中村文則 文春文庫(2019/7).初出は 文学界 2016/6,単行本も 2016/6.帯の惹句「純文学 x ミステリーの最高傑作」に惹かれ購読.
Amazon の BOOKS データベース引用*****「先生に、私の全てを知ってもらいたいのです。私の内面に入れますか」心療内科を訪れた美しい女性、ゆかり。男は彼女の記憶に奇妙に欠けた部分があることに気付き、その原因を追い始める―。傷つき、損なわれたものを元に戻したいと思うことは冒涜なのか。Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した傑作長編小説。*****
Bunkamura ドゥマゴ文学賞って何? と Wikipedia で調べたら,「パリのドゥ・マゴ賞(1933年創設)の持つ、先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘を目的に1990年に創設された」ものだそうで,「前年7月1日から当年7月31日までに発表された小説・評論・戯曲・詩を,任期1年の「ひとりの選考委員」が審査し」するシステム.2016 年の選考は亀山郁夫,ロシア文学者だそうだ.
さてこの小説は,精神医学的に個性を消滅させることがテーマ.復讐も絡んで,その手法は催眠術・投薬・電気ショック+虐待で,とにかくおぞましい.主な登場人物は性的に異常な幼児体験を持つ.宮崎勤が引き合いに出される.
読んで連想したのは,夢野久作の「ドグラ・マグラ」(ドグマグ文学賞じゃないの?).芥川賞作家らしい文体だが,著者が夢野に比べ腕力不足の感は否めない.
この著者の小説は「去年の冬,君と別れ」以来だが,「去年...」のことは忘れていることに気づいた.
☆☆☆
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