Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

戦前ならではの口福

2015-11-15 19:54:10 | 読書
ロッパ食談には「戦前は美味しかった」という文句が繰り返し,繰り返し出てくる.うちの両親もそう言っていた.戦前の「戦」とは太平洋戦争のことで,その当否はわからない.
この食談には福島慶子の言も引用されていて

「かくまで落ちぶれたのもみんな東條一派のお陰だと思うとこの事だけでも決して許せない気がする」

だそうだ.クイモノの恨みは恐ろしい.

現在では不可能なのは,この食談の中の「想い出」の出だし...

フランスの汽船会社M・Mの船が、神戸の港へ入ると、その船へ昼食を食べに行くことが出来たものだった。
はじめての時は、フェリックス・ルセルという船だった。.....(中略).....落着いた食堂で、純白のテーブル掛のかかったテーブルに着くと、黒ん坊のウェイターが、サーヴィスして呉れる。パンを、皿に載せないで、直じかに、テーブルクロースの上へ置かれたのに、いささか面喰いつつ――パンの粉を、黒ん坊のウェイターが、時々刷毛で掃除して呉れた。――先ず出て来た、フォアグラの味に、もう、うっとりとしてしまった。
.....(中略)....
いっそ、罪な目に遭った。そんな気がした。なまじ、あんな美味うまいものを知らなきゃあ、こんな苦労はあるまいものをと、戦時中、幾たび嘆いたか分らない。又、戦後の今日、もはや何でも出揃い申し候の今日に至っても、M・Mの船で食ったフランス料理の味は、時々思い出す。

羨ましい...
この「想い出」その他の幾つかの随筆は,青空文庫で閲読できる.

汽車の食堂車などは,つい先年まであったが,もう取り戻せないようだ.
ロッパ食談には「色町洋食」も出てきて,やはり戦前ならではのものらしいが,長くなるのでこのへんで.
コメント
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