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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

村上春樹「セロニアス・モンクのいた風景」

2014-10-22 08:17:17 | ジャズ
新潮社 (2014/09).

村上春樹 編訳のアンソロジー.原著者は
村上春樹,ロレイン・ゴードン,メアリ・ルウ・ウィリアムズ,トマス・フィッタリング,スティーブ・レイシー,ナット・ヘントフ,デヴィッド・カスティン,ダン・モーゲンスターン,ベン・ラトリフ,バリー・ファレル,レナード・フェザー,オリン・キープニューズ,ジョージ・ウィーン.
いちばん長いナット・ヘントフの文章が読み応えがあった.レナード・フェザーによるブラインドフォールド・テストも面白かった.

いろいろな著者が,いろいろなモンクの「金言」を紹介している.例えばデヴィッド・カスティンによれば
ボブ・ディラン「僕は道端でフォークソングを演奏しています.」
モンク「われわれみんなフォークソングを演奏している.」

同じ事実を複数の著者がそれぞれの視点で述べているのがおもしろい.ただし,芥川の「藪の中」ほどではない.

統合失調症とか躁鬱病とか言うが,死ぬ一年か二年前にはすべてのものごとに対する関心を失っていたという.「モンクのことを考えるだけで泣きたくなる」という人は多く,16 トンにもその気持ちが分かる.

学生時代に来日公演のテレビ中継で,ぼんやりした白黒場面で彼が足をばたばたさせていたのを思い出す.でも,今ではモンクの作品群は古典になり,若い人にはこの本もモーツァルトの伝記と同じかもしれない.

村上春樹がジャズメンについて書いた文章は多いが,中にはどうかなと思うものがある.どのくらい対象が好きかによるのだろう.その点でこの本は成功.
表紙は安西水丸に頼んであったが,安西氏の急死により,和田誠が水丸ふうのイラストを提供している.そういうお遊びを抜きに考えると,良い装丁かどうかわからない.
「ブルース」ではなく「ブルーズ」とするあたりでも,この訳者が好きか嫌いかが分れそう.
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