Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

日本の素朴絵

2013-01-18 09:40:59 | お絵かき
矢島 新著 PIE Books (2011/03)

これも図書館で借用したが,蔵書としてときどき眺めたくなった.

「序 日本の素朴絵,1 絵巻と絵本,2 大画面の中の素朴,3 庶民信仰の温もり,4 庶民のための素朴絵,5 知識人の素朴,6 工芸の素朴美」という構成.

素朴派というとルソー等を連想するが,著者は,日本の素朴絵はそれとは違うと言う.西欧の絵画は,細部まできっちりと描かないと気が済まない.それはルソーも例外ではない.こちらではほとんど余白の,一筆書きみたいな絵も珍重される.わび・さびと唱え,ひんまがった茶碗を「お宝」とする国民性がこうした素朴絵を産んだのだろう.

百聞は一見にしかず,図版からいくつかご覧に入れると,


江戸時代の大津絵.青面金剛図において,金剛の両脇に控える2匹の猿の内の1匹.紙に皺が寄って,そこがまた味を出している.青面金剛は庚申信仰の本尊だそうだ.


室町時代の浦島絵巻.「中からぱっとしろけむり たちまち太郎はおじいさん」の図だが,しろけむりが円弧を描いて太郎を直撃するのは,現代人のイメージとかけ離れている.


室町時代の,平清盛による人口島造営をテーマとする築島物語絵巻のなかの,奇妙な建物.厳島神社の骨格を連想させる.いちばん手前の窓がシュールだ.


小野道風を描いた幟旗に登場する蛙達.小野さんは何度失敗しても柳に跳びつこうとする蛙を見て,努力することを学んだそうだが,蛙達の表情が小野さんの表情よりずっと哲学的だった.最初のお猿さんもそうだが,日本の絵では人間より動物の方が人間くさい.


「5 知識人の素朴」の一例で,与謝蕪村によるもの.文字は「学問は尻から抜けるほたるかな」.上手すぎ洗練されすぎで素朴とは言えないかも.
この本には「ゆるい」という形容詞が何度も出てくる.白穏,仙厓,乾山,蕪村なども,難しく考えずに,とりあえずは「ゆるかわ」ぶりを楽しめばいいということだろう.

コメント
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