【社説・11.26】:COP29閉幕/途上国との亀裂を埋めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.26】:COP29閉幕/途上国との亀裂を埋めよ
アゼルバイジャンで開催されていた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が閉幕した。発展途上国の地球温暖化対策のため先進国が支援する資金目標を巡って紛糾し、会期を2日間延長して、2035年までに官民合わせて少なくとも年3千億ドル(約46兆4千億円)を支援する目標で合意した。先進国と途上国が対立する中、かろうじて合意を成立させた点は評価したい。
ただ、新興国や途上国の一部には「目標が低すぎる」などの反発が残ったままだ。国連のグテレス事務総長も「より野心的な成果を期待していた」と不満を表明した。世界で温暖化防止の取り組みが着実に進むよう、先進国は途上国との協議を継続するなど、両者間の亀裂を埋める努力を重ねなければならない。
先進国は2009年、20年までに年1千億ドルを途上国側に支援する目標に合意し、2年遅れて22年に達成した。今回の会議では、これに続く目標の決定が焦点になっていた。
先進国は年2500億ドルの支援額を提示し、合意に至らないまま閉幕日を迎えた。最終的に合意した額は現行目標の3倍で、世界全体では年1兆3千億ドルに拡大させることも求める内容になった。無償供与などの手段を活用しながら資金を拡大する枠組みも設けるとした。
それでも、途上国側が求めた年数兆ドルという額との隔たりは大きい。支援の内容が、債務増加につながる貸し付けや投資を含んでいた点も反発を招いた。各途上国は豪雨や海面上昇などの異常気象で既に大きな被害を受けており、多額の復旧資金を必要としている。途上国側からみれば失望感の残る合意だったと、先進国側は自覚する必要がある。
会議では、中国や産油国など経済力のある国に対しても資金拠出を促す点で合意した。先進各国は支援拡大に向けて、中国などとの交渉にも粘り強く取り組んでもらいたい。
今後の懸念材料の一つは、米国の大統領に就任するトランプ氏の動向だ。産業革命前からの気温上昇を1・5度に収めるという目標を掲げる「パリ協定」からの離脱を公約に掲げている。途上国支援にも後ろ向きになれば、影響は極めて大きい。各国は国際協調の枠組みから外れないよう米国を説得すべきだ。
各国は来年2月までに、35年の温室効果ガス排出削減目標を国連に提出することになっている。日本政府は、世界をリードする踏み込んだ数値を表明できるかが問われる。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月26日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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