東郷 隆,静山社文庫(2013/01).
「BOOK」データベースより*****
時は19世紀末。各国のスパイやギャングが跋扈するロンドンで、若き日の南方熊楠が遭遇する奇っ怪な事件。政治的陰謀も、ケルト伝説の怪物出現も、クマグスが博覧強記の知識で謎を看破し、豪胆な行動力で決着をつける。虚実を巧みに織り込んだ博物学的エンターテインメント。*****
南方熊楠は「歩く百科事典」と呼ばれた博物学者.
ロンドンに滞在中の夏目漱石を登場させた,山田風太郎の「黄色い下宿人」を連想したが,年譜を見たら漱石は熊楠と入れ違いでロンドンにやってきたようだ.ロンドンの漱石はノイローゼになったりして陰気なイメージだが,そこへ行くとこの本の熊楠は正反対.
タイトルも内容も「ホームズの冒険」を意識しているらしいが,ミステリを期待すると外れる.
目次には「ムカデクジラの精」「巨人兵の柩」「妖草マンドレイク」...など,怪しいタイトルが並んでいて,橘外男や小栗虫太郎を思わせる.しかし実は,名前だけでタイトルの題材を博物学的に掘り下げてはいない.
では,何が読みどころかというと,南方熊楠とそれをとりまく世紀末ロンドンの描写.Nature に論文が出ることが熊楠氏の一大関心事だったりする.あの孫文も登場.
文庫版のカバーは子猫だが,熊楠は時計を質に入れてしまったので,猫の瞳を見て時刻を判断していたのだそうだ.この調子で,どこまでが本当で,どこからがフィクションか分からないところが楽しい.
「BOOK」データベースより*****
時は19世紀末。各国のスパイやギャングが跋扈するロンドンで、若き日の南方熊楠が遭遇する奇っ怪な事件。政治的陰謀も、ケルト伝説の怪物出現も、クマグスが博覧強記の知識で謎を看破し、豪胆な行動力で決着をつける。虚実を巧みに織り込んだ博物学的エンターテインメント。*****
南方熊楠は「歩く百科事典」と呼ばれた博物学者.
ロンドンに滞在中の夏目漱石を登場させた,山田風太郎の「黄色い下宿人」を連想したが,年譜を見たら漱石は熊楠と入れ違いでロンドンにやってきたようだ.ロンドンの漱石はノイローゼになったりして陰気なイメージだが,そこへ行くとこの本の熊楠は正反対.
タイトルも内容も「ホームズの冒険」を意識しているらしいが,ミステリを期待すると外れる.
目次には「ムカデクジラの精」「巨人兵の柩」「妖草マンドレイク」...など,怪しいタイトルが並んでいて,橘外男や小栗虫太郎を思わせる.しかし実は,名前だけでタイトルの題材を博物学的に掘り下げてはいない.
では,何が読みどころかというと,南方熊楠とそれをとりまく世紀末ロンドンの描写.Nature に論文が出ることが熊楠氏の一大関心事だったりする.あの孫文も登場.
文庫版のカバーは子猫だが,熊楠は時計を質に入れてしまったので,猫の瞳を見て時刻を判断していたのだそうだ.この調子で,どこまでが本当で,どこからがフィクションか分からないところが楽しい.