木工芸・漆・道具        

 木肌の美しさに惹かれ、指物の伝統技術と道具に魅せられて・・・・・ 木工芸 市川 (宇治市炭山)

黒田乾吉流拭き漆

2009-09-24 22:53:00 | 
「一木一優」の作品展に、拭き漆の工程を示した手板を展示しました。


木地にはペーパーをかけず、鉋で削ったままで生漆を刷毛摺りします。
ペーパーをかけると木の粉で導管が埋まり、漆の吸い込みが悪くなります。
丈夫に仕上げるためにできるだけしっかり漆を吸い込ませます。
十分吸い込ませた後、ヘラで余分な漆を摺り取り室で乾かします。
導管の中までしみ込んだ漆が乾くには2~3日かかります。


漆が乾いたらペーパーで水研ぎして、生漆を刷毛摺して乾かします。
ペーパーを次第に細かいものにしながら、導管が埋まり、漆で固まった均一な下地ができるまで繰り返します。
この工程が黒田乾吉流拭き漆の一番の特徴です。


下地がしっかりできた後初めて拭き漆本来の漆を塗っては拭くという作業を繰り返します。
拭く布は、はじめは綿を使って繰り返しますが、ツヤが上がってきたらモスリンを使います。
これも黒田流拭き漆の特徴です。

拭き漆の技法は色々あり、木地調整した(ペーパーで磨いた)木地に生漆を塗っては拭いて乾かす、という作業を数回から多い場合は十数回繰り返すというのが一般的です。
塗装としてはこの方法できれいに仕上げる事ができますが、木の導管を完全に埋めることはできず、耐水性などは完全とは言い切れません。
導管を埋めるのに、サビ(砥の粉を生漆で練ったもの)を使う方法もありますが、砥の粉(砥石の粉)という木にとって異物が混じることを嫌い、黒田流ではすべて漆で導管を埋めます。
その結果、拭き漆ながら熱湯で洗うことも長時間水に浸けることもできる、大変丈夫な作品に仕上げる事ができるのです。
仕上げるまでの工程と、漆という素材の丈夫さを多くの皆さんに知っていただけたのではないかと思います。
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4 コメント

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「拭き漆」という (fagus06)
2009-09-25 08:11:29
言葉は黒田辰秋に関する書物で知りました。その時は「透明な漆のことかな?」くらいにしか理解していませんでしたが、こちらのブログや作品展でのこのサンプルを見て、ようやく理解できました。
漆は見た目の美しさだけでなく、強度や耐水性にも貢献するんですね。
それに、これだけ何度も塗ったり拭いたりするものとも知りませんでした。
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Re:「拭き漆」という (ichi)
2009-09-25 20:16:12
漆器というととても扱いが難しいという思われていますが、実は漆は塗料の中では一番強いといってもよいと思います。耐熱性は150度位あり、酸、アルカリにも強く溶剤にも溶けません。唯一つ弱いのは紫外線ですが、それも最近は精製段階で熱を加えないMR漆が開発され、車の塗装にも試験的に使われているようです。漆というのは、実に奥が深いですね。実は拭き漆という技法は漆器の塗り、というより木工品の塗装として扱われています。したがってお椀などの食器にはあまり使われていませんでしたが、黒田乾吉流の拭き漆をすることにより、拭き漆の可能性がとても広がるのではないかと思っています。
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拭き漆 (matsuzawa)
2009-09-30 12:25:30
漆だけで拭き漆をした場合はやはり丈夫になるのですね。
浄法寺の椀も漆の塗り重ねが主流ですが、私は蒔地のものよりも耐久性があるような気がします。
漆の素材の良さをもっと普及していきたいですね。
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Re:拭き漆 (ichi)
2009-09-30 21:56:41
そうですね。錆を使うと弱くなるようにおもいますね。木地の補強のために布着せなどをすると物理的な力に対しては強くなりますが、錆を使いますので、生地と漆の接合力はやはり落ちるのではないでしょうか。蒔地の場合も同様でしょうね。
漆の素材の良さの普及・・・同感です。
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