【老後のお金】:年収が低くても「老後2000万円不足しない」人たちの、ある共通点 一方、老後破綻する人たちは…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【老後のお金】:年収が低くても「老後2000万円不足しない」人たちの、ある共通点 一方、老後破綻する人たちは…
にわかに巻き起こった「老後2000万円」騒動だが、現実に老後破綻する家計は後を絶たない。かつてないほどの老後不安が蔓延している中、最も知りたいのは「わが家の家計防衛術」だろう。年金だけに頼れないのであれば、いったい我々はどうすればいいのか。このほど『まだ間に合う!50代からの老後のお金のつくり方』を上梓したファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏によれば、老後資金が不足する人・しない人の違いはじつは年収とはそれほど関係がないと言う。老後不安に怯えずに済むための方法とは――。
◆老後不安大国・ニッポン
「老後2000万円」問題が注目を集めたのには明確な理由があります。ここ日本では「老後のお金」に不安を持つ人が年々確実に増えているからです。
私はファイナンシャルプランナー(FP)として仕事を始めて23年になります。駆け出しだった1990年代の終わり頃に受けた相談を振り返ってみると、「老後の暮らしがとても心配」という相談者は今ほど多くなかったと記憶しています。当時の定年間際の相談者の多くは、ものすごく頑張らなくても「そこそこの老後資金」が準備できていました。
40代~50代の「老後不安」が急増したのは、5年くらい前から。2014年にNHKスペシャル『老人漂流社会〝老後破産″の現実』という番組が大きな話題を集め、2015年には『下流老人』がベストセラーになりました。以降「老後破産」「下流老人」という言葉が頻繁にメディアをにぎわせています。

一般の人がこれまであまり目にすることのなかった、経済的に老後生活が立ちゆかなくなった人の「深刻な事例」を多く知ることになり、「自分は大丈夫なのだろうか」と不安を覚えるようになったのです。さらに、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が著書『LIFE SHIFT』で提唱した「人生100年時代」が日本社会に浸透。長寿化が進む中、想定以上に長生きしたために用意した老後資金が尽きてしまう「長生きリスク」が意識されるようになったことも、老後不安が蔓延するようになった背景にあるように思えます。
さて「老後破産」は、現実に私たちに起こりえるのでしょうか。
◆夫婦2人「年金180万円」で暮らせるか…
メディアなどで深刻事例として紹介されている人たちのほとんどは、老後資金が少ないこと以外に、本人や家族の病気や介護による早期の離職など複合的な要因を抱えています。生活保護など何かしらの公的な援助がないと暮らしていけないほど困窮し、「破産」状態に陥る人は全体から見ると少ないと考えられます。
しかし、老後に向けて何も準備をしないままリタイアすると、「破産」はせずとも「老後貧乏」になるリスクが誰にもでも大いにあります。
しかも、今50代前後の皆さんは特に、「お金を貯めにくい環境」に置かれています。
親世代が現役だった頃は経済が上向きで金利水準も高かったですし、子どもの教育費も今ほど負担は重くありませんでした。しかし今は、預貯金の利息は全く期待できないですし、子どもの教育費はインフレ状態です。晩婚化や晩産化で、50代どころか定年した後も教育費や住宅ローン返済に追われ、老後のお金を貯める余裕がないという世帯も増えています。
複合的な要因により、「定年のゴールが見えてきたのにお金がない」人が急増中です。そう、老後資金が貯まっていないのは、あなただけではないのです。でも、大丈夫。今からでも、できることはまだまだあります。

長年家計相談を受ける中で、「このままではまずい」と気が付くことが、貯蓄アップの最大のモチベーションになると実感しています。定年までカウントダウンが始まり、危機感を覚えているあなたは、すでに一歩踏み出しているのです。
現在52歳の私が「このままではまずい」と気が付き、老後資金づくりについて考え始めたのは40歳のときです。お金の専門家のFPとしては、遅いほうかもしれません。
我が家は自営業の夫と、夫の両親との4人暮らし。子どもはいません。夫婦ともに国民年金加入の自営業ですから、将来もらえる年金額は会社員を長年続けた人に比べると格段に少ないのです。「ねんきん定期便」の試算によると、65歳から受け取る年金見込み額は夫婦二人で年180万円ぐらい。40年近く会社員だった男性の年金額は年200万円前後(厚生労働省モデル)ですから、会社員一人分にも満たない額。
もちろん可能な限り長く働くつもりですが、年金だけの収入になったとき、これだけでは暮らしていけません。
◆「年収」は関係がない
さらに、です。
会社員と違っても退職金もなし。自営業者の老後資金は自分で貯めなくてはいけない部分が多い。そこで40歳になったとき、「この調子で貯めていくと60歳までにいくら貯まっているのだろう?」と電卓をたたいてみてびっくり! 漠然とイメージしていた老後資金の目標額の半分に達しないことが分かりました。ちょっと衝撃でした。

そこで改めて60歳までに貯める目標額を設定し、老後のために積み立てをスタートしました。
何しろ自営業、毎月の売上に変動があるので、最初から毎月の積立額を多くするのは結構勇気が要ります。でも、毎月のお金の収支を確認しながら、やりくりを続けていくうちに、「もう少し積み立てができるかな」と思えるようになりました。
もちろん売り上げが少ない月は口座残高がさみしくなり、「積み立て貧乏」を実感することも。それでも残ったお金で暮らさないといけないので、そんな月は飲みに行く回数が減りますし、無駄な買い物を控えるようになりました。
現役時代に「積み立て優先、残ったお金で暮らす」という習慣を身に着けることは、2つのメリットがあります。一つは、確実にお金が貯まること。もう一つは、収入が大幅にダウンする年金生活に向けてのトレーニングができることなのです。
私のところに定年退職後の生活設計の相談に来る人で「心配ない」と思えるのは、「積み立て優先、残ったお金で暮らす」習慣が身に付いている人です。決して年収の多寡ではありません。
◆「老後資金2000万円」はまだ間に合う
この習慣は大きな努力や節約をせずとも身に付けることができます。
50代からでも大丈夫。できることからぜひ、行動に移してみるべきです。
さらに、老後資金の大切な原資である退職金や年金を有利に受け取る方法や、税制優遇制度を使いながら効率的に老後資金を増やす方法もあります。こうした知識があるとないとでは、将来もらえるお金に大きな差がつきます。
おりしも「老後資金2000万円」問題が世に問われていますが、この機会にぜひ、「自分にとって一番お得な方法」を知っておいてください。
これからのお金について考えることは、人生を考えること。50代以降、どんな働き方・暮らし方を選ぶかによって、「老後に必要なお金」も「必要な老後資金」の額も変わってきます。
いま40代後半から50代前半の人はまだ間に合います。漠然とした「老後不安」を払拭し、50代からの人生を前向きに生きるためのマネープラン作りを考えるべきなのです。
元稿:現代ビジネス 主要ニュース 経済・企業 【担当:深田 晶恵 (株)生活設計塾クルー取締役 ファイナンシャルプランナー】 2019年06月25日 09:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。