【総裁選 政策を競う】:憲法改正 求められる具体化
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【総裁選 政策を競う】:憲法改正 求められる具体化
安倍晋三前首相は自民党総裁として、憲法改正に向けて自衛隊明記や緊急事態条項新設など党の改憲4項目を策定した。後を継いだ菅義偉首相は、改憲の是非を問う国民投票の利便性を公職選挙法に合わせる国民投票法改正を成し遂げた。次の総裁が改憲に向け、動き始めた党の流れを引き継ぐのかどうかも今回の総裁選の焦点となる。

現行憲法は終戦直後、連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官のもと、米国主導で制定された。自民党は昭和30年、最高法規に国民の意思を反映させようと改憲を党是に結党したはずだが、目標はいまだに達成されていない。
今回、改憲への思いを前面に出すのが岸田文雄前政調会長だ。今月8日の産経新聞のインタビューで、任期中に実現を目指す考えを明言。17日の記者会見でも、4項目について「どれも現代的な意味で重要な課題だ」と強調した上で、「少なくとも任期中にめどはつけたい」と語った。
岸田氏側には、総裁選で決選投票となる事態などを想定し、最大勢力の細田派(清和政策研究会、96人)の支持を得たいという思惑がある。改憲への言及は細田派出身の安倍氏への秋波との見方がある。
ただ、岸田陣営の幹部は政調会長として4項目の取りまとめに奔走した経緯から発言は本音だと強調。「岸田氏は改憲に理解を求めるための地方行脚にも精力的だった」と語る。
安倍氏の支援を受ける高市早苗前総務相の主張にも迷いがない。自他ともに認める改憲派であり、総裁選では4項目の実現に賛意を示した。17日の会見では、深刻な感染症の蔓延(まんえん)も視野に入れた緊急事態条項の新設を重視する考えを表明。憲法にある「公共の福祉」についても「概念を明確化しなければ必要な法律が作れない」と問題提起した。
河野太郎ワクチン担当相も4項目の改憲を否定しないが、幅広い理解を得ることが重要だと指摘する。20日の討論会では「野党側からもいろいろな提案があるだろうから、それを国会でしっかりと議論して、だいたい合意に至るよねというところから、順番に国民投票にかけていくということになるのだろう」と語った。
また、同性婚に賛成する立場から「婚姻は両性の合意のみに基づく」としている憲法24条に言及。16日の報道各社のインタビューで「憲法上の問題をどうするのか(という議論が)、当然あるだろう」と語った。
野田聖子幹事長代行は、法は時代に合わせて常に改正する必要があるとの立場だ。また、今の憲法は原案を外国人が作成した経緯もあり、「翻訳調」への違和感を指摘する声もある。野田氏は17日の会見で「今の日本で使われていない日本語もたくさんある。国民に分かりやすい憲法を示すことが肝要だ」と述べ、文体を変える必要性に触れた。
4氏は表向きにはいずれも改憲を否定していない。ただ、憲法制定から70年以上がたつ今、新総裁には党是の実現に向けて意欲を具体化させる覚悟が求められている。(内藤慎二)
元稿:産経新聞社 主要ニュース 政治 【政局・自民党・総裁選挙】 2021年09月24日 23:28:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。