江戸時代の戯作は絵と文が一体となっているが,「明治文学の彩り」によれば,作者が絵について細かく指示したのだそうだ.柳亭種彦,曲亭馬琴などは絵入りの原稿が残っていて,絵もうまい.
昔の絵師は文章など読まなかったから,必須だったのかもしれない.
この伝統は明治末期まで残っていた.図は島崎藤村の「破戒」島崎藤村私家版 (1906 明39) の口絵「姉弟」の,藤村による指示画と,鏑木清方による完成画.
藤村の絵は腰掛けた女性の骨格がちょっと変だが,それにしてもうまい.番号をつけて細かく指示している.作家が画家を見下しているようにも感じられる.「△ 晩秋と初冬の間」などといわれて,清方は めんどくせー と思ったことだろう.ちなみに,清方 1878-1972,藤村 1872-1943.年齢は思ったほど違わない.
坪内逍遥も絵がうまかった.
樋口一葉は指示画を描くために絵を習いに行ったとか.