「だが野党は、ことさらに公的年金と豊かな老後を送るための余裕資金を混同させ、不安をあおってはいないか。これが参院選を控えた戦術であるとすれば、あまりに不毛だ。これでは少子高齢化が加速する中で、国民の利益につながる老後のあり方について、建設的な論議など望みようがない」

 野党が参院選を乗り切るために有権者の不安をあおっている。産経社説はそう言いたいのだろうが、報告書をまとめさせたにもかかわらず、それを受け取ることを拒否したことが今回の問題である。最初に参院選への影響を気にしたのは与党自民党の方だ。それを見て野党が攻撃材料に利用した。野党であれば当然の行為だろう。決して「不毛」には当たらない。

 産経社説はこうも書く。

 「野党は報告書について『〈100年安心〉は嘘だったのか』と揚げ足取りに終始している。だが公的年金は元来、老後資金の全てを賄う設計とはなっていない。この大原則は民主党政権時も同様で、知らないはずはない」
「老後に必要な資金額を紹介し、自助努力を促すことは本来、当然のことである」

 老後資金の全てを賄えないことは誰もが理解している。しかし「自助努力を促す」という書き方にはうなずけない。

 今回の産経社説の書きぶりは、安倍政権の代弁者のようで情けない。たとえ安倍政権であっても、「おかしい」と批判するのが、産経社説のいいところだった。読者はそんな醍醐味を味わいたくて産経社説を読むのだ。(写真=時事通信フォト)