藤巻 一保「吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件」 (学習研究社 学研新書 2007/9)
熊沢天皇は自称南朝の末裔で,この本は彼の悲喜劇人生を描いている.
天皇制支持者が熊沢天皇に対してどういう態度をとるか,野次馬的興味がある.
皇居に楠木正成の銅像があるが,これも理解に苦しむ.彼は今の天皇の祖先と敵対した,南朝のために死んだのだから.
著者の態度はクールにして 健康的.万世一系など幻想で,天皇制は官僚に取って都合のいいものに過ぎないと言うのだ.戦前の軍部・官僚は,昭和天皇がかれらの言うことを聴かないときの切り札とするために,熊沢天皇や偽熊沢天皇 (ややこしいが,自称南朝末裔は多数存在するのである) を切り捨てなかったという.
ただし熊沢天皇問題がまともにに天皇制にかかわることはなかった.戦後熊沢天皇が昭和天皇を訴えたこともあったが,天皇は裁判の対象にならないという奇天烈な判決で門前払いにされた.
熊沢天皇の一生は猿回しの猿みたいなものだったのかもしれない.ご本人はドンキホーテ的人格の持ち主で,本書でもあしざまに描かれてはいないのが救い.
小説と思って読めばおもしろい.
熊沢天皇は自称南朝の末裔で,この本は彼の悲喜劇人生を描いている.
天皇制支持者が熊沢天皇に対してどういう態度をとるか,野次馬的興味がある.
皇居に楠木正成の銅像があるが,これも理解に苦しむ.彼は今の天皇の祖先と敵対した,南朝のために死んだのだから.
著者の態度はクールにして 健康的.万世一系など幻想で,天皇制は官僚に取って都合のいいものに過ぎないと言うのだ.戦前の軍部・官僚は,昭和天皇がかれらの言うことを聴かないときの切り札とするために,熊沢天皇や偽熊沢天皇 (ややこしいが,自称南朝末裔は多数存在するのである) を切り捨てなかったという.
ただし熊沢天皇問題がまともにに天皇制にかかわることはなかった.戦後熊沢天皇が昭和天皇を訴えたこともあったが,天皇は裁判の対象にならないという奇天烈な判決で門前払いにされた.
熊沢天皇の一生は猿回しの猿みたいなものだったのかもしれない.ご本人はドンキホーテ的人格の持ち主で,本書でもあしざまに描かれてはいないのが救い.
小説と思って読めばおもしろい.