大西さんの「新聞の片隅に載ったニュースから(20)」です。らくせき
「徴用者らを支援 韓国ボスコ寄付 6億7千万円」(2012.5.27朝日新聞)
「韓国鉄鋼大手のボスコ(旧・浦項総合製鉄)は、日本の植民地支配下で
徴兵・徴用された韓国人被害者らを支援する財団に対し、
100億ウオン(約6億7千万円)を寄付することを決めた。
韓国企業が被害者への社会的責任を認めて財団に寄付するのは初めて。
浦項総合製鉄には日韓国交正常化に伴なう経済協力資金が投入されており、
被害者側から強い要望が出ていた。韓国の大法院(最高裁)は24日、
『元徴用者ら個人の請求権は、国交正常化時の日韓請求権協定でも消滅していない』
との判断を初めて示したばかり。日本の資金を受けたボスコ以外の韓国企業も
寄付を検討している。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
日本が韓国を植民地化していた時代に多くの韓国人が徴兵されて前線に送られたり、
徴用されて強制的に工場で働かされたりしましたが、
徴用工を直接雇って働かせたのでもない韓国の企業が、
なぜ徴用問題に責任をとろうとするのか、分りにくい点があります。
1965年に日韓国交正常化(日韓基本関係に関する条約を締結)する時に
いくつかの交換公文形式の付属協定が結ばれましたが、
その一つに「財産及び請求権に関する問題の解決及び経済協力に関する協定」
(請求権協定とも呼ばれる)というのがあります。
この協定では、日本政府が韓国人の被害に個別に補償するのではなく、
韓国政府が一括して補償を受け取ると同時に、日本政府は韓国に経済協力を
行なうことが取り決められました。
この協定があるため、従軍慰安婦だった人をはじめ、徴兵・徴用された人が
日本政府に補償を求める裁判を行なっても、日本の裁判所は「補償問題は解決済み」
と請求を却下しています。
ところがこの協定のもう一つの面に「経済協力」があります。
この協定で日本は韓国に対し無償3億米㌦、有償2億米㌦の資金提供と
民間融資3億米㌦の経済協力支援を行いました
(当時の日本の外貨準備高は18億米㌦)。
これらの資金は一部個人補償にも使われましたが、その額は僅かで、
大半はダムや高速道路などのインフラ整備にあてられました。
浦項総合製鉄の建設にも投入されました。そこで被害者側からボスコに対して
日本からの経済協力資金のうちから自分たちにも補償しろという要求が
出ていたのです。
なお、同じ日の毎日新聞は、「対日個人請求が活発化している」という記事を
載せています。韓国の最高裁がこのほど「個人請求権の消滅を定めた
日韓請求権協定の効力は元徴用工にはおよばない」という新しい判断を示したため、
日本から経済協力資金を受取った韓国企業の寄付の動向とは別に、
直接日本に対して損害補償請求をしようという動きが広がっているということです。
国交正常化交渉の中で日本政府は個人的な補償も考えましたが、
当時の韓国政府は戦後復興に多くの資金が必要ということからだったのでしょう、
一括して政府が受取る方式を要求したそうですが、この問題は、国と個人の権利、
利益の問題をどう考えるかを私たちにも突きつけているようにも思えます。
大西 五郎
「徴用者らを支援 韓国ボスコ寄付 6億7千万円」(2012.5.27朝日新聞)
「韓国鉄鋼大手のボスコ(旧・浦項総合製鉄)は、日本の植民地支配下で
徴兵・徴用された韓国人被害者らを支援する財団に対し、
100億ウオン(約6億7千万円)を寄付することを決めた。
韓国企業が被害者への社会的責任を認めて財団に寄付するのは初めて。
浦項総合製鉄には日韓国交正常化に伴なう経済協力資金が投入されており、
被害者側から強い要望が出ていた。韓国の大法院(最高裁)は24日、
『元徴用者ら個人の請求権は、国交正常化時の日韓請求権協定でも消滅していない』
との判断を初めて示したばかり。日本の資金を受けたボスコ以外の韓国企業も
寄付を検討している。」
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日本が韓国を植民地化していた時代に多くの韓国人が徴兵されて前線に送られたり、
徴用されて強制的に工場で働かされたりしましたが、
徴用工を直接雇って働かせたのでもない韓国の企業が、
なぜ徴用問題に責任をとろうとするのか、分りにくい点があります。
1965年に日韓国交正常化(日韓基本関係に関する条約を締結)する時に
いくつかの交換公文形式の付属協定が結ばれましたが、
その一つに「財産及び請求権に関する問題の解決及び経済協力に関する協定」
(請求権協定とも呼ばれる)というのがあります。
この協定では、日本政府が韓国人の被害に個別に補償するのではなく、
韓国政府が一括して補償を受け取ると同時に、日本政府は韓国に経済協力を
行なうことが取り決められました。
この協定があるため、従軍慰安婦だった人をはじめ、徴兵・徴用された人が
日本政府に補償を求める裁判を行なっても、日本の裁判所は「補償問題は解決済み」
と請求を却下しています。
ところがこの協定のもう一つの面に「経済協力」があります。
この協定で日本は韓国に対し無償3億米㌦、有償2億米㌦の資金提供と
民間融資3億米㌦の経済協力支援を行いました
(当時の日本の外貨準備高は18億米㌦)。
これらの資金は一部個人補償にも使われましたが、その額は僅かで、
大半はダムや高速道路などのインフラ整備にあてられました。
浦項総合製鉄の建設にも投入されました。そこで被害者側からボスコに対して
日本からの経済協力資金のうちから自分たちにも補償しろという要求が
出ていたのです。
なお、同じ日の毎日新聞は、「対日個人請求が活発化している」という記事を
載せています。韓国の最高裁がこのほど「個人請求権の消滅を定めた
日韓請求権協定の効力は元徴用工にはおよばない」という新しい判断を示したため、
日本から経済協力資金を受取った韓国企業の寄付の動向とは別に、
直接日本に対して損害補償請求をしようという動きが広がっているということです。
国交正常化交渉の中で日本政府は個人的な補償も考えましたが、
当時の韓国政府は戦後復興に多くの資金が必要ということからだったのでしょう、
一括して政府が受取る方式を要求したそうですが、この問題は、国と個人の権利、
利益の問題をどう考えるかを私たちにも突きつけているようにも思えます。
大西 五郎