
円盤楽器のための音階の櫻井直樹氏は,もともと球体の固有振動数を研究しておられたとうかがっている.スイカを叩いて甘いかどうか見分けるのも,その応用のひとつである.
冒頭の図はスイカを叩いたときの音のスペクトルの一例.楽器のそれとは違い,左端のものを除き3本のピークは接近していて,周波数比は整数比ではなく,高い周波数成分がない.
ちなみに,1.42 ピークがスイカの甘さと相関があるとのこと.
大きさの異なるスイカをずらりと並べれば、円盤楽器ではなくスイカ製球体楽器である.
各々の最低音は12音平均律をなすが,線スペクトル周波数間の比率 1 : 1.42 : 1.85 は保存されるとする.この仮定のもとで,スイカを叩いてメロディを奏でることを模擬してみた.スペクトルを3本の線で近似し,Max-MSP で作った音源をキーボードにつないで,ハービー・ハンコックのWatermelon Man を演奏した結果がこれである.なお動画は iTune のビジュアライザ. バックのベースとドラムスは Band-In-A-Box から借用した.
生音からサンプリングして音階を作ったほうがリアルに感じられると思う.
最初に聞いたとき,音が低めに感じられたので,各音を 4 セントずつ上げてある.
スペクトルには,2倍波,3倍波,... などは存在しない,弦楽器・管楽器の楽音では,整数倍音が聞こえるのだが,スイカ音には整数倍音が存在しない.コード,従ってコード進行は整数倍音と切り離すことができない.この動画の音楽を聴いて違和感があるとすれば,あるいはスイカ音とベースが合わないように感じたとすれば,そのせいもある.
多次元の音源を持つ楽器で旧来の音階を持つ曲を演奏した一例のつもり.円盤楽器のためのサクライ・スケールは,理論に基づいて不協和曲線から協和可能な音列を拾い出して音階を作るという手順を踏んでいる.美しく響かせるには五線譜に書けない楽曲が必要で、既存の楽曲は不適とされている.