★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

異世界の人々

2021年12月23日 14時26分48秒 | 徒然(つれづれ)
 疾風(はやて)のように現れて、疾風のように去ってゆく、というのは、昔懐かしの月光仮面の歌詞の一節だ。
 子供の頃の僕は、疾風の意味がわからず、どこからともなく現れて、どこへともなく去ってゆく、と自分なりに解釈していた。
 昔はそんな類いの不思議な人間が少なからずいたからだ。

 傷痍軍人は観音様の石段のそばに立っていたし、ぜんもんさん(乞食)は、一か所に座っているのではなく、家々を回っていた。
 紙芝居のおっちゃんは僕たちに夢を与え、ロバのパン屋はハーメルンの笛吹き男を連想させた。

 子供の僕たちには、彼らがどこから来て、どこへ帰るのか謎だった。
 彼らは、まわりの大人にはない、非日常性や負のオーラを漂わせながら、子供の僕たちに異世界の存在を想像させた。
 魑魅魍魎という言葉は知らなかったが、たぶん僕たちはそんな雰囲気の世界を想像していたのだ。

 経済社会が発展した現在、そんな人間はもうどこにもいなくなった。
 彼らはどこへ行ってしまったのだろう。
 唯一、ホームレスが似たような存在だが、昔のような不思議なオーラを彼らに見出すことはできない。


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