【社説①】:中東の紛争拡大 米国とイランは衝突回避せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中東の紛争拡大 米国とイランは衝突回避せよ
米軍が、イラクとシリア領内で、親イラン勢力が米兵への攻撃に使ったとする施設を空爆した。中東の緊張がこれ以上激化しないよう、関係国には自制が求められる。
米国は今回の攻撃について、ヨルダン内の米軍拠点が1月下旬、親イラン武装勢力による無人機攻撃を受けて、米兵3人が死亡したことへの報復だとしている。
米軍は、イラクとシリア領内にある親イラン勢力の七つの拠点を標的とし、ミサイル、無人機の保管庫や、指揮統制の司令所などを精密弾で空爆した。イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」の拠点も攻撃対象にしたという。
パレスチナ自治区ガザで、イスラエルとイスラム主義組織ハマスによる戦闘が昨年10月に始まって以来、ハマスを支援する親イラン勢力は、中東の米軍拠点への攻撃を繰り返している。
イラク軍は、米国の今回の攻撃を「主権侵害」だと非難した。ガザの紛争が中東各地に飛び火した危機的な状況だと言える。
バイデン米大統領は、米軍の安全を確保するためにこうした攻撃を継続する考えを表明する一方、「米国は中東や世界のいかなる場所でも紛争は求めない」として、抑制的な立場を強調した。
米国内では、米兵の死者が出たことに対し、イラン本土への攻撃も辞すべきでないとする強硬論が高まっている。バイデン氏は、再選を目指す11月の大統領選を前に断固とした姿勢を米国の国民に示す必要もあったのだろう。
ただ、「革命防衛隊」や親イラン勢力の軍事能力が、今回の攻撃で致命的な打撃を受けたわけではない。米国との間で、反撃の応酬が続く恐れがある。
当面の焦点はイランの出方だ。これまでは「米国との直接衝突を望まない」と表明している。そうであるなら、イランは親イラン勢力への武器供与や要員派遣を中止し、米国の拠点に対する攻撃をやめるよう働きかけるべきだ。
何よりも重要なのは、中東の混乱の発端であるイスラエルとハマスの戦闘を終結させることだ。停戦が実現すれば、イランや親イラン勢力が、イスラエルと米国を攻撃する大義名分がなくなり、孤立する事態も考えられる。
停戦交渉では、期限付きの戦闘停止を求めるイスラエルと、恒久的停戦を求めるハマスの溝が埋まっていない。米国やカタールなどの仲介国は、双方に歩み寄りを促し、一刻も早い停戦合意を導いてもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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