【HUNTER・01.20】:新・旧町長の仲間割れに町民嫌気|鹿児島県南大隅町長選の構図
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・01.20】:新・旧町長の仲間割れに町民嫌気|鹿児島県南大隅町長選の構図
本土最南端の町「鹿児島県南大隅町」に政争の季節が訪れている。原因は今年4月8日告示、13日投開票の日程で行われる南大隅町長選挙。核ゴミ施設の誘致に絡んで不適切な接待を受けていたことで有名になった元町長が、かつて町の幹部として自分の盾となっていた現町長に対抗馬を擁立したのだ。そこに、長く国会議員の政策秘書を務めてきた気鋭の新人が戦いを挑む構図となっており、町内はすでに3分割の状況だという。南大隅町はハンターにとっても特別な意味を持つ自治体で、旧サイトにおいて繰り返し元町長の悪行を報じてきたという経緯がある。数年前まで蜜月の関係だった元町長と現職町長との間に何があったのか――。前哨戦はどういう様子なのか――。現地を取材した。
■核ゴミ委任状、デリヘル、多額借金の元町長が対抗馬擁立
町長選に立候補を表明しているのは、現在のところ3人。現職で元町総務課長の石畑博氏(68)、新人で元衆議院議員政策秘書の田中慧(けい)氏(42)、同じく新顔で元町企画観光課長の愛甲真一氏(57)が、それぞれ後援会事務所を構え、熾烈な陣取り合戦を展開中だ。告示近くに別の役場職員が立候補するとの情報もあるが、正式表明には至っていない。
各陣営の活動は過熱する一方だというが、問題は部下として仕えた現職・石畑氏に挑戦状を突き付けた愛甲氏の後ろ盾、森田俊彦元町長である。
森田氏は、ハンターの旧サイトで核ゴミ処分場の誘致を巡る様々な疑惑を報じた人物だ。処分場誘致を請け合う中での飲食・デリヘル接待、核施設誘致の委任状、核施設誘致派からの1,000万円の選挙資金提供と、疑惑のオンパレードだった。取材には息をするように平然と嘘をつき、ハンターの記事はもとより新聞、週刊誌の報道まで作り話だと主張して開き直った。
しかし町民は、疑惑の町長を2度の選挙で支持。結局、森田氏は引退する2021年まで3期を務め、同年の選挙で石畑氏が後継町長となる。
核ゴミ疑惑が浮上してからの8年あまり、町の総務課長として森田氏の盾になって支えていたのが石畑氏である。ハンターの記者が森田氏の不正を追及していた頃、毎回町長室で同席していたのが石畑氏だった。前回の町長選では、森田氏も形だけは石畑支持だったはずだ。
森田町政を引き継いだ石畑氏だけに2期目も盤石とみられていたが、昨年の夏頃から森田氏が対立候補を擁立するという噂が流れ始め、秋には愛甲氏が下の画像の名刺を配り始めていた。名前の下には「あいこう真一後援会事務所」。選挙に向けた政治活動であることは一目瞭然である。
元町長・森田氏の代理ともとれる愛甲氏と、森田氏の裏も表も知り尽くした現職・石畑氏――。役場を仕切ってきた人間たちの仲間割れが起きた時期は、森田氏が引退し、石畑氏が後継となった前回(2021年)の町長選直前に遡る。
選挙前、石畑氏は親しい人間に森田氏の疑惑に関するネタを握っていることを匂わせた上で、自身の出馬を明言したという。確かに、総務課長時代、森田氏を庇い続けて続けていた石畑氏なら森田氏の疑惑の核心を知っている可能性が高い。ある町関係者はこう話す。
「実際にあった森田さんの疑惑が時効にでもなったんだろう。それで石畑町長に対抗馬を立てて、院政を敷こうと考えたんじゃないか。森田さんは昔から借金まみれの人だった。何年か前は、核ゴミ処分場の委任状と引きかえになる形で、誘致派の人たちから多額の借り入れを行っていたことが朝日新聞にすっぱ抜かれたほどだ。森田さんは会見で『借金は返した』と言っていたが、本当にすべての借金を返したのかどうかは私たちには分からない。なんせ平気で噓をつく人だから……。森田さんが担いでいる愛甲さんは企画観光課長をやっていたが、町民から高い評価を受けるような業績を上げたという話など聞いたことがない。役場関係者の権力争いで町が良くなるとは思えない」
森田氏の影がちらつく愛甲氏の動きに批判的な声が上がる一方、石畑氏にも厳しい視線が注がれている。同町在住のある会社経営者は、次のように現職を突き放す。
「4年間、石畑さんは何をやって来たのか?大きな失政はないが、人口は減り続けているし、訪問客が大幅に増えたという話も聞かない。南大隅町がマスコミに取り上げられることも少ない。NHKの大河ドラマ「西郷どん」のオープニングに雄川の滝が出てきて有名になったが、森田さんや石畑さんの功績ではない。町は衰退するばかり。歴代の町長には重い責任があるはずだ」
■減り続ける人口に新・旧町長の責任問う声
確かに、地方自治体の深刻な過疎化を象徴するように、大隅町の人口は減り続けてきた。2000年まで1万人を超えていた町内の人口は今年1月1日現在で5,912人(*同町のホームページより)。減り幅は、全国でも上から数えるほど大きい。政治と行政の無策が招いた結果が、今日の町の衰退なのだ。
普通なら新・旧の町長対決で一騎打ちになる選挙に割って入ったことで、歪んだ町政に批判的な町民の期待を集める存在となりつつあるのが田中氏。今回が二度目の挑戦となるが、政策秘書として築いてきた中央とのパイプや斬新な政策を提示することで支持を集める格好となっている。同町在住の主婦に、田中氏を支持する理由を聞いた。
「役場の人たちが町長の座を争っているだけで、町民不在を感じます。森田さんも石畑さんも、町を発展させることはできなかった。今度(選挙に)出る愛甲さんも、同じ役場の人間ですよね。つまり、路線は同じ。森田さんも引退したんだから、町の政治や行政に口出しするのはよくないです。人口減少は深刻です。このままだと、この町から子どもたちの歓声が聞こえなくなります。新しい風が吹くことを祈っています」
出馬が噂される4人目の人物も役場の職員。田中氏が、役場の関係票を奪い合う選挙構図を嫌う町民の受け皿になる可能性がある。
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【話題・本土最南端の町「鹿児島県南大隅町」に政争の季節が訪れている】 2025年01月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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