【社説・11.23】:核ごみ報告書 概要調査には進めない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.23】:核ごみ報告書 概要調査には進めない
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査の報告書を後志管内寿都町と神恵内村の両首長と鈴木直道知事に提出した。
4年余りにわたった文献調査は終結し、次の段階の概要調査への移行の是非が焦点となる。
概要調査候補区域は報告書案と同様、寿都町全域と、神恵内村南端の一部とした。
寿都町を通る活断層の黒松内低地断層帯や火山噴出物「磯谷溶岩」など安全上の懸念は留意事項として概要調査に持ち越した。少しでもリスクがあれば候補区域から除外するのが文献調査のあり方ではなかったか。
科学的な見地から疑問がぬぐえない。このまま概要調査に進むことは認められない。
磯谷溶岩について、地質学の専門家が「第四紀火山」の可能性が高いと先月の日本火山学会で発表した。核のごみは無害化するまで10万年かかる。処分場を破壊する火山は最大のリスクだ。だが、この新たな知見は報告書に盛り込まれていない。
地層処分を定める法律は、地質年代で約258万年前から現代までの「第四紀」に活動した火山の半径15キロ圏を最終処分場としないよう定めている。
磯谷溶岩が該当すれば、寿都町の大部分が不適地となる。報告書案を審議した国の作業部会委員の火山専門家も第四紀火山だとの見解を示している。
NUMOは、学術論文になっていない知見は文献調査の対象とはならず、概要調査以降に確認するという。
安全の根幹に関わる知見や専門家の指摘は、概要調査に進むかどうかの判断材料として重要だ。それを報告書に盛り込まなければ、信用は得られない。
概要調査は首長と知事の同意が必要となる。両町村は説明会や勉強会を開き、住民投票などで判断するという。
鈴木知事は反対する意向を繰り返し表明してきた。きのうの記者会見でも「現時点で反対の考えを述べる」と答えた。
影響が広範に及ぶ最終処分場は町村レベルの問題ではない。知事の判断は重い。
巨額の交付金と地域振興策で市町村を調査に誘導するやり方が、地域や自治体間にあつれきを生んでいる。国は選定方法を抜本的に改めるべきだ。
岸田文雄政権は原発推進にかじを切り、石破茂政権も引き継いだ。最終処分場にめどがつかないまま、原発を動かし放射性廃棄物を増やし続けるのは無責任だと言わざるを得ない。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月23日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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