久しぶりの東京は美味しかった...というのは主観に過ぎず,慣れ親しんだ味が懐かしかったいうことだろう.
これは日本橋・吉野鮨本店の穴子.やわらかくふわふわで飯に寄り添っている.広島ではやや硬いゴム状が大きく飯を覆っていることが多い.
飯が甘くないのがいい.
春子,二枚づけの新子から始め,独自の薄焼き玉子の握りまで,少々食べ過ぎた.
時間帯だと混んでいて,店は戦場みたいになる.この日は昼が早くて腹が減り,5 時頃行ったのだが,のんびりしたものだった.カウンターでは 90 歳超という,すこし呆けたらしいお婆さんが「おいしいねえ」「きれいだねえ」を連発し,「もっと飲め,もっと飲め」と引率してきた息子さんを困らせていた.
東京の鰻もやわらかくふわふわしている.じつは名古屋で初めて,蒸さないという関西風の蒲焼を食べたときは,すごく美味しく感じたのだが,今回 野田岩に行って,やはりこちらは良い...というか,関西と関東では別の食べ物だと思った.
一番安いコースを注文.お通し (煮こごり)・一口志ら焼・鰻重で,肝吸・香の物・箸休め・デザート付.志ら焼 (白焼き) の器には下に熱湯が入っている.わさびと塩で食す.
箸袋には天然と謳っているが,店内には天然・養殖の両方を使っていますとの張り紙.鰻重の鰻は小さく,同行の 学生時代の先輩の奥様は「鰻でご飯が隠れていない」と憤慨されていたが,全員歳のせいか,食べてみたらちょうどよかった.ちなみに鰻の大きさはコースの値段によるらしい.
東京タワー下の本店に行ったら,別館に案内されたのだ.狭い階段,梁が出た天井,ベンガラ色のテーブルと,時代色が出ていたが,出店後振り返ったら,ビルの一階が玄関だった.全部大道具だった!
東京の店は客のあしらいが上手い.気さくだが,積極的に客の会話に介入することがない.お茶を変えてくれたりするタイミングが良い.このあたりが,江戸の名残り ?