【社説②】:雇用保険制度 非正規の安全網強化が必要だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:雇用保険制度 非正規の安全網強化が必要だ
パート労働は柔軟な働き方ができる反面、失業や休業時の保障がなく、生活が不安定になりやすい。非正規労働者が増える中、雇用の安全網を強化していくことが大切だ。
厚生労働省が雇用保険制度の見直し案をまとめた。今国会への関連法案の提出を目指している。
雇用保険の加入対象は、労働時間が「週20時間以上」の人で、2022年度末で約4400万人が加入している。この加入要件を「週10時間以上」に引き下げることが見直し案の柱だ。
短時間労働の人にも安全網を広げ、失業などいざというときの生活を支えるという狙いがある。
改正が実現すれば、新たに488万人が加入することになる。
雇用保険に加入している人は、失業したときや育児休業を取得したときに、直前の賃金に応じて給付金を受け取れる。キャリアアップのために資格を取得する場合の教育訓練給付もある。
雇用保険財政は、企業と労働者が賃金に応じて支払う保険料と、国庫負担で成り立っている。保険料率は現在、労働者が賃金の0・6%、企業が0・95%だ。
雇用保険に加入することになれば、パートの人や企業には新たな保険料負担が生じるが、失業時の保障など加入のメリットは大きい。政府はその点を丁寧に説明し、理解を広げていく必要がある。
コロナ禍では、従業員を解雇せず、休業にとどめた企業に雇用調整助成金が支給された。こうした雇用の維持も、雇用保険制度が担っている重要な役割だ。
また、見直し案には少子化対策として、仕事と育児の両立を支援する施策も盛り込まれた。
現在、育休を取得した場合に雇用保険から支給される給付は、休業前賃金の67%となっている。
見直し案では、出産直後に夫婦がともに育休を取得した場合には給付率を引き上げ、手取り収入が減らないようにする。妻が専業主婦の場合も、夫が育休をとれば収入を維持できるようにする。
男性の育児休業取得を後押しする狙いは理解できる。
このほか、子育てをしながら時短勤務で働く人を対象にした、新たな給付制度も設ける。時短勤務で賃金が減る分を 補填 するため、子供が2歳になるまで、賃金の1割を補助するという。
ドイツや北欧では、子育て中の夫婦が柔軟に働ける仕組みを拡充したことが、出生率向上につながったとされる。効果的な施策を日本でも取り入れていきたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます