Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

地方都市オーケストラの悲哀 : 綾峰音楽堂殺人事件

2020-01-20 09:34:08 | 読書
藤谷治「綾峰音楽堂殺人事件」ポプラ社(2019/6).


Amazon の内容紹介.
*****音楽評論家として著名な英文学教授・討木穣太郎は、綾峰県立音楽堂を活動拠点とする綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰県を訪れていたが、ある日この音楽堂の取り壊しと綾峰フィルの解散を告げられる。釈然としない思いのまま迎えた音楽堂の最終公演の日、音楽堂で殺人事件が起きた。殺されたのは、音楽堂の取り壊しを引導した男だった―。*****

この著者は初体験.松本清張的なテーマを現代的にニヒルな文体で書いたおとなのミステリ.
地方財政の苦しい中での文化事業の圧迫は,大阪維新・橋下対大阪フィルを思わせる.DJがラジオ局を利用して主張をブーム化するところもどこか似ている.あるいはもっと直接なモデルがあるのかもしれない.
綾峰県の人口流出・高齢化は大阪よりずっと深刻だ.ちなみにこのオケの正式メンバーは18人にまで減少する.

演奏場面描写に迫力がある.
ハイドンの「告別」で,演奏者が次々に退席することがストーリーに利用されている.
クラシック名曲のさわりを集めたコンピレーションでは,シューベルト「ロザムンデ」と言えば序曲ではなく間奏曲だそうだが,これもおもしろおかしく利用されている.

大学教授兼音楽評論家がホームズ.小説家がワトソン役で,ワトソンの一人称記述.彼はホームズをまったく尊敬していない.ホームズも独善的.殺人後,彼は被害者のカノジョ (ロミオとジュリエットの関係) の身を案じてジタバタと慌てふためき,それが加害者の逮捕に至るのだが,実はそのときカノジョは加害者のベッドで安眠中だった...という,なかなかな結末.ネタばらしごめんなさい,

図書館の本.

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