植松三十里「空と湖水 夭折の画家 三橋節子」文藝春秋 (2019/7).
三岸節子ではない.
Wikipedia から抜粋すると*****三橋節子 1939-1975 は日本画家.夫の鈴木靖将は日本画家.2児の母.33 歳で鎖骨の癌により利き手の右手を切断.左手で創作を続けたが,35歳で癌の肺転移により他界...*****
という略歴だけでも小説的な生涯.著者あとがきによれば,フィクションとのことだが,ノンフィクションとの境界はよくわからない.
小説は節子が未来の夫君をナンパする場面から始まる.しかし全体におとなしい書き方で,安心して読める.青少年向き? 大人にはちょっと物足りないかな.
節子は京大教授ご令嬢であることにコンプレックスを感じる.彼女は 16 トンと同世代.当時の「ハングリーでなければ芸術家になれない」的な風潮はわかるように思う.右手を切断されたその病院で,子どもにねだられて左手で描き始める場面など,いかにも女性らしい筆致だ.
三橋節子美術館が大津市にあるそうだ.三橋作品には近江の民話に題材をとったものが多い.この本のカバー「三井の晩鐘」と扉の「余呉の天女」は代表作.ネットでみた限りでは 16 トンの好みではないが,植松さんのおっしゃるように,実物をみれば全く印象が異なるのであろう.
西洋絵画で言えば,神話やキリストをテーマにした絵に相当すると思うが,そういう絵が苦手なのだ.梅原猛による「湖の伝説 - 画家・三橋節子の愛と死」新潮社 (1977/1)という評伝...一時新潮文庫に入っていた,にはテーマについて哲学的? に書いてあるのかもしれない.読み比べてみたいところ.
パソコン上では右の赤ちゃんの絵のような,一見 民話と無関係な作品がいいと思った.
図書館で借用.☆☆☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます