも異なる、これもひとつの娯楽映画の形じゃ~ないでしょうか?

ですから、素直に猟奇事件の顛末に係る女性の犯される場面、あるいは裸の演技を素直に眺め、それでエキサイト性感度の高さを味わえれば、それは観ている側にとっては傑作となるはずです。

サイケおやじが、この「暴虐魔」を鑑賞したかった目的のひとつは、実はそこにあり、前述した洞窟の中の死体のひとつを演じているのが坂本道子と名乗っていた頃の夏純子という真相があったわけでして、もちろん彼女は若松孝二監督が撮って、この「暴虐魔」に先立つ同年春に公開した「犯された白衣」で主演デビューしたという履歴を鑑みれば、さもありなん♪♪~♪

さて、そこで気になるこの復刻DVDの画質、リマスター状況なんですが、確かにフィルムには傷も残っていますし、画面のゆれ、コントラストが曖昧になっている箇所も散見されますが、先日ご紹介した「異常者の血」よりは数段良好で、もしかしたら、それもこれも、あまり再上映が行われなかった証だとしたら、なんだかなぁ……。

ということで、あまり一般的な成人映画ファンにはオススメという事は申せませんが、若松孝二監督信者で、これを未見の皆様であれば、この機会にぜひともご鑑賞下さいませ。

まあ、これもコスパを考慮すれば、どうやらレンタルも出来るらしいので、よろしくです。
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