Jリーグが、実に面白いことになっている。従来の強豪が軒並み不振で、新強豪が現れ始めたと言って良い。何かが音を立てて変わり、リーグ全体が急激に進化しているのは明らかだろう。その「何か」を追求し、確かめるのが、本稿の狙いである。こんなことを考えていると、ゲーム観戦がさらに面白くなる。
前々年度優勝の名古屋は、10位。古い強豪では、鹿島が13位、ガンバが16位なのである。ついでに、前年度優勝の柏も、15位だ。対するにベスト5は、仙台、広島、清水、磐田、浦和と、近年ここの常連とは言えなかったチームが並んでいる。アジアチャンピオンズリーグで疲弊したチームが落ちているとは言えるが、このグループリーグ突破を東京が真っ先に決め、このJ1復帰チームは同時に6位にも付けている。リーグが実力伯仲になったとも言えるが、何かが起こっていることも確かだろう。
僕はここで、去年12月からこんなことを書いてきた。近年のJ2上がりのチームがJ1上位を占めるのは、こういうことではないかと。特に近年のJ2で球際を競り合う厳しさ、強さが増し、敵ボールを高く良い位置で奪う組織技術が増強されたと。こういう選手を相手にして同一チーム内で紅白戦などを闘っている選手たちはまた、味方ボールを安易には奪われないパスサッカー組織技術も高くなっていると見てきた。現在上位にいるチームは全て、こういう傾向のチームと言える。前後を詰めたコンパクト布陣の高い位置で敵ボールを強引奪取して、そこから強靱に鍛えた体を生かした高度なパスサッカーを展開するチームなのである。今や、敵ボールの強引奪取が高い位置でできない、技術だけのようなチームに、大きなものは望めないと言いたい。
対して古豪チームは、軒並み失点が多い。名古屋も鹿島も少ない順で9位、ガンバに至っては17位である。得点においても、4位の鹿島は別格だが、名古屋9位、ガンバ14位である。シュートチャンスで言えば、鹿島は多く、名古屋、ガンバは少ない。これらの古豪が新顔に良い位置で強引にボールを奪われ、他方執拗なプレスに対して攻めあぐんでいる姿ばかりが、目に浮かぶのである。
以上のことから、今後の闘い方の推移と、順位の成り行きなどを占ってみたい。もちろん、集団球技では監督が最も大切だと思うので、それも考慮しながらのことだ。もっともこれらすべて、僕の知識の範囲内のことでしかないから、たかが知れている。知らぬことは知らぬと言うしかない。
鳥栖のような少数の堅守速攻・カウンターチームを除いてのことだが、敵陣で上手くボールが奪えないチームは勝てなくなる。また、奪ったらすぐに縦パスを入れる人材がいないと、やはり駄目だろう。「前が敵ボール方向を限定しボランチで奪い、そのボランチから攻めのパス」ということであって、二人のボランチが、あるいはセンターハーフ2人がとても大切になってくると思う。守備も込みにして言えば、この二人とセンターバックとの連携が、チームの要になっていくのではないか。もっとも、まーこのようにボランチ中心の組織を作っていくのは監督なのであるが。
さて、以上から言えば、今後上位に入っているはずのチームはこうなると思う。
仙台は、監督と2人のボランチ角田、富田はリーグ屈指だと思う。失点数最少、得点数2位というのは、いまや当然の結果と見るべきだろう。一昨日古豪グランパスを4対〇で負かしたのは必然、とも。浦和の監督と両ボランチ阿部、スズキは、その実績から見ても強いと思う。代表に選ばれた長谷川、高橋のほかに梶山までボランチができるFC東京が、初出場のアジアチャンピオンズリーグを日本で最初に勝ち残ったのには、これまた必然性があると観た。清水と磐田は監督が未知数だし、選手が若すぎて僕には判断が付かない。古豪の中では、柴崎がいる鹿島が、得点力も新事態に対応できているようだし、伸びてくるのではないか。今のJには珍しい堅守カウンターの鳥栖は、もの凄い走力が土台となっているのだから、夏場を含めてそんなには崩れないだろう。問題はグランパスだが、はっきりとした形がないのだから、若いボランチを鍛えてチームの形を作らせるほどにしないと駄目だと思う。新監督の川崎と神戸だが、これは間違いなく上がってくると、誰でも観ているはずだ。
Jリーグがますます激しくなり、面白くなり、代表も紅白戦で激しくぶつかり合ったりして、外国人相手には当たり弱いという弱点を克服しつつあり、どんどん強くなると期待したい。