路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

2025-01-31 02:01:50 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.31》:障害者の逸失利益 未来見据え格差正す判決 

 「障害者は健常者と同じようには働けない」との固定観念を取り払う画期的な司法判断だ。

大阪高裁判決後、記者会見に臨む、亡くなった井出安優香さんの父努さん(中央)=大阪市北区で2025年1月20日、井手千夏撮影

 聴覚障害があり、2018年に交通事故で亡くなった井出安優香(あゆか)さん(当時11歳)の「逸失利益」について、健常者と同額とする判決を大阪高裁が出した。

 逸失利益は、将来得られたはずの収入のことで、損害賠償額を決める際の重要な要素となる。未成年者は全労働者の平均賃金から算定される。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/31/20250131ddm005070108000p/9.webp?1" type="image/webp" />1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影</picture>
1審判決後、記者会見で井出安優香さんの遺影をなでる母さつ美さん=大阪市北区で2023年2月27日午後2時57分、梅田麻衣子撮影

 しかし、障害がある場合は、労働能力に制約があるとして減額する判断が示されてきた。1審判決も平均賃金の85%とするのが妥当だと認定していた。

 高裁は、井出さんはコミュニケーション能力が高く、将来働く際の支障は少ないと認めた。その上で重視したのが、近年のデジタル技術の進歩と法整備の進展だ。

 人工知能(AI)の活用で補聴器の性能は向上した。音声を文字に変換するアプリが普及し、意思疎通の手段も多様になった。

 障害者差別解消法では、障害者が困る状況を改善するための「合理的配慮」が、行政や民間事業者に義務づけられている。障害者雇用促進法は、働きやすい環境づくりを事業者に求める。

 必要な措置が講じられた職場で、デジタル技術を活用して周囲と意思疎通し、仕事に励む聴覚障害者は少なくない。

 井出さんが就職する頃には、こうした状況になっていることが、事故当時から予想できたと高裁は指摘した。

 社会の変化や未来の可能性を見据え、障害の有無による格差を正した判決と言える。

 23年の厚生労働省の調査では、雇用されている障害者は約110万人で、5年間で25万人あまり増加した。

 一方で国の相談窓口には「事業者から差別的な対応をされた」「配慮を求めたが対応してもらえない」などの声が寄せられている。

 障害者が生活する上で困難があるのは、社会の側に障壁が存在するからだ。高裁の判断は、そうした考え方に基づくものである。

 障害の有無に関わらず権利が保障される社会をつくるため、「壁」を取り除く努力を不断に進めていかなければならない。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月31日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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