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憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

世界フットボール、「レアル神話の崩壊」   文科系

2014年12月05日 21時35分34秒 | スポーツ
 世界フットボール界で、表記のように語れる現象が起こっている。世界的名声もお金も自他共に世界一クラブだと誇ってきたはずのスペインはレアルマドリッドが、ある選手にあっさりと振られたのだ。エデン・アザール。イングランドはチェルシーに所属するベルギー人で、万能のMFである。それもレアルが100億円だかを費やして獲得したイングランドのギャラス・ベイルまでを交換するからという話を、ご破算にされたのだ。なぜなのか。アザールの話からは、レアルよりも現在の所属チームの方を遙かに高く買っているということが分かるのである。イングランドはチェルシー、このチームが現在どれほど有望であるか。

 なんせこの監督が良い。いろんなサッカー大国で優勝して、近年のチャンピオンズリーグ最大の顔でもあるこのモウリーニョ監督は、ついにまた念願だったイングランドに戻ってきた。すぐに古巣チェルシー1年目で優勝寸前まで漕ぎ着け、2年目の今年は無敗の首位である。イングランドの競争相手たちは、レアルのスペインよりもはるかに強敵揃いだ。この「強敵揃い」という点をこそ、アザールは買っているようだと、その発言で分かる。だからこそ、この国で優勝するということはヨーロッパ1のチームに近いという理解なのであろう。そして、なんせ、監督のモウリーニョ自身からして、「イングランドで監督業を全うしたい」と語って、ここに戻ってきたのである。レアルの監督もした彼がそう語るのは、こういうことだと僕は見てきた。歴史的社会的スポーツ資産としてのイングランドフットボールが、他を圧しているということだろうと。

 今年のヨーロッパチャンピオンズリーグは、順当ならこうだろう。ベスト4の候補が、チェルシー、バイエルン、レアル、さらにイングランドのマンチェスターシティー。そして最後はチェルシーの優勝と見た。監督モウリーニョは守備の組織化が実にうまい上に、今年はさらに得点もプレミア1位だ。激変しつつある最近の世界サッカー界では、守備が強いというのはこの上ない強みだと思う。
 
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小説  道連れたち(その2)   文科系

2014年12月05日 20時20分47秒 | 文芸作品
 前からも後ろからも速歩やジョギングの人が通り過ぎていく。
〈こういう人、昔はこんなにいたかなぁ、思い出せないのはきっと意識もしなかったんだろうけど、みんななんか品が良さそうな人ばっかりに見えるし、それに夫婦も多そうだし、けっこう若い夫婦もいて、みんなギンギンのウェアで、スリムな人が多いからフィットネス目的ばっかりじゃなさそうだし、私はフィットネスの必要はないけれども、ほんとにそんなに楽しいならやってみてもいいかなぁ。恒男ならきっとやるって言うんだろうけど、俊司さんならなんて応えるだろう〉
〈恒男だってかなり良いとは思うんだけど、俊司さんのが細やかみたいだし、恒男よりはちょっとなにか尊敬してる感じかも知れない、知らない間についてっちゃってた。離婚するとか俊司さんに結婚させるとか、そんなエネルギーを出してみようと思ったこともないけど、つきあいは別に止めなくても良いよね、私の方も別れようと考えたことはないし、あのことはちょっと俊司さんの方が良いのかも知れない〉

 近付いてくる激しい羽音に、後ろを振り向いた。嘴がオレンジ色で、鳩を一回り細く小さくしたような鳥の一群が、目の前の桜の木すれすれに飛び過ぎて行く。それを認めた瞬間、内省から覚めたばかりの耳に急に人のざわめきが飛び込んできた。川畔道路沿いすぐ前方、生け垣に囲われた建物の庭かららしい。高齢者社会教育施設と聞いているその建物に足早に近づいてみると、スポーツウェアの一群が騒いでいる。何台もの自転車も見える。それも極彩色色とりどりをわざと集めたように。〈若い子たちが入って、何か一緒に準備してるんだ〉、とその時、朝子の眼がある一点に釘付けにされた。数人の老人の輪の中で自転車の横に座り込み、例によって大きな声と身振りで熱弁をふるっている最中の、恒秋の相手のギャル・咲枝がいる。その咲枝の方も一瞬、体と視線を固まらせたようだ。周囲の視線もすぐに朝子に振り向けられた。止まるもならず、もちろん去って行くこともできはしない。こわ張った顔を作り直すようにして、近付いて行く。
「みなさん賑やかに、楽しそうですね」
 一斉に向こうも挨拶を返し、老人の一人がこちらへ歩みだして来る。そして、何か親しげな口調で話しかけた。
「恒秋君のお母さんだそうで、本当にお世話になってます」
 えっという感じをごまかすようにして迎え入れられるように人の輪に加わった。


「恒秋はいつからこういうことを始めたのかしら」
 いつしか二人並んで座っていた咲枝に、朝子は独り言のように問いかけた。風はなく、からっとひき締まった大気の中で、柔らかい日差しが二人を包んでいる。
「恒秋さんだけはなんか中学の頃からずーっとここに関係してたみたいなんです」
「恥ずかしいけど全く知らなかったわ。恒秋がボランティアなんて」
「最初からボランティアじゃないんです。恒秋さんが団地であるおじいさんの花畑作りをずーっと手伝ってきてて、それが縁でここの花畑に関わって、二年くらい前に彼を中心に仲間ができたんです」
「ここのことは全く言わなかったのよ」
 取り乱した脳裏に、ある情景が割り込んできた。夏の夕暮れ、住んでいた団地の庭で、専用に買ってもらったのだろう小さな鋤を振るっている六年生のころの恒秋と一人の初老の人、幸田さんとを初めて見た時の光景であった。〈たしか彼、一年くらい前に亡くなったんだ〉
「言いにくいんですけど、『母さんは余分なことやるのを嫌う人だから』と、言ってました」
〈私らにはずーっと秘密だったということを、この子は知ってる〉、悔しいような涙が滲んだ。
「恒秋さん、お年寄りとなんか仲良しなんです。それに花とかのこともよく知ってて、……」
〈この子は私らを心配して、言いにくいことを敢えて告げたんだろう。同じおしゃべり屋さんでも、人が良くて賢い子なのかも知れない〉
「道を歩いててもrあっ、キンモクセイ」なんて、きょろきょろするんですよ、若い男の子なのに。花や鳥とかの、ちょっとオタクみたいなんです」
 あわてて付け加えたような咲枝の言葉。〈二人は随分話し合っているんだ〉。
「まさかボランティアをねぇ、あんなこと!って言ったら悪いけど……どんなつもりでやってるのかしら」
「やってて面白いしぃ、それが好きな子ばっかり集まった、かなり大きいグループですよ。恒秋さんたち、人を集めてくるのも上手いんです」
〈恒秋が人集め?〉黙っているしかない朝子に、咲枝が続ける。
「とにかく恒秋さん、変わった才能ありますよ。詳しく聞いてみると面白いと思うんですけど」
 これも朝子には意味の見当もつかない、ちょっと前ならごく軽く払いのけたような言葉である。
「恥ずかしいけど、私いま恒秋に無視されてて、しばらく話してないの」
 自分の恥を自然に口に出したような朝子に、やや間を置いて咲枝が応えた。
「無視してるんじゃないと思います。言い合うのが嫌だというか、もっと言えば恐いというか、恒秋さん、お母さんを尊敬してますし」
 唖然としたような、そして、やはり自分とは異質な人々の言葉だと感じた。するとこんなふうに表現されている恒秋の世界を同じ土俵に上がってただ聞き取ってみようかと、そんなことを朝子は思いついた。〈目分がいろんなふうに変わり目なんだ、回りを観なおしてみよう〉という声が内部に開こえるような気がしていたからだろう。咲枝と別れ、家へと向かう目に、川面も葉桜も自分も、今までとはどこか違って見えるようだった。彼女はその時、〈今までの自分を保留してみた〉と後に表現した初めての心境の中へと、開き直るようにして飛び込んで行ったようだ。

「あそこの門を入って左手に大きな黒っばいクロガネモチという木があるんだけど、あれの移植が始まりかなぁ」
「聞かせてくれない」と頼んだ朝子のその目を一瞬見つめ、すぐに視線を逸らせると、戸惑っているのか満足なのかよく分からないようにほほ笑んでいたが、やがてとにかく恒秋は話し始めた。
 団地にあったこの木は、幸田にとって何か亡くなった妻の思い出があるものらしい。しかし、移植の話が起こったとき、幸田は既に癌の治療で病床にあった。根回し、運搬はとても恒秋一人ではできないからアルバイトを雇えと病床の幸田が助言したそうだ。金は彼が出すとの提案もあって、友人たちに恒秋が頼み、そのうちの幾人かが以降もボランティアとして残ったという。恒秋が高校二年、幸田が七十代半ばの数か月を費やした出来事である。もっとも、多くの協力者が必要な大行事の時などには、今でもアルバイトを雇うことはあるのだそうだ。
「施設の方でお金がでるのね?」、何気なくたずねた朝子の言葉に、恒秋が戸惑いの表情を見せている。口を出したい思いを一瞬で制して、朝子は南窓越しに外を見る。一羽の山鳩が枝垂桜の頂上から、驚いたような素振りでこちらを眺めていた。
「違うよ、行事の経費はそんなに多くない。僕が出してるお金だよ。──実は、幸田さんが、かなりのお金せ僕にくれたんだ」
 驚くような金額であった。この遺産分与を、生前にも彼に告知し、執行者まで定めた遺言にも明記してあったという。朝子は二人のただならぬ繋がりを、過去の断片的知識も寄せ集め、推し量った。そして今は、驚いたという以上に、この繋がりを理解してみたいと素直に願った。

(その3で終わり)
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小説  道連れたち   文科系

2014年12月05日 09時52分04秒 | 文芸作品
 道連れたち   

〈ピンクと赤と白、チェックの模様、たしか先週日曜日に彼が買ってきたテーブルクロスね、ヨメナの花もそれにグラスのワインレッドも、よく映ってる〉、朝子は、見るともなく見ていた眼の前の対象に焦点を合わせ直し、グラスの脚に指を伸ばす。寝起き姿のままに椅子に投げ出した体の中で、グラスに触れた指先だけがやっと目覚め始めたようだ。

〈昨夜、あの部屋、あの時の、飲み残しビールとテーブルクロスからの連想なのか〉、口にワインを含み、薄暗い灯につつまれたその場面のそこここを、霧の中のような脳裏から順に引っ張りだしてみる。
〈あの後すぐに彼がコップを取りに行って、飲ませてくれたんだ〉、ことが終わって間もないのに素っ裸のままに素早く立ち上がって、息を弾ませるといった様子もなく俊司はよくそんなふうにする。その終始に朝子はいつも身を委ねているのだけれど。
 と、ここで覚め始めた朝子の眼に、この新築の家の東窓を通り抜けた陽光がつきささってきた。太陽が隣家の屋根の上に顔を覗かせたらしい。眼をしばたたきながら、何度か言ってみた言葉を朝子はまた繰り返す。
〈俊司さんとはもう二年目か。まだまだ続きそうだ。ほんとに私がこういうことをやってるんだなぁ〉
 するとやはり、思い浮かんだことだが、
〈恒男のことも最近なにか、いろいろ見えるようになってきたみたいだ〉
 現に今、このテーブルクロスの端に小さくこんもりと生けられたヨメナの花。これなどにもこの頃では、〈恒男が一昨日くらいに庭から取ってきたんだ、彼の口癖だけど確かに素朴で可愛い紫、それが濃いから咲いたばかりなんだろう〉、この程度のイメージは浮かぶようになっていた。
〈ほんとに花なんかでも、何にも知らない。勉強して勉強して、たまに人とおしゃべりするくらいで、それから看護婦やって、結婚して、すぐに恒秋が生まれて、その面倒みてきて、小学校の頃恒秋に言われたことだけど、ほんと、いつも走ってた〉

 十月末の土曜日。恒男はまだベッドの中だし、一人っ子で大学三年生の恒秋は昨夜も帰ってこなかったらしい。朝子は、ほんの一、二口の朝のアルコールに頬を熱くしている。この頃度々あるのだが、眠ったという感じがほとんどないままに迎えた早い朝だった。

 右手を伸ばして、ヨメナの花びらを指でつまんでみたその時、玄関の扉が鳴った。そのまま二階へ行こうとする足音が聞こえる。
「恒秋、どこ行ってたの!」
 刺すような口調にも、何の返答もない。足音が調子も乱さずに上がって行く。
〈まだ完全無視が続くのね。長いこと!〉、と強がってみた。が、どうしようもなく沈んだ気持は拭いようもない。それでも癖になっている調子で、「恒秋、ちょっといらっしゃい」抑えにかかってみた。二階で扉を閉める音が返ってきただけだ。
〈昨夜も、あの子の家にいたんじゃないかしら〉
 何日か前の詰問に恒秋がさりげなくそう応えたので、言い争ったことを思い出している。ぴんと伸ばした激しい胸のうちを、前に組んだ両腕と、前傾させた顔で抑えながら。
 この街の児童館の厚生員を職とする子とのことだ。家に二、三度あがって来たが、朝子には明るいだけが取り柄の、調子の良いギャルに見えた。そんな感じが恒秋にも伝わったのだろう、後味の悪い言い争いになった。もっとも、ほとんど朝子だけが問い、言い放っていたのだった。それでも朝子には、吐き出したいことを全く出していないという、そんな気持だけが残っている。しょぼしょぼと何日も秋雨が続いて、うっとうしい日の夜のことである。
〈恒秋にはもう、何にも開いてもらえないのかも知れない〉
 ふと、車を転がしてこようと思い立った。

 朝子の軽セダンは今、川岸の児童公園の脇にあった。〈彼をお腹に乗せたあお向け逆さ滑り、「ジェットコースター」とか、あの山でもいろいろ二人でやったねぇ〉、すべすべでピカピカ光ったコンクリート地肌の小さな富士山が、昔のままだ。自然にほほ笑んでいたのだが、目がじーんとしていた。

 軽セダンは次に、薄黒い木造の保育園にさしかかる。朝子には、一階の靴箱の横に立っている若い自分が見えてくる。二歳になったばかりの恒秋がすっと部屋に入っていくか否か、それがその頃、日々の難関だった。部屋が騒々しく、入り口から保母の「志村おばさん」が見えない時には、「一大事の形相」で取って返し、泣き叫んで朝子の体にしがみついていたものだ。大学病院の始業時間との板挟みで泣きたいような自分がよみがえる。手前の砂場には一人っきりで遊ぶ三歳の痩せた恒秋が見え、また切なくなる。他の子どもが近付くのを極端に嫌い、例のように一人ぼっちで砂をいじっている。それで、迎えの朝子を認めてもにんまりと手をあげて、また一人砂遊びを続けるという、そんな感じの子どもだった。
〈友達と遊びをどんどん創造し、それをすっかり遊び尽くしていくこと、それが学力の土台、”見えない学力”である〉、少し後に読んだ本のことを思い出している。まさにこの点で、いつまでも幼い恒秋だった。だからだろうか、学業は並の下。高校まで学年有数という優等生の経験しかない夫婦が二人してあれこれあがいてみた頃の、ほとんど鬱病のような当時の心のもやもやが思い出される。その恒秋もやがて、いろんな大学の入試を二年受け続けた未に、唯一入学を許された名前を聞いたこともないような大学へ入って、今は三年生である。
〈看護婦って大学病院と言っても消耗品だったし、そのうえ共稼ぎなんてみんな毎日戦争やってきたようなものよね。そんな所で私、係長試験も真っ先に通ったし、来年はきっと総婦長になるんだろうし、いつも先頭にいようとしてたし、こういう私だからあの子にも同じようにやっちゃってたのかなぁ、それほどのつもりもなかったんだけど。高校人った頃には、私の言葉なんかもう聞き流されてた感じじゃなかったかなぁ〉
 いつの間にか、近くの川岸の舗装道路を歩いている。ここは、保育園帰りなどの恒秋とのおしゃべり通りで、今歩いていてもなにか「鬱が和む」ようだ。
〈それでも当時のこの場所と時には、恒秋とのおしゃべりという目的があって、何もしない時、場所じゃなかったんだけれども、今の私はほんとにそんなときを過ごしてるわ〉

(続く、あと2回です)
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