読売新聞社 (1976).
読むものがなくなるとこの本を,十年以上間が空くが,何回か読み返しているので,マイ愛読書かもしれない.
カバーの6行は内容の分類で,「キリオン・スレイ...」「退職刑事」は本格もので各2編.「なめくじ長屋...」2編と「春色..」3編は江戸時代に設定した,やはり本格.「17人目...」3編は奇妙な味.「怪談...」3編は文字通り,と言いたいが,ショートショートの通念からすると長い.巻末に,自作解説「私の推理小説作法」
「キリオン・スレイ」からぼくはドリアン・グレイを連想したが,自作解説にはそんなことは一言も書いてなかった.「トリストラム・シャンディの生涯と意見」のもじりとは書いてあるけれど.
「退職刑事」は退職した刑事が安楽椅子ではなく茶の間などで推理する.このあたりの現代ミステリはもっと読みたいところ.
「17 人目...」は中井英夫作品を連想させるものがある.
「なめくじ長屋...」ではさまざまな色に染めた砂で地面に絵を描いている砂絵師,通称センセー (元は武士?) が事件を解決する.著者の巷の捕物帳に対する批判を作品で実践した感じ.
「春色..」は為永春水が探偵役.この本の3編では春水は売れなかった時代から次第に,事件を糧として,戯作者として成長して行く.もともとの企みは「推理小説・為永春水伝」といった一冊を上梓することだったという.
著者 (1929-2003) は早川書房のエラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジンの初代編集長.
魅力的な謎と,謎を生んだ必然を論理的に語るのが推理小説である,とするのが彼の小説作法だろう.機械的なトリックなどの出る幕はない.でも謎解きには,ある種のパターンは感じられる.
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