このブログにも何度か書いたテーマであり,拙著「音律と音階の科学」の読者からもいくつかコメントや質問をいただいている課題である.
この鍵盤を世紀の大発明のように喧伝する本もあるが,それなら何で普及しないのだろう.
図はかってブログに示した図で,いちばん上はオイラー格子とよばれるもので,横一列に5度間隔で音名が並んでいる.どの一列でもよいから左右に延長し12音を取り出すと「5度円」ができる.縦方向の間隔は3度である.上から3列目左から4番目のCの3度上が,上から2列目左から4番目のEである.ただしここでは横一列全体が3度上がっているので,「+」を付けて E+と表した. C をドとするなら,純正律のミは E+でなければならない.ちなみに C と同じ列で横4番目の E はピタゴラス音律のミである.
上から2番目の図が田中正平の純正律鍵盤で,白鍵は純正律のハ長調長音階をなす.この長音階の構成音は一番上の図では,緑に着色した上3枡した4枡の図形を作っている.長音階を移調することは,この図形を,右下が出っぱった上3枡4枡の形状のままで,上下左右に平行移動することになる.例えばト長調長音階の構成音は E+ B+ F#+ および C G D A の7音が作る図形,へ長調長音階の構成音はD+ A+ E+ および Bb F C G の7音が作る図形である.
ただしこのままではレとラ ,ハ長調では DとA+が不協和すなわち「ウルフ」となるので,この2音を重ねるときは,DとA(A+キーの左上)としたりする.この操作はどの長音階でも必要となる.
上から3番目,4番目の図はそれぞれ鍵盤上にト長調とヘ長調の音階の構成音を示したものである.平均律ではこれらの音階では鍵盤上でそれぞれ1音が半音上がったり下がったりするだけだが,ここではそれぞれ2音が変化する.もっと # や ♭ が多い調性を考えると,気が遠くなりそうだ.
下の動画の6:25あたりから,実際にこのオルガンを演奏している場面を見ることができる.
この鍵盤のために複雑な演奏に習熟することは現実的ではない,というのが16トンの見解.しかし見方を変えれば,演奏時の両手を見るのは面白いし,習熟することにオタクな喜びを感じる方もおられるかもしれない.鍵盤をハードウェアで作りさえすれば,コンピュータ音源と組み合わせるのは簡単だろう.
しかし,現代という AI 時代では,このような鍵盤の他にも容易な道がある.しかしこちらもあなり普及はしていない...
この鍵盤については,篠原盛慶「エンハルモニウムに適用された音律─田中正平の「純正調」を読み解く」音楽表現学 11, p1-12 (2013) にくわしく記述されており,無料でダウンロードできる.
この鍵盤を世紀の大発明のように喧伝する本もあるが,それなら何で普及しないのだろう.
図はかってブログに示した図で,いちばん上はオイラー格子とよばれるもので,横一列に5度間隔で音名が並んでいる.どの一列でもよいから左右に延長し12音を取り出すと「5度円」ができる.縦方向の間隔は3度である.上から3列目左から4番目のCの3度上が,上から2列目左から4番目のEである.ただしここでは横一列全体が3度上がっているので,「+」を付けて E+と表した. C をドとするなら,純正律のミは E+でなければならない.ちなみに C と同じ列で横4番目の E はピタゴラス音律のミである.
上から2番目の図が田中正平の純正律鍵盤で,白鍵は純正律のハ長調長音階をなす.この長音階の構成音は一番上の図では,緑に着色した上3枡した4枡の図形を作っている.長音階を移調することは,この図形を,右下が出っぱった上3枡4枡の形状のままで,上下左右に平行移動することになる.例えばト長調長音階の構成音は E+ B+ F#+ および C G D A の7音が作る図形,へ長調長音階の構成音はD+ A+ E+ および Bb F C G の7音が作る図形である.
ただしこのままではレとラ ,ハ長調では DとA+が不協和すなわち「ウルフ」となるので,この2音を重ねるときは,DとA(A+キーの左上)としたりする.この操作はどの長音階でも必要となる.
上から3番目,4番目の図はそれぞれ鍵盤上にト長調とヘ長調の音階の構成音を示したものである.平均律ではこれらの音階では鍵盤上でそれぞれ1音が半音上がったり下がったりするだけだが,ここではそれぞれ2音が変化する.もっと # や ♭ が多い調性を考えると,気が遠くなりそうだ.
下の動画の6:25あたりから,実際にこのオルガンを演奏している場面を見ることができる.
この鍵盤のために複雑な演奏に習熟することは現実的ではない,というのが16トンの見解.しかし見方を変えれば,演奏時の両手を見るのは面白いし,習熟することにオタクな喜びを感じる方もおられるかもしれない.鍵盤をハードウェアで作りさえすれば,コンピュータ音源と組み合わせるのは簡単だろう.
しかし,現代という AI 時代では,このような鍵盤の他にも容易な道がある.しかしこちらもあなり普及はしていない...
この鍵盤については,篠原盛慶「エンハルモニウムに適用された音律─田中正平の「純正調」を読み解く」音楽表現学 11, p1-12 (2013) にくわしく記述されており,無料でダウンロードできる.
私の耳が確かだということではないと思うのですが、私の場合は琴を扱っているので毎回調弦が必要で、部分的には純正律ができるのではないか、と考えてしまいます。
でも、合わせる音によって、これはいい響きで決まったと思っても、違い音と合わせると、なんだか合ってない、ということが多々あります。
下のドとソを合わせるといい響きで決まったのに、上のドと合わせるとなんか合ってない…のようなことが多くあります。
それで、なんとなく、いろんな音と合わせて妥協点に決めるというようなことを毎日やっています。
和楽器は、尺八の音を基音にして調弦されていた時代があり、場合によっては、尺八のコンディションによっては、そのときの尺八に合わせて演奏しているのではないかと思うので、絶対音感は要らないのですが、結局、弦同士で合わせると決まらないので、なんとなく巷で流れている音に耳が慣れてきていて、適当にドレミファソラシドと音を取っていく方が調弦しやすいと感じている今日このごろです。
5度が完全な音で、神の音?のようにされていた時代(グレゴリオ聖歌など)には、3度は不協和音とされていたと聞いたことがあり、3度を取るのは難しいと感じます。
その3度が純正律ではけっこう決め手の音になっているのでしょうか。
ピアノの音にも所々気持ち悪さを感じてしまいますが、これは調による個性が出るものとして、味わいととらえた方がいいのかな、とも思います。
一番違和感のない響きで曲を作り、奏でるということが人間にとってはとても叶え難いというのは、人類にとってどんな意味があるのかなと、素朴な疑問が浮かびますね…。
平均律では転調も移調も自由自在ですが,平均的に響きが悪い.田中正平の鍵盤は転調・移調しても純正律を保つようにするのが目的です.平均律ピアノが気持ち悪いのは,調による個性というより,個性を期待しても裏切られるからかもしれません.
箏(琴)のように,たぶん曲ごとに随時調弦できる楽器は,こうした鍵盤とは無縁ですね.
オクターブは周波数2倍の音,5度は3倍,3度は5倍 (名前は逆ですね) が基なので,3度の方が5度よりは取りにくいのかもしれません.しかし3度の響きが癖になった結果,純正律が生まれたようですよ.
オーケストラの管弦楽器は (尺八ではなく) オーボエに合わせていますが.これはオーボエの音の高低をコントロールする余地があまりないからであると聞いたことがあります.尺八に合わせるのも,同じ理由かもしれません.