「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

”働き方改革” 深夜勤務への配慮も

2017-06-04 06:04:54 | 2012・1・1
現役時代の先輩(90)から”初夏の侯いかがお過ごしですか。住所と電話の変更についてお知らせします”と転居の葉書が届いた。転居先の住所を見ると、先輩が住んでいた南関東の市の近くの老人施設である。先輩は夫人に先立たれたあと、大学で教えながら独り暮らしで長い間頑張ってこられた。しかし、老人の独居生活はやはり限界があるのだろう。引っ越された施設は医療介護設備が整っている。

政府は今、大臣まで置いて”働き方改革”に取り組んでいる。過労死から端を発したもので、もう一度日本人の働き方を見直そうというものだ。例えば残業時間の上限を月45時間、年間360時間に抑えこもうという案のようである。僕は先輩の転居葉書から、半世紀近く前、先輩と職場を共にしていた時代を想起した。僕らの会社は「残酷」と世評があったほど、労働条件が悪かった。そのうえ、深夜の勤務が多く、週に三回も宿泊があった。そのためであろう。当時の仲間は先輩を除き、ほとんど早逝している。

”働き方改革”は残業だけであなく、例えば深夜勤務なども検討する必要がある。先輩と宿泊勤務を一緒にしたとき、彼は会社から支給される深夜食は一切口にしなかった。深夜食にしてはボリュームが重く、それに不味かった。先輩は必ず夫人が作った弁当を持参してきた。先輩は酒も飲まずタバコも吸わず、ある意味では”つき合い”の悪い男の代表であった。

今でも職種によっては宿泊勤務が多い職場もあると思うが、よほど強靭な肉体と心の持ち主ではないと健康に害がある。先輩のお元気な転居届から、半世紀前の劣悪な職場環境と、その犠牲になった仲間たちのことを想いだした。