路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【卓上四季】:大晦日の決意

2021-12-31 08:30:45 | 【学術・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【卓上四季】:大晦日の決意

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:大晦日の決意

 田辺聖子さんが作家となる決意を日記に記したのは75年前の大みそかの晩だった。「来年も、勉強して小説を書こう。私はもう、この道しか、進むべき道はない」。兵庫県伊丹市の自宅の押し入れから見つかった1冊のノートにあった(「田辺聖子十八歳の日の記録」文芸春秋)

 ▼日記は数えの18歳となったばかりの1945年4月から47年3月までの記録である。学徒動員、空襲、敗戦、父親の死という激動の中、ものを書きたいという創作意欲の強さは一貫している

 ▼勝利を信じた軍国少女は特攻隊を賛美する一方「文学も音楽も芸術もすべては戦争の渦巻の中へまきこまれてしまう」と疑念を吐露していた

 ▼敗戦の日「何事ぞ!」と墨文字で憤慨を表したのも「若者の純情を弄(もてあそ)んで、自分自身は安逸と懶惰(らんだ)に浸りながら、有為の若者をあまた散らせてしまった」国への不信と若人への哀惜の強さゆえか。その痛切は作家への決意と無縁ではなかったろう

 ▼人間の生態は恋するときと自己弁明に表れる。自己弁明とは「こんな私ですが、どうかして生きたいんです」という訴えだと田辺さん。辛苦の時こそ冷静に自分を見つめ、生きる道を探す好機なのかもしれない

 ▼空襲で焼けた生家「田辺写真館」は現在の大阪市福島区の一画にあった。「気張らんとまあぼちぼち行きまひょか」。師走の浪速のにぎわいの中に、そんな声が聞こえた気がした。 2021・12・31

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2021年12月31日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:老老介護 深まる孤立/閉ざされた心に添う支援を

2021-12-31 08:30:40 | 【超高齢化・過疎・孤立・認知症・人口減少・消滅可能性自治体・2040年問題】

【社説】:老老介護 深まる孤立/閉ざされた心に添う支援を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:老老介護 深まる孤立/閉ざされた心に添う支援を

 お年寄りがお年寄りの生活をケアする「老老介護」の行き詰まりに端を発した、痛ましい事件が相次いだ1年だった。介護を社会全体で支えることを目的とした介護保険制度の導入から20年以上が経過する中で、苦しみから抜け出せない高齢者世帯が増えている。公的サポートの在り方を見詰め直す必要がある。

 1月に仙台市宮城野区の市営住宅で同居する夫を刺殺したとして妻が、3月には東京都北区の団地で寝たきりだった姉を窒息死させたとして妹がそれぞれ殺人の疑いで逮捕された。関係する4人はいずれも80代。亡くなった2人は認知機能の低下や寝たきりの状態にあり、ともに介護疲れが引き金となった。

 今月上旬にあった仙台地裁、東京地裁の判決では、命を奪った罪の重さを指摘した上で、「周囲に協力を求めなかったことは取り立てて非難できない」「苦しく絶望的な状況下での犯行で心境については同情できる」とし、いずれも執行猶予付きの判決が言い渡された。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2019年、65歳以上の高齢者のみの世帯は全体の28・7%。同居者がいる75歳以上の介護が必要な人のうち、介護する人も75歳以上のケースは33・1%に上り、01年(18・7%)に比べて倍近くに増えた。夫婦ともに要介護者という世帯も珍しくなくなっている。

 2000年4月にスタートした介護保険制度では、家族が無償で担うものとされてきた「介護の社会化」が大きな目的だった。ただ現行の制度は老老介護が拡大している現実に即しているとは言い難い。家事援助などのサービスは原則、同居の家族などがいる場合は利用できない。

 一方、サービスを受けられる「要支援」や「介護」の認定を受けていても、当事者が「自分で何とかする」「他人に迷惑は掛けられない」と支援を求めることを拒み、活用が十分にされていない実態も浮かび上がっている。

 仙台、東京のケースとも一人で重い介護負担と将来への不安を抱え込んだ果てに、悲劇は起きた。それぞれケアマネジャーが訪問介護の利用や特別養護老人ホームへの入所を勧めたが、断られた経過もあったとされた。

 サービス提供や第三者の介入だけでは解決できない複雑な事情に対し、介護者の視点に立って閉ざされた心をどうケアしていくか。現場で今、何ができるのか。事件を踏まえ、難しい答えを探すきっかけにしなければならない。

 高齢化の進行に加え、長引く新型コロナウイルスの影響で外出自粛や対面による関わりの機会が減り、孤立する人々の増加も懸念される。家族の介護や世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」の問題を含め、多様な支えの手を差し伸べられる社会の仕組みづくりを模索したい。

 元稿:河北新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月31日  10:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【河北春秋】:作家の安藤鶴夫に半世紀以上も前の年末年始…

2021-12-31 08:30:35 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【河北春秋】:作家の安藤鶴夫に半世紀以上も前の年末年始…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【河北春秋】:作家の安藤鶴夫に半世紀以上も前の年末年始…

 作家の安藤鶴夫に半世紀以上も前の年末年始の情景を描いた『東京の正月』と題する短いエッセーがある。初詣について、亡くなって久しいこの作家は「願い事なんかは一切しないことにしている」と書いている

 ▼どの神社や寺に行っても願い事はしない。「いつでも、ただ、ありがとうございます、とお礼を申すことにしている」そうだ。日々の苦労や不本意な出来事は多くても、まあ何とか毎日を過ごすことができた。その感謝なのだろう

 ▼すがすがしさを感じるが、多くの人は切ない願いを抱えて寺社に行く。先日、密を避けて師走の神社に出掛けると、境内の絵馬には多彩な願い事。ささやかな願いに人間らしい真情が見える。当欄もいろいろと祈って初詣を終えた

 ▼ことしも新型コロナウイルス感染症に翻弄(ほんろう)されたが、希望を感じる報道も今月あった。新たな変異株は感染力は強い一方、重症化リスクは小さいという外国の研究が現れた。軽症者のための飲み薬も今週から全国で使えるようになった

 ▼除夜の鐘、初詣の人波、紅白の繭玉、初芝居。冒頭のエッセーに描かれた風景は、のどかで懐かしい。コロナ禍に苦しむ日々が終わりを迎え、以前の平穏さを取り戻したい。1年後には「ありがとうございます」と言える初詣になりますよう。(2021・12・31)

 元稿:河北新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【河北春秋】  2021年12月31日  10:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【時論】:理念にかなう施設活用を/東京五輪・パラ回顧

2021-12-31 08:30:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【時論】:理念にかなう施設活用を/東京五輪・パラ回顧

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【時論】:理念にかなう施設活用を/東京五輪・パラ回顧 

 新型コロナウイルスの感染が世界中で広がり、1年の延期を経て開催された東京五輪・パラリンピックはわたしたちに何を残したのか。引き継ぐべき遺産とともに考えるときを迎えた。

 2021年の夏を迎えても、国内の感染拡大は国民の生活を脅かし、各種世論調査では「大会をさらに延期すべきだ」「中止すべきだ」との回答が過半数だった。

 一方、国と東京都、大会組織委員会は共通の思いで結束していた。国立競技場をはじめ新設した恒久的なインフラの整備費を含め、総額1兆数千億円の巨大プロジェクトには多くの夢が詰まっているから、開催を諦めることはできない-と。

 「無観客」を決断し、国際オリンピック委員会(IOC)と歩調を合わせて、実現に向け加速した。大会後の共同通信の電話世論調査では約6割が「開催してよかった」と回答した。判断は妥当だったと言えるだろう。

 大会では選手と役員、メディアに対する徹底的な検査を続け、外部との接触を遮断するため、多重な感染防止策を整えた。

 作業は多くの人員を確保して進め、陽性者を次々に特定しながらも、そこから感染が広がることはなかった。大会後、参加各国からは感染防止作業の徹底ぶりを評価する声が相次いだ。

 パラリンピックはテレビ中継を見やすい自国開催で、日本選手の活躍もあり、予想を上回る大きな注目を集めた。

 障害のある人にとって使いやすい道路、駅、各種施設の整備の必要性について、国民の理解がさらに高まるだろうと期待できるようになった。

 パラ選手は多くの企業がここ数年、積極的に雇用するようになった。今後はスポーツをしない障害者の雇用も拡大することが望まれる。

 競泳、バレーボール、体操の五輪会場なども新設され、既存の競技場も大会を前に近代的な施設に改修された。

 今後、新設施設は民間業者に運営を任せ、民間業者はさまざまなイベントを企画・実施する利用者から施設の利用料を徴収するビジネスが展開されるという。

 施設の維持費以上にそうした事業による収入を確保することで、赤字が累積していく「負の遺産」とならないようにする考えだ。

 しかし、そのようなビジネスが順調に回転し、黒字となる試算はなかなか得られない。国も東京都も、全て民間業者任せではいけない。

 競技施設まで自転車や徒歩で行ける地域住民に配慮する、あるいはオリパラの舞台となった競技場に対する人々の憧れの気持ちを大切にすることこそ行政の責務だろう。

 施設の管理・運営が有効なものかどうかの判定は、イベント開催の収支報告よりも、例えば年間の利用者数を重視する考えを打ち出せないか。

 ライブコンサートなどによる収入が施設維持に必要なことは分かる。しかし、数多くの人に利用されている実績があれば、一定の税金が投入されることに、利用者以外の人から大きな批判が出るとは考えにくい。民間運営による黒字の見込みが立たないなら、なおさらだ。

 オリパラを地域が遺産として引き継ぐ上で、多くの人がスポーツの場として活発に利用し、健康の維持と向上に役立てることは大会理念にかなう。ここは大切にしたい。

 元稿:東奥日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【時論】  2021年12月31日  08:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【天地人】:2021年12月31日

2021-12-31 08:30:27 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【天地人】:2021年12月31日

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天地人】:2021年12月31日 

 聖夜の定番曲『ホワイト・クリスマス』が巷(ちまた)に流れていたと思ったら、もう大みそかである。この名曲は米国のジャズシンガーとして知られるビング・クロスビーが1941年にラジオ番組で歌ったのが始まり。その後シングル盤だけで5千万枚の大ヒットを記録しギネス入りを果たした。

 そして51年、テナーサックスの巨人スタン・ゲッツが歴史的名盤『アット・ストーリーヴィル』をライブ収録し、神がかりの演奏で世界をアッと言わせる。さらにはビル・エバンスが『ワルツ・フォー・デビー』でジャズピアノの在り方を変えたのが61年。つまりジャズ黄金期には10年ごとに不朽の名作が登場したことになる。

 クロスビー、ゲッツ、エバンスの傑作誕生からそれぞれ80年、70年、60年の節目に当たる今年。ジャズ界から大作が生まれることを密(ひそ)かに期待していたのだが、どうやら空振りに終わりそうだ。

 ジャズファンとプレーヤーが共に史上最高のサックス奏者に挙げるゲッツ。アルコールや薬物中毒と闘いながら即興演奏に命を懸ける人生だったが、常々こう語っていたという。「僕は仕事をしているだけなんだ。ただしいい仕事をね」。どこまでもクールで格好いい。

 明くる年、当方は記者生活40年目を迎える。老兵ながらゲッツにあやかってクールに、それでいて熱く、いい仕事を淡々とこなしていきたいものだ。

 元稿:東奥日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天地人】  2021年12月31日  08:43:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説】:国政この1年 対話の政治へ歩みだす

2021-12-31 08:30:24 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【社説】:国政この1年 対話の政治へ歩みだす

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:国政この1年 対話の政治へ歩みだす

 新型コロナウイルスが今年も猛威を振るい、昨年に続いて首相が交代するなど国内政治は波乱の1年となった。本県出身者として初の首相となった菅義偉氏が約1年で退任、後任には岸田文雄氏が就任した。

 菅氏の退任は、感染拡大のたびに緊急事態宣言発令などを繰り返し「後手」批判を浴びたことが大きい。都内の感染者が急増する中、菅前政権は東京五輪開催へと突き進んだ。「第5波」では医療体制が逼迫(ひっぱく)し、自宅で亡くなる人が続出した。

 世論調査では内閣支持率が31・8%へと急落。秋の衆院選が迫る中、求心力を失って退任へと追い込まれた形だ。

 一方で、ワクチンについては「1日100万回」の号令を掛けた結果、接種が進んだ。2回目を終えた人の割合は先月時点で7割を超え、先進7カ国(G7)中、2位となった。その点は高く評価すべきだ。

 ただし、その政治の在り方は「対話」と「説明責任」を軽視したものだったと言わざるを得ない。憲法に基づく臨時国会召集を野党が要求した際は長期間「放置」。日本学術会議の任命拒否問題でも、理由を明確に語ることは最後までなかった。

 一国の指導者であれば野党をはじめ、さまざまな相手と真摯(しんし)に向き合い、自らの言葉で積極的に議論を深めることが必要だ。それができない限り、政治への信頼回復は遠のくばかりだ。

 衆院選で与党は、国会運営を主導できる絶対安定多数を上回る293議席を獲得。岸田政権に問われるのは、この安定した基盤をどう政治に生かすかだ。

 自民党総裁選への立候補表明時、岸田氏は菅前政権を念頭に「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」と強調。その後、「聞く力」を掲げて対話を重視する姿勢を見せた。

 18歳以下への10万円相当給付では自治体の批判などを受け、年内の現金一括給付を容認。国土交通省の建設受注統計書き換え問題では、第三者委員会の設置を早々と表明した。

 こうした対応は「聞く力」の結果だろう。ただ、この力を使い分け、相手の主張を巧みにかわしているようにも見える。

 森友学園問題を巡る訴訟で被告の国は、原告の損害賠償請求を全面的に受け入れる異例の「認諾」を行った。これにより国との訴訟は終結し、財務省決裁文書改ざんの真相解明という原告の目的は封じ込められた。

 いまだ疑念が拭えない桜を見る会問題では、岸田首相は「大いに反省すべき点がある」とするにとどまる。国会議員の文書通信交通滞在費問題でも、主導して解決する姿勢は見えない。

 新たな変異株・オミクロン株への対応をはじめ、福島第1原発の処理水放出や米軍の辺野古移設計画など国政の課題は山積する。岸田政権はその土地の人々をはじめとする国民の声に耳を澄まし、「対話」を軸とする政治の再生に力を注ぐべきだ。

 元稿:秋田魁新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月31日  09:29:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【北斗星】:一足早く秋田市内の神社にお参りした。

2021-12-31 08:30:21 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【北斗星】:一足早く秋田市内の神社にお参りした。

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【北斗星】:一足早く秋田市内の神社にお参りした。

 人出が集中する初詣に代わる「幸先詣(さいさきもうで)」として、この1年に感謝し、新年の家内安全や無病息災を願った。幸先詣は分散参拝の一環として、昨年末から一部神社が勧めるようになった

 ▼コロナ禍で迎える2度目の年末。今年、「新型コロナウイルス」が登場した本紙記事は1万5千本を超える。昨年より1割ほど減ったものの、単純計算で1日平均40本以上にもなる

 ▼昨年から今年に延期になった「東京五輪」も大きな話題になったが、それでも約4千本にとどまる。本県出身で初の首相になった「菅義偉」や、後任の「岸田文雄」を含む記事でも3千本に届かない。コロナの猛威を改めて感じさせる

 ▼漢字4文字で今年を振り返る「創作四字熟語」(住友生命の募集)の最優秀作に「七菌八起(ななころなやおき)」(七転八起)が選ばれた。審査した歌人の俵万智さんは「(流行の)第6波が来ても7波が来ても八起でいきましょう! そんなエールと受け取った」と評した。もちろん感染の拡大は避けたいが共感できる

 ▼県内の感染状況は現在、落ち着いている。年末年始に空港や鉄道を利用する人は昨年より増え、久しぶりの帰省という人もいるだろう

 ▼新年は寅(とら)年。ことわざに「虎は千里行って千里帰る」とある。そんな勇ましさもいいが、まずは穏やかな1年であってほしい。千里の道も一歩から。さあ新年の一歩をどう踏み出そうか。行く年を振り返りつつ考えたい。

 元稿:秋田魁新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【北斗星】  2021年12月31日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:2021年県内回顧 安心と信頼の再構築を

2021-12-31 08:30:18 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【社説】:2021年県内回顧 安心と信頼の再構築を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:2021年県内回顧 安心と信頼の再構築を

 新型コロナウイルスの感染が首都圏を中心に急拡大し厳戒ムードで明けた2021年も今日が大みそか。ワクチン接種や治療薬の開発などで薄明かりが差し始めたものの、感染力が極めて強いとされるオミクロン株の出現により再び不安が高まる中で終わろうとしている。

 県民生活も昨年以上に新型コロナに翻弄(ほんろう)され続けた一年だった。4月から65歳以上の高齢者を皮切りにワクチンの住民接種が始まったが、一部の自治体では予約の電話が集中してつながらない状況が発生。インターネットでの受け付けは高齢者にとってはハードルが高かった。

 混乱に拍車を掛けたのが政府の不手際によるワクチン供給不足だ。企業や団体などにも接種を急ぐよう求めながら、必要量をなかなか手当てできなかった。

 地方経済が受けた打撃も大きかった。デルタ株による流行第5波は医療の逼迫(ひっぱく)・崩壊が懸念されるほど深刻で、県独自の「感染拡大防止特別集中期間」(8月20日~9月15日)が設けられた。県境を越える移動制限に加えて県内の人流も抑制され、観光・飲食業を中心に客足は途絶え、農業などにも余波が及んだ。他にも生活の基盤を脅かされた人は多く、コロナ禍は暮らしから安心を奪った。

 そのような中で東京五輪・パラリンピックが開催された。県勢は五輪に5人、パラリンピックに4人が出場。選手らの奮闘ぶりは県民に活力を与えてくれた。

 県政界では1月の知事選が12年ぶりに選挙戦となり、現職の吉村美栄子知事が、自民党が推す元県議大内理加氏を23万票余の大差で破って4選を果たした。全35市町村を制する圧勝だったが、選挙戦に端を発した県議会最大会派・自民党と知事との対立は深まり、その後の副知事人事を巡って県政停滞を招いた。

 結果的に副知事不在期間は7カ月半に及んだ。直面するコロナ禍への対応や収束後の振興策などを議論すべき時に、県政の司令塔に不正常な状態が続いたことは知事側、自民党側の双方が教訓として刻むべきだろう。

 地方政治の信頼を揺るがす事態も相次いだ。県議会では野川政文元議長が08年から人件費を架空計上し、政務活動費計1248万円を不正受給していたことが判明。野川氏は議員を辞職し、不正受給額を返還する意向を示したため県議会側は告発せず、県も告訴しなかった。

 5年前に別の男性県議の不正が発覚した際に野川氏は議長を務めており再発防止を指揮する立場だった。その裏で自身も不正を行っていた。今回の県議会および県の判断は県民感覚とずれていよう。

 12月には、皆川治鶴岡市長が17年の市長選期間に受け取った現金100万円の寄付を選挙運動費用収支報告書に記載していなかったことが発覚した。その後の釈明に不自然な点があり、市議会側はさらに追及する構えを見せている。

 政治不信が叫ばれて久しい。最も身近な地方の政治が有権者の信用を失ってしまっては、国政の信頼回復など程遠いと言わざるを得ない。今後、コロナ禍を乗り越えて人口減少という大きな課題と本格的に向き合わなければならない。そのためにも政治行政への信頼を足元から再構築することが不可欠である。

 元稿:山形新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月31日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【談話室】:▼▽二宮尊徳は江戸末期の篤農家だった。

2021-12-31 08:30:15 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【談話室】:▼▽二宮尊徳は江戸末期の篤農家だった。

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【談話室】:▼▽二宮尊徳は江戸末期の篤農家だった。

 その7代目子孫で関西学院大講師の中桐万里子さんが雑誌で尊徳の「水車の例え話」に触れていた。彼が人間を捉える際に、さまざまな場面で使っていたと思えるモデルだという。

 ▼▽水車の下半分は天の力、つまり水の流れに従わなければ回らないが、上半分は流れに逆らわなければ回らない。つまり「半分従い、半分逆らう」と。当時は飢饉(ききん)が続き、人が天に逆らう力を失っていた時代だっただけに彼は特にその部分を強調して訴えたのだろうと述べる。

 ▼▽水車を製作している白鷹町の大工山口重雄さんが手掛けた大きな「湯(ゆ)車(ぐるま)」が今月、歴史ある米沢市の白布温泉に完成した。源泉のお湯を利用して地元の協議会が整備し、観光誘客の核にしようという。かやぶき屋根で知られながら2000年に焼失した老舗旅館の跡である。

 ▼▽火災やコロナ禍など現実を受け止めつつも果敢に復興を図る。水車の例えにも通じよう。きょうは大(おお)晦日(みそか)。振り返ればコロナ禍2年目の今年は、昨年よりは薄日が差した年だったか。来年こそは力強い光となり、「吉」へと攻勢に転じますように―。そう願わずにおれない。

 元稿:山形新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【談話室】  2021年12月31日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【論説】:【2021年回顧】重い越年課題

2021-12-31 08:30:12 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・処理水の海洋放出と環境汚染

【論説】:【2021年回顧】重い越年課題

『漂流する日本野羅針盤を目指し手』:【論説】:【2021年回顧】重井越年課題 

 二〇二一(令和三)年も今日で暮れる。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸十年という節目を迎えたが、復興は道半ばの思いが強い。新型コロナウイルスは前年に引き続き感染拡大の大波を社会にもたらし、多くの課題が新年に持ち越された。

 越年課題の一つは福島第一原発の廃炉作業だ。政府は四月に構内にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、沖合一キロからの海洋放出を決めた。東電は今月に入り、原子力規制委員会に必要な施設整備の実施計画を申請した。年末になって政府は風評対策を中心とした全省庁横断の行動計画を策定した。海外での風評影響調査をするほか、地域や業界ごとの賠償基準を決めるという。

 県内では漁業者だけでなくあらゆる産業の関係者や市町村議会などから新たな風評への懸念や慎重な対処を求める声が上がっている。風評が起きることを前提とした行動計画には納得できない。そもそも、しっかりとした行動計画を示し、成果を見極めた上で実施計画を申請するのが、ものごとの順番ではないか。

 こうした対応が不信感を増幅させていることを政府と東電は強く認識すべきだ。海洋放出は二〇二三年春に予定されている。新年に政府と東電がどんな動きをするのか、目を凝らす必要がある。

 新型コロナ対策では、強い感染力が疑われる新たな変異株「オミクロン株」への備えが新年の課題となるだろう。県内では「デルタ株」の広がりやクラスターの多発を受け、今夏に過去最大の第五波に見舞われた。新規感染者数は、最多となった八月十一日判明分の二百三十人をはじめ三桁台の日が続いた。政府は本県に「まん延防止等重点措置」を適用し、県民は首都圏などとの往来自粛や時短営業などの感染防止対策を強いられた。

 現在、県内は落ち着いた状況にあるが、新年も新型コロナとの闘いが続くことは間違いない。感染の大きな波が起きないよう、マスク着用や小まめな手指消毒などの基本的な感染対策の継続が欠かせない。県は万一の感染拡大に備え、病床の確保など医療体制の拡充を進めている。

 この二年で、新型コロナから多くの教訓を得た。新年は、その経験を十分に生かし、感染防止策と経済活動の両立という難しい課題に向き合わなければならない。ワクチンの三回目接種やワクチン接種証明などの活用を通して、大きく変化する社会の先行きを見据え、柔軟に対応する力が試される。(安斎 康史)

 元稿:福島民報社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【論説】  2021年12月31日  09:11:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【あぶくま抄】:休と養

2021-12-31 08:30:09 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【あぶくま抄】:休と養

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【あぶくま抄】:休と養

 コロナ禍で苦しみ、我慢を強いられた一年が暮れようとしている。息が詰まるような日々を過ごしたことで、疲れがたまりがちだ。年末年始の休みぐらいは、ごろごろと横になりたくもなる▼厚生労働省の「健康日本21(第二次)」は健康づくりに向け、食生活や運動のみならず、休養の大切さを説く。十分な睡眠をとり、ストレスと上手に付き合うことは心の健康に欠かせないと提言している。「ごろ寝も悪くない」と思いきや、「休養は、単に身体を休めるというだけではない」との指摘もある▼疲労を回復するために「休」は大切だが、心身を上向かせる「養」もなおざりにはできない。外出控えが続き、なまった体を動かす。家族と正月料理の準備にいそしむ。「食って、のんで、寝る」のもいいが、一年の締めくくりに心と体をリフレッシュすれば、少しは前向きに新年を迎えられる▼〈新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉事[よごと]〉。大伴家持が詠んだ万葉集最後の歌だ。「降る雪のように、良いこともたくさん積もれ」と解釈される。明るい未来への願いは、今を生きる人々の思いと重なる。健やかで災禍のない一年を迎えられますように。

 元稿:福島民報社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【あぶくま抄】  2021年12月31日  09:11:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説】:2021年回顧/未来へ新たな活力育てよう

2021-12-31 08:30:06 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説】:2021年回顧/未来へ新たな活力育てよう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:2021年回顧/未来へ新たな活力育てよう 

 2021年も残り1日となった。昨年に続き、新型コロナウイルスが、県内経済や県民の暮らしに暗い影を落とした1年だった。

 デルタ株が猛威を振るった8~9月の流行の第5波では感染者が急増し、病床使用率は80%を超えて医療崩壊の危機に直面した。いわき、郡山、福島の3市にまん延防止等重点措置、県全域には県独自の非常事態宣言が出された。

 2回のワクチン接種を済ませた人が増えてから県内の感染状況は落ち着きを見せたものの、新たな変異株が国内で広がりつつある。年明けから高齢者などへの3回目接種が本格化する。国や県などは接種の取り組みを加速させ、第6波の回避に全力を挙げてほしい。

 丸10年の節目となった東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、大きな転機を迎えつつある。帰還困難区域のうち、避難指示の先行解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)でインフラ整備が進み、一部で準備宿泊が始まった。復興拠点から外れた地域は、20年代のうちに希望者全員が帰還できるよう、避難指示を解除する方針が示された。

 第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、国は23年春ごろをめどに海洋放出することを決めた。国と東電は、多くの県民が復興を実感できるよう、緊張感を持って一つ一つの課題解決に粘り強く取り組まなければならない。

 2月に発生した本県沖を震源とする最大震度6強の地震では、大規模な土砂災害が起きるなど、自然災害の脅威を改めて実感した。県や市町村などは災害への備えに万全を期すことが求められる。

 1年延期された東京五輪・パラリンピックは、五輪の聖火リレーがJヴィレッジを出発、福島市のあづま球場でソフトボールと野球が無観客で行われた。バドミントン混合ダブルスで銅メダルを獲得した富岡高卒の渡辺勇大、東野有紗両選手、パラリンピック車いすラグビーで日本の銅メダルに貢献した橋本勝也選手(三春町役場)ら県勢の活躍は県民を励ました。

 「復興五輪」を掲げた大会のレガシー(財産)を生かし、本県の子どもたちが夢や希望を持てる取り組みを続けていきたい。

 日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会の金賞銘柄数で、本県は8回連続の日本一となった。日本酒をはじめ、長年培われた伝統の技にさらに磨きをかけ、県内産業に活力をもたらしてほしい。

 コロナ禍で2度目の年越しとなる。新年が閉塞(へいそく)感を打破する、明るい話題であふれることを願う。

 元稿:福島民友新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月31日 08:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【編集日誌】:年越しの魚

2021-12-31 08:30:03 | 【水産資源・漁業・水産加工・缶詰・鰻・鮪・鮨・回転寿司】:

【編集日誌】:年越しの魚

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【編集日誌】:年越しの魚 

 年末年始、県内の各家庭では、どんな料理が食卓を彩るのだろう。こんな質問を本紙「ライフ」面で読者にしたところ、寄せられたお便りに共通していたものの一つが、大みそかの魚だった

 ▼会津では焼いた塩ザケ、浜通りではカレイの煮付け。ともに大みそかに神棚へ供え、家族で食べる伝統の年越し料理だ。中通りでは郡山名物コイの甘露煮も挙がったが、県北からは「カレイです」とのお便りが多かった

 ▼サケとカレイが年越しの魚になった理由は、いくつか考えられる。寒い時期に脂がのって、おいしい。サケは日本海、カレイは太平洋から、それぞれ輸送しやすい地域へ広まったのだろう

 ▼お便りの中には味わい深い一文も見つけた。「明治生まれの祖母は大みそか、紅さかなに白飯が食べられるのが何よりのごちそうだったと言ってましたよ」。紅さかなはサケを指すが、子持ちガレイも、白身に卵の赤が映える。おめでたい紅白である

 ▼そんなシンプルだが特別な食卓で、食事のできるありがたさをかみしめたのが、大みそかの魚の原点のような気がする。コロナ禍で平穏とは言えなかった今年の最後の一日。きょうまでやってこられた幸せを先人にならい、かみしめてみる。

 元稿:福島民友新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【編集日誌】  2021年12月31日 08:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【雷鳴抄】:除夜の鐘2

2021-12-31 08:30:00 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【雷鳴抄】:除夜の鐘2

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【雷鳴抄】:除夜の鐘2

 きょう31日は大みそか。樋口一葉(ひぐちいちよう)の小説タイトルになった「大つごもり」、俳句の季語である「大歳」「大年」などの呼び方もある。古い年を除き去り新しい年を迎える「除日」ともいい、その夜に突くから「除夜の鐘」となる▼鐘は108回突くのが一般的で、同じ数ある煩悩を払うとされる。「四苦八苦」を払うから4×9と8×9の合計、季節を分ける二十四節気、七十二候、月数を足した(24+72+12)数字などの説もある▼昨年は新型コロナの新規感染者の急増が、除夜の鐘にも影響した。県仏教会事務局長を務める観専寺(宇都宮市)の稲木義友(いなきよしとも)住職によると、今年も県内で梵鐘(ぼんしょう)のある寺院の半分ほどが、参拝者の鐘突き参加を見送るという▼県内でも梵鐘のない寺院は少なくない。同寺にもないのは先の大戦で供出したためだ。人の心を静め、世の安寧を願う鐘と戦争の落差があまりにも悲しい▼鐘は突かないが大みそかの夜には、1年を振り返り感謝するための「除夜会」を開く。そもそも除夜の鐘も、この法要の一つである。年初に「慶」の字に今年の願いを込めた稲木住職は、自分や社会がどうだったのか語り、参加者にも問い掛ける▼2021年は間もなく幕を閉じる。遠く響く除夜の鐘や、静寂の中での読経に耳を傾け、心静かに今年を顧みて、新年を迎えたい。

 元稿:下野新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【雷鳴抄】  2021年12月31日 10:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:政治家と「甘い水」 財政再建の道に立ち返れ

2021-12-31 08:29:55 | 【金融・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【社説】:政治家と「甘い水」 財政再建の道に立ち返れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:政治家と「甘い水」 財政再建の道に立ち返れ 

 臨時国会が閉幕した21日の記者会見。岸田文雄首相は財政再建について問われ、こう答えた。

 「自国通貨建て国債を発行する国の政府は、いくらでも国債を発行できるという意見もあるが、政府はこの考えは取っていない」

 そして「道筋を大事にしながら、財政健全化についても考えていきたい」と続けた。

 どこまで覚悟があるのか。この言葉には疑念が拭えない。

 昨年度以降、新型コロナウイルス対策で経済対策として巨額の補正予算の編成が相次いだ。2022年度予算案も10年連続で過去最大を更新している。

 補正予算の財源は多くを借金である国債に頼る。当初予算案も歳入の3割強を国債が占める。22年度末の発行残高は国内総生産(GDP)の2倍弱にまで膨らむ。財政健全化目標の達成は遠のく。

 懸念されるのは、健全化そのものを「重視する必要がない」と考える勢力が今年、政界で勢いを増したことである。

 この「道筋」はどこにつながっているのか。だれも明確に示せず、暗中模索の状態が続く。

〈規律軽視する勢力〉

 首相会見の6日前。自民党最大派閥の会長に就いたばかりの安倍晋三元首相が都内で講演した。

 財政状況に警鐘をならす財務省事務次官の論文について、「こういう話をするから、(国民が)将来に不安を持って財布のひもが固くなる」と批判している。

 安倍氏は従来から「赤字国債大半日本銀行に買ってもらっている。日銀は国の子会社で、連結決算上は(国の)債務ではない」と主張してきた。

 この指摘は「現代貨幣理論」(MMT)に基づく。「自国通貨で国債を発行できる国は、紙幣をいくらでも刷ることができるので、財政は破綻しない」という学説である。欧米の一部の学者が主張している。

 財政は既に「火の車」なのに、日銀の大規模金融緩和の影響で金利は低く抑えられ、インフレも起きていない。日本の状況は「MMTの正しさを証明している」と指摘する識者も存在する。

 自民党内では12月1日、財政再建を議論してきた従来の組織を衣替えする形で、新組織「財政政策検討本部」が発足した。

 最高顧問は安倍氏がつき、高市早苗政調会長ら「積極財政派」が幹部に名を連ねる。財政規律を重視した政策の転換を図る意図が透けている。

 自民党は22年度予算編成の政府基本方針に注文を付け、「歳出改革」の文字を軒並み削除させた。財政再建より経済再生を優先する「順番を間違えてはならない」との文言も書き加えさせた。

〈問題先送りのつけ〉

 22年度予算案は社会保障費が歳出全体の3分の1を占め、初めて36兆円を突破した。人口が多い団塊の世代が22年から後期高齢者になり始める。予算に占める比重はさらに大きくなるだろう。

 コロナ禍に対応した景気対策や、生活弱者の支援も必要だ。産業構造を改革していくことも求められる。それなのに防衛費は無秩序に膨らませ続けている。

 歳出が増えるなら、政府が取ることができる対策は限られる。

 増税もしくは国債発行で、歳入を増やす。もう一つは歳出の無駄を省き、効率的な「賢い支出」に務めるか、である。

 増税と歳出の効率化は、有権者の生活に影響を与え、支持を得るのが難しい。一方で国債は増発しても有権者に直接的な負担がなく、影響を実感しにくい。このため、選挙で選ばれる政治家は国債発行に頼り続けてきた。

 いまの財政状況は、政府や国会、そして国民が、問題を先送りにしてきたつけである。解決策が見いだせない中、財政支出を是とする学説はまさに「甘い水」だ。

〈「負債」負う国民〉

 財政の規律を気にしないで歳出を進めるとどうなるのか。

 伝統的な経済学では、物価が高騰し、金利も上昇する。国債の価格は下がり、政府の資金調達が厳しくなり、増税などの形で国民の生活に跳ね返るとされてきた。

 そうならないと主張するMMTの根本は、政府がインフレをコントロールできると考えることにある。ただし、否定的な専門家が多く、学説は定まっていない。

 原油価格の上昇や、日米の金利差に伴う円安の進行で製品の輸入価格が上昇し、徐々に国民生活にも影響が出始めている。

 真壁昭夫・法政大大学院教授は現状が続くと「いつ起きるか分からないが、急激なインフレが必ず起きる」と警告する。

 その時に政府はコントロールできるのか。できなければ、その責任はだれが取るのか。

 コロナ禍が進む中、歳出拡大はやむを得ない面はある。求められるのは財源明確にして、歳出無駄を省き、必要な政策を見極めることだ。国債頼みを安易に続けると、さまざまな「負債」は最後に国民のしかかってくる。 

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月31日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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