Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ポリゴノーラ @ 近江楽堂

2015-10-19 21:20:59 | 新音律
二次元楽器に基づいた楽器と音楽の披露,10/17(土)1400-.

この日演奏されたのは,金属円盤を並べたセットである.三角形・長方形なども試作中なので,楽器を「ポリゴノーラ」と命名したとのこと.ポリゴンは多角形のことで,究極の多角形が円である,というわけ.ドレミ...は弦楽器・管楽器という「一次元楽器」,すなわち豊富な整数倍音を持つ音源のための体系である.音源は二次元に拡張すると,整数倍音は出ないから (別な高調波は体系的に発生する!!) ドレミ...という音階も 12 音律もご破算である.

プログラムはウェプに出ていたものと多少順番が入れ替わり,第一部が櫻井直樹さんによる解説と,この二次元楽器の演奏.

灰谷敬二さんの「パフォーマンス」はドーム天井を持つ会場のせいもあり,釣鐘の中に閉じ込められて鐘の音を聞く感じ.もちろん鐘とちがって音色は豊富だが,大音量の恍惚感と,「もうやめてくれ」感が交互に押し寄せる.これが 奏者の狙いだろう.
叩いた後円盤の上で掌をひらひらさせてビブラートのような効果を出すなど,奏法にいろいろな可能性があるようだ.

一ノ瀬トニカさん作曲の委嘱作品 First Flight は全 4 曲で奏者はふたり.解説が配布された.
灰谷さんがハンマー (のようなもの?) を使ったのに対し,こちらはマリンバのマレットらしきものを用いたので,ずっと柔らかい音色だった.また円盤の架台も,灰谷さんの場合は音が周囲に反射するようになっていたが,こちらはそれがなく,従って音量も小さく穏やかだった.

当然だが非ドレミ体系が前面に出ていて,櫻井理論に従った曲と,作曲者が感性に従って作った曲があるとのこと.2 曲目・swaying moon はコード中心,3 曲目・cloud はトレモロ中心と,いろいろ披露されたなかで,1 曲目・first flight と,4 曲目・dew drops fall のメロディが覚えられそうな気がした .
... しかし 16 トンはその昔,12 音より多数の音を使った音律で曲を作ったとき,曲を覚えたつもりでも,いつの間にか記憶の中で 12 音律で近似した曲にすり替わったことを経験している.この曲では,12音律の呪縛から逃れられるかどうか.
CD あるいはウェブ配信で,この録音を繰り返し聞けるようにしていただきたい.

桜井真樹子さん作曲の委嘱作品「カウントダウン・メルトダウン」は声明,琵琶,尺八とポリゴノーラのコラボレーション.最初の解説で櫻井さんが和楽器のスペクトルには整数倍音以外の成分が豊富なことを示され,演歌まで披露されたが,それがこの曲につながったのだろう.
声明の内容は福島の原発事故の事実を並べたもので
「二千十一年三月11にち午後二時四十六分 福島第一原子力発電所を マグニチュード 八・四の地震.襲いけり」
で始まり
「第一号機の建屋 爆発」
で終わった. 文言は配布された.
その後,琵琶・尺八・ポリゴノーラの短い即興演奏があった.

第一部が長引いたので,第二部・パネルディスカションの途中で失礼した.作曲家・演奏家の言葉が聞けたのが収穫だった.
この会場は響きすぎ,音楽向きではあるが講演・シンポジウムには向いていないと思った.
コメント
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