★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

運がよかったのだろうか

2021年12月01日 14時16分44秒 | 徒然(つれづれ)
 大学を卒業して就職したのがクルマの添加剤の販売会社だ。
 その添加剤を主にガソリンスタンドにセールスする営業だ。

 ガソリンスタンドは、利益率の低いガソリンだけでは儲からない。ヘタをすると赤字だ。
 それでガソリン以外の、利益率の高い洗車やオイル交換、定期点検などに注力する。
 しかし、そう度々それらを勧めるわけにもいかない。

 そこで会社が目を付けたのが、クルマ用の添加剤だ。
 エンジンオイルやギアオイル、ガソリンなどに添加するオイル製品、エンジンや燃焼系統を洗浄するアルコール製品だ。

 オイル、アルコール系だからクルマに害はない。逆に言えば益もないのだが。
 利益率も高く、入れるだけだから手間もかからない。 
 あとは、オイルが劣化しています、滲んできてます、ガソリンタンクに水が溜まってます、キャブレターが汚れてます、等々、スタンド店員の客への声掛け次第だ。

 そんな添加剤を付加価値商品としてガソリンスタンドに売り込むのだ。
 商売熱心な所長は買ってくれるが、後ろ向きの所長は、押し売りは客を減らす、と消極的だった。
 私としても、そんな毒にも薬にもならない商品を、口先三寸でセールスすることに後ろめたさもあり、営業成績も可もなし不可もなしで仕事に嫌気がさしていた。

 そんな時に目にしたのが、通販会社の中途採用の求人広告だ。
 運よく採用になった会社の仕事は、カタログに掲載する商品の仕入業務だった。

 その商品は、ファンシー雑貨、オモチャ、化粧品、カメラ、ラジカセ、健康器具などバラエティに富んでいて、目新しく飽きることがなかった。
 ほとんどの商品が、バブル前夜という時代背景もあり、採用すれば売れに売れた。

 まわりの社員も同年代が多く、学生時代に戻ったような職場の雰囲気だった。
 前の会社の半分の努力で仕事は回せ、給料はボーナスや報奨金をいれると、倍近くになった。
 世の中には、苦労が報われない仕事と、苦労せずとも成果が出る仕事がある、とその時に実感したものだ。

 それが運というものだろう。
 そして、その時に私は人生の大半の運を使ってしまったのだろう。
 それはそれで、仕方がないし、それでいいと思う。
 

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兵どもが夢の跡

2021年12月01日 12時11分35秒 | 徒然(つれづれ)
 1983年に中途採用で入社した通販会社は、当時は名もない中小企業だった。
 通販自体が、現在の隆盛からはほど遠い、どことなく胡散臭い、キワモノ的な日陰の業種だった。
 それが時流に乗り、あれよあれよという間に、大証二部から大証一部、東証二部、ついには東証一部の企業にまで成長した。

 通販事業は衣料と雑貨に分かれていて、私は雑貨の仕入部隊に配属され、長らくその部署で仕事をした。
 雑貨部門はインテリアと家庭雑貨が二大ジャンルで、売り上げのほとんどを占め、私は趣味雑貨の仕入担当になった。

 趣味雑貨と言えば聞こえはいいが、要はインテリアや家庭雑貨のジャンルからこぼれた、こまごまとした雑貨商品だ。
 例えば、子供用品やファンシー商品、化粧品や健康雑貨、小物家電や楽器やレコード、果ては単ジャンルのミシンやカメラなどだ。

 インテリア商品や家庭雑貨は商社や問屋経由がほとんどで、担当仕入先の件数は売上規模に反比例して数社ほどだ。
 それに対し、趣味雑貨の仕入先は小規模の会社が多岐にわたり、私の担当仕入先は一時は100社近くに及んだ。

 売上に対しての商談件数は、インテリアや家庭雑貨の担当者とは比べものにならないほど多かった。
 出張で訪問する件数や展示会なども半端なかった。
 要は、労多くして功少なしというやつだ。

 しかし、当時は忙しさ以上に、それが興味深く楽しくもあった。
 個性的、あるいは没個性的、好相性、あるいは相性が合わない、何百人もの担当者と出会い、交換した名刺は引き出し一杯に溢れた。
 懇意の担当者とはヨーロッパ出張にも行き、常識の範囲での接待も受けた。

 定年退職した現在、そんな担当者との付き合いはおろか、顔や名前も忘却の彼方だ。
 彼らはまだ存命だろうか、どこかで仕事をしているのだろうか、あるいは私と同じように定年退職して静かな余生を送っているのだろうか。

 まさに、去る者日々に疎し、を地でいっている今日この頃だ。


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