Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編457. 新型コロナウィルス14. 夏休み前の感染状況

2020年08月02日 | analysis

 

 この感染が始まった頃から、メディア報道に科学の知見や論拠がみられなかったし、様々な情報が錯綜し、論拠のなき推測発言ばかりでは結局なにもわからなかった。そこで自分で厚生労働省のデータを時系列で集計してきた。特にこのブログ「新型コロナウィルス10.まとめ(番外編432.新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数の推移について、その7.日本と韓国の比較考察2020年5月2日、検証5月20日)」の中で、新型コロナが発症前に既に感染をひろげていたとする知見にたどりつき、ようやく自分なりに納得できた。つまり発熱などの発症期前から曝露が始まり、それは本人もわからないのだから当然自覚もしてない。そこがこのウィルスの特性でもあり、やっかいなところだということを。そのときの図を以下に再掲しておく。

図1. 新型コロナウィルスの構造(再掲:番外編432.新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数の推移について、その7.日本と韓国の比較考察2020年5月2日)

 

 その結果我が国の保健所制度などは、すべて後処理でしかできないことを思い知らされた。もちろん政府の対応、防疫、検査態勢、医療施設への支援、都市封鎖などなどは脳天気なほどに遅すぎた。重要なときに、全てが遅いというのが日本政府の特性なのでしょう。あの真珠湾攻撃のときでも、米国への宣戦布告が開戦後に届いたという不始末。だから米国では、不意打ちも武士道なのかとする日本人認識は消えない。

 さて推移データをみていると、個別的にみれば興味深い推移をしめす部分もあるが、全体としてみれば、そんなに面白いデータではない。私のように構造的に見たい人間にとっては、感染構造はわかったけど感染が納まらない要因をさぐれるデータではない。つまり現象データばかりであって、物事の属性を示すデータではないから興味も薄くなります。 

 こんなデータ集約とか解析などは、高校生にでもさせておけばよいと思うが、夏休みも近いし、感染も拡大しているので少しデータを集約してみた。

 

1.G7主要国の感染者数推移の状況について

 先ず図2でG7国家+中国、韓国の感染者数累計値をみてみます。

図2. G7国家+中国、韓国の新型肺炎患者数累積値の推移(単位:人)

 

 米国の増加は線形の傾斜が少しきつくなってきたので、感染者数が増加傾向。どうしてここまで拡大してゆくかを探ることは興味がありますが、手元にデータが無い以上私は静観してます。おそらく新型ワクチンの開発投与で一気に低減することを意図していると思われます。増加する感染者数の追跡調査は米国側に膨大にあるわけですから適切な解析をおこなえば傾向や関係性はわかります。尚V字型にくぼんでいるのは欠損値です。

 米国の値が大きいので各国の傾向が読みにくい。そこで1日あたりの感染者数値でみてみます。表でアップできればよいのですが、昨年暮れからのデータですから、ブログ画面にはとても納まりませんし、数段に編集するのも手間がかかります。だから 要点だけ説明します。

 さてここ直近1週間の推移を最小値と最大値でみてみます。中国21〜105人で推移、日本596〜1146人の間で推移、韓国18〜113人の間で推移、米国56,336万〜74,985人7万の間で推移、カナダ355〜717人の間で推移、フランス0〜1062人の間で推移、ドイツ389〜839人の間で推移、イタリア171〜306人の間で推移、英国688〜779人の間で推移、スペイン0〜8189人の間で推移、とバラツキがあります。

 ヨーロッパ各国の4月頃の1日の感染者数は2,000〜8,000人代ですから、それよりは低減しているのでしょう。二次感染と呼ばれる所以かもしれません。日本は第一次も第二次も類似の数値で感染者数を発生させています。やはり中国と韓国が終息に向かってゆく傾向があります。特に中国・武漢市の感染者数0値が続くという報道をみると、発生地であると同時に、世界でただ一つの終息できるという実証例だといえます。強い国家の意思のもと、一斉に国民を統率できる力を持っていることを中国は、世界に示しました。

 

2.我が国政令指定都市を有する都道府県別感染者数の推移について

 7月30日時点の日本の感染者数累積値を図3でみてみます。

 図3. 政令指定都市を有する都道府県別感染者数の推移について(単位:人)

 顕著な傾向は東京都が再び増加に転じたことでしょう。その傾斜も前回より少しきつい、つまり増加数が前回よりも多いということです。あきらかに東京に遅れて、他都道府県の感染者数も増加傾向になりつつあります。つまり感染源は、当時感染が完全には納まりきっていなかった東京といってよいでしょう。やはり自粛解除の時期が早すぎたといえます。

 こうしたデータをみていると、Withコロナという政策が成立するのだろうか疑問に思われます。どこか文科系政治家達のスローガンのようで偽善的ですね。私が一番知りたいのは、都市活動、あるいは都市人口の移動をどこまで回復させたときに、感染者がどの程度増えるかとする方程式です。私は、多分専門家会議で使われていると想像しています。その方程式を示してくれないと、こちらは何もわかりません。ただ数値が上がった程度のことはデータをみればわかるので、子供の診察ではないのですから、文科系メディアはやはり方程式なりモデル式ぐらいを示し、科学報道、あるいは子供向けではなく大人の報道をしてほしいですね。

 

3.無症状の感染者が増えたのではないか?

 小見出しは、最近メディア報道で聞かれる言葉ですが、特に新しい現象ではありません。このブログでは、前述したように2020年5月2日のなかで、発症期前に曝露していたとする見解を示しました。今では多分検査体制が整いつつあり、ようやく少し広範囲に感染者数が把握できるようになったという程度の話。そのことを1日入院数/1日感染者数の構成比で図4でみてみます。縦軸が構成比の合算値、横軸が3月19日以降の日付です。

 政令指定16都市の構成比をそれぞれに算出し、各構成比を合算したものですから縦軸目盛がMax1,400になっています。本来なら全国値の構成比を出すのが簡単ですが、それでは個別的都市についてわからない。多分医療機関の余力に応じて全て入院させる、自宅待機などの措置が、都市ごとに違うということは数値からわかります。

 統計的にはあまり使わない方法ですが、個人的には面倒なのでこれで説明します。疑わしいと思ったら各自でデータを集めて検算してみてください。データは3月20日〜7月30日までの16都道府県別入院数/感染者数累積値の百分率を算出し合算しました。計算上欠損値はデータなしの扱いとしました。

図4. 構成比(入院数/感染者数%の合算値)

 この入院者数というのがなやましいのですが、定義は当該日に何人が入院していたかとする値です。しかし前々日から入院している人も含まれているとすれば退院もあるフローデータです。ここでは累計値とみてよいのかな?。そうであれば、感染者数累計値との比率をとればよく、それが図4になります。

 確かに構成比で見る限り7月以降は、入院数が4月頃と比較して大きく低減しています。低減理由として、検査態勢が拡充されたので多くの検査数を扱えるようになった。その結果入院を必要としない軽症の感染者が多く捉えられたということではないでしょうか。つまり前述した発症期まえに既に感染を曝露させていた未発症感染者の一部をようやく把握できるようになった、ということでしょう。

 さて図4は、構成比ですから、ベッド数に余裕があるという意味ではありません。毎日報道されている感染者数をみればわかりますが、前回以上の急激な増加に伴い医療施設は次第にひっ迫しつつあるというのが現在の姿です。

 

4.まとめ

 このブログ2020年5月2日、5月20日の中で、新型コロナが発症前に既に感染を曝露させていた。それは発熱などの発症が現れる以前のことですから、本人自身もわからない感染なのだという感染構造に私の認識は変わりません。そこがこのウィルスの特徴でしょう。だから防御は、マスク、密集地にはゆかない、もちろん感染増加の都道府県にもゆかない、今はワクチンがないのですから、個人でできる対策といえば、この程度しかありません。

 さて新型コロナウィルスの今回のブログも、クリエイションの最中に執筆したので、頭を切り換えるのが難儀でした。もうエイヤッという感じで。だから面倒なので深く検証はしていません。というのも感染に関するデータに特に新しい構造があるわけではありませんし、高校生が解析すれば間に合いそうな知見しか得られない。感染症ってこんなつまんないデータと向き合うんだ。そういうことを初めて理解しました。

 そんなわけで、今日のブログは論理的に?もありますが、個人的にはどうでもいいや、の気分です。Withコロナ等という政策がありますが、とてもじゃないけど私は、コロナとの共存は不可能だとする見解です。共存ではなく終息させることです。それっていかにも文科系政治家・役人達の悶々表現ですね。

 基本は、現在米国が治験をしている新型ワクチンの早期投入でしょう。おそらく米国は、相当の数量を製造してくると思います。政府は来年6月までには・・・、何アホなことを考えてんの。アビガンを提供している日本をバカにしているのですか!。そんなの今年中に実施ですよ。もう文科系政治家や官僚達の対応の遅さにはあきれるばかり。感染症の防止策は、すべてスピードが勝負です。そういう政府にしたいですね。

 最後に、かって管政権時代にスパコンの予算審議の中で「なぜ世界で2番目のコンピュータではダメなんですか?」とする政治家の発言がありました。それこそ文科系国家の最たるもので、私にいわせれば世界のトップを越えるスパコンを常に開発してゆかなければならない所に私達がいるということです。感染症飛沫の3次元解析は、空気力学の解析と類似していて、空気のからむ3次元計算は膨大な計算量が必要になります。かって私は空気力学の解析で1解析に1晩かかるという経験をしたことがありました。今はスパコン「富嶽」で瞬時に3次元シミュレーションができると推測しています。さらにマウスの動物実験で時間がかかる検証を、スパコンでシミュレーションできないかと考えたら、今以上の速度をもったスパコンの開発が必要になります。さらには今後スパコンのハードとソフトの一般化が望まれます。感染症は、つねに対応のスピードが感染拡大の規模や生死をわけます。それを今回の新型コロナウィルスの蔓延が、教えてくれた知見ではないでしょうか。

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

 

沖縄県那覇空港

iPhone7

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番外編453. 新型コロナウィルス13. 海外と日本の状況

2020年07月11日 | analysis

 

 新型コロナ感染も、属地的な様相をおびてきた。世界で見れば米国が感染者数が増加し続けており、他方でヨーロッパ各国と比較すると日本は、人口数の割には著しく感染者数の値が低い。

 これまで日本のPCR検査数の少なさがメディアなどで指摘されてきたが、その指摘は間違っている。同様のことを7月8日の感染者数累積値で見ると韓国(13,244人)、オーストラリア(8,880人)、ニュージーランド(1,537人)である。これらに共通する点は、いずれも島国であること。韓国は北朝鮮との国交がないから島国と捉えてよいだろう。島国であることによって国境を陸地で接することがないので人の往来の遮断が容易であり、そのことが感染者数の少なさにもつながっていると考えられる。

  他方で同じ島国で大量の感染者を発生させている英国は、海底トンネルで鉄道、バス、自家用車でヨーロッパ大陸諸国と密につながっているので、これを島国と呼ぶのは難しく、やはり制御できない人口流動が感染経路として存在しているのだろう。

 また的中率7割程度のPCR検査数の少なさを指摘するメディア系人種も多いのだが、このPCR検査の及ばないところを埋めているのがレントゲンやCT検査である。むしろレントゲンやCTの方が瞬時に感染状態までわかる能力があり、PCR検査よりはるかに優れている。

 いま病院で内科の診察を受けると、先ず検温され、熱があると直ちに隔離されて、レントゲンやCTによる検査を受けさせられ、即座に結果がわかる。レントゲンやCTによる検査数は感染症検査数にはカウントされていないのだろう。ベッド数50〜100床程度の病院ならばレントゲンとCTは大概備えられているといってよい。

 日本は本来脳梗塞や心臓疾患が多かったので、諸外国より優位な医療設備状況にあり、このことがPCR検査数の少なさにも関係していると私は理解している。PCR検査は空港などの水際対策で使用してこそ効果があると私は考えている。医療設備が整っている日本国内において、的中率の低いPCR検査をわざわざ受ける必然性は少ない。PCR検査は、海外からの大量帰国者の検疫方法なのだろう。

 

1.G7主要国の感染者数推移の状況について

 先ず図1でG7国家+中国、韓国の感染者数累計値を図1、さらに同様の1日あたりの感染者数推移を図2でみてみよう。

 米国が他国と比較し突出した右肩上がりの線形であり、都市封鎖政策の効果も少なく現在に至っている。7月8日時点の感染者数(累計値:8日時の感染者数)をみてみよう。米国2.993,760人:57,683人、次いで英国(287,874人:584人)、スペイン(252,130人:341人)、他方で最小値は韓国(13,224人:63人)である。各国とも10〜500人程度毎日感染者が発生しているが、米国の増加は群を抜いていることは既にメディアが報道しているとおりである。グラフの線形からすれば感染は、全く納まっていない状態だ。

 尚V字上の推移を見せていてる箇所は、元データの欠損値である。累積値だから水辺にはなるが低減することはありえないが、それでも若干の低減がみられるのも元データの集計方法を変えたとか修正したといったデータ集計側の事情を反映している。

図1.G7国家+中国、韓国の新型肺炎患者数累積値の推移(単位:人)

 

 図2. G7国家+中国、韓国の感染者数の推移(単位:人)

 

2.我が国政令指定都市を有する都道府県別感染者数の推移について

 7月7日時点で(感染者累積値:7日時点の感染者数)を、図3と図4でみてみよう。もちろん最大値は東京(6,973人:106人/日)であり、図の線形をみれば、一時期感染者低減期がみられたが、再び増加に転じている。これは夜の風俗業などに対して感染者発掘を積極的におこなってきている結果が反映されているのだろう。今後も感染者数は増加するが、それ自体は、むしろ適切な増加とみてよいだろう。ある一定のところ迄きた頃増加はストップされるだろう。

 それ意外に繁華街での若者の感染が増えていることが要注意だ。こちらは感染経路不明が多く、隣接県へ感染を拡大している可能性がある。実際東京都の1日あたりの感染者数が50人を越える頃から、隣接県の感染者数の増加、あるいは例えば京都、大阪の感染者がそれまで続いていた0値から、京都(1〜15人)、大阪(1〜34人)へと増加している。東京から持ち込まれた可能性が高いことを否定できない1日あたりの発生数の数値の推移である。

図3.政令指定都市を有する都道府県別感染者数累計値の推移(単位:人)

 

図4.政令指定都市を有する都道府県別感染者数推移(単位:人)

 

3.国際比較

 図1の海外と図3の国内の感染者数累計値推移をみていると、数値の相違こそあるが推移構造が類似していることに気づかされる。米国が増加を続け他都市との増加率は桁違いであると同様に、東京が増加を続けており、他都道府県との増加率がやはり異なっている。つまり1極増加他微増とする構造だ。そこに巨大都市ニューヨークを抱える米国と東京の類似性と読み替えてもよいだろう。

 それは巨大都市ならではの都市構造が関係しているのだろう。先ず空間密度が大変狭隘であること。当然昼夜間人口密度は高く、ソーシャルディスタンスも十分とれず、さらにはテナント家賃が高いため店を休業できる状態にはあらず、サービス機能維持のため企業を休みにはできず、さらには検疫できない裏社会を抱えている、などの巨大都市ならではの都市構造だ。

 

4.気になること

 今回の一連の政府や自治体の感染症対策で気になることが一つある。それは感染が発生した属地情報がプライバシーの観点から一切伏せられていることだ。そのため政策も自治体単位で自粛するという広範囲な政策をおこなってきた。もちろんそこには把握できない人口流動があるからなのだが、はたしてそこまでの社会的犠牲を払い広範囲な政策をおこなう必要があったのだろうか。むしろクラスターを発生させた場所がどこかとするスポット的な属地情報の公開こそが重要ではないか。感性地に近づかなければ、感染の可能性は低い。現状では、東京、神奈川、埼玉に近づくなということが図からわかるが、しかし重要なことは東京の全ての地域が感染地ではないのである。感染地は、大変限られた空間である。

 従って目下の所、東京・新宿、渋谷、池袋の夜の歓楽街の一部を一定期間封鎖すればよいと推測できる。因みに手元の厚労省のアプリをみるとこの2週間陽性患者との接触はないと表示されている。もちろん当初から当てにならないアプリだから、私は信用していないが・・・。

 感染者数増加と経済のバランスをとるなどというのは、いかにも微分方程式でモデル式ぐらいはつくれそうに思うが、そんな報道は全く聞かない。せめて数式ぐらい示して欲しい、と私は思う。感染症に関する知識は、高校生迄の知識で十分だからね。

 ニュースを聞いていると実に説明や論理が稚拙すぎる。まして科学技術立国において文科系の官僚や政治家がリーダーシップをとるなんて、私にはゾッとする気分だが、といって文科系の官僚や政治家が一番多いのだから、これも困った現象だ。政府はこれからおこなうとする施策を形式的に発表するだけだが、それを解説するメディアは、もう少し数値や数式を用いて論拠ある実証的解説をしてほしいですね。そうでないと、私のような工学系人間にとっては、なにもわからない。

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

 

SONYα6600、Carl Zeiss Vario-Tessar E 4/16-70mm

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番外編443. 新型コロナウィルス12. データ編

2020年06月10日 | analysis

 

 いやな執筆をしておこう。

 というのも厚生労働省のHPから感染者に関するデータを手入力で私のExcelに書き写し、そして検算、作表・作図するという、実に面倒くさい作業だからだ。こんなの厚労省のHPからExcelデータでダウンロードできれば実に簡単だったのだが。なによりも時系列で推移傾向を把握するためには、こうするほかないから、しかたなくやった。もう面倒くさい限り。

 さて採取したデータは、感染者数累計値、入院患者数、及び世界の感染者数累計値の3データの時系列推移である。これからメディアが報道している1日の感染者発生数や増減比率など、いくつかの基本的な指標は導き出せる。といってこのデータでは多変量解析などに使える性格ではないので、私にとっては退屈なデータ収集だった。

 さて表1は1月29日〜6月7日間の政令指定都市がある16都道府県別感染者数累計値のデータである。1月29日に2人の感染者が発生したのが最初である。2月14日から感染者数が増加し始めている。とんだバレンタインデー・プレゼントだったか。2月25日頃、北海道でクラスター感染が発生するほか、東京、神奈川、愛知、福岡でもクラスター感染が発生した。これを第一波とすると、中国武漢ウィルスがクルーズ船、武漢からの帰国者のチャーター便などによって我が国に新型コロナウィルスが持ち込まれたことがわかる。

 中国武漢が都市封鎖された1月23日。クルーズ船乗船客を除けば、当時我が国に感染者はいなかった。その頃中国も海外渡航禁止になったので一斉に日本の街から中国人が消えたわけである。

 続いて第2波の感染が始まる。3月24日以降全国的に感染が拡大するとともに、東京や大阪の感染者数が大きく増加に転じてゆく。これは3月10日以降ヨーロッパ各国で都市封鎖を始めたので、これにともない急遽帰国した数多くの日本人が欧米で感染し持ち込んできたものである。帰国者は全国に及ぶので感染が全国へ拡大するのに時間はかからなかった。空港の検疫を強化した頃は、すでに時遅かった。

 そんなことが、この時系列推移のデータからわかる。私がブログで論じた論拠は、このデータにある。それは一見数値の羅列だが興味深い意味を潜めていたのである。

表1.政令指定都市を有する都道府県別感染者数累計値の推移(単位:人)

 

 表1の数値をグラフ化したのが、図1である。累計値であるから、推移が水平になれば感染者の増加は0値が続くことになる。政令指定都市を要する都道府県の多くが水平を維持している。しかし北海道、東京、神奈川、福岡が僅かに増加傾向を続けており、特に東京はまだ感染が終息していない状況だとみられる。東京アラートが出されている証左だろう。

 当然今後の2次感染も予想されるが、今はまだその時期ではなさそうだということはわかる。

 2次感染は、6月19日以降の全国への移動が解禁され、そして今後海外への渡航が解禁された頃から、また始まるだろうと予測している。つまり人の移動によって感染も再来するわけだ。人から人への感染であり、特に潜伏期後半から感染が始まっているので、それは本人自身も発症しておらず感染したかどうかもわからない状況で、感染してゆくことになる。全く難儀なウィルスである。

 感染は、海外からもたらされる。それははっきりしているが何十万人の人間を全て2週間足止めをして、感染を阻止することは物理的に不可能だ。そこが悩ましいところでもある。

 

図1.政令指定都市を有する都道府県別感染者数累計値の推移(単位:人)

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

 

京都市東山区

EOS1DsMark3、Canon EF50mm/F2.0

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NIKON FREAK484. 新型コロナウィルス11. 後書き、緊急事態宣言解除

2020年05月26日 | analysis

 

 

 新型コロナウィルスも、5月26日に最後に残されていた首都圏の緊急事態宣言が解除された。

 社会は速やかに回復に向かう。手元の昨年の12月末から始めた感染者データ採取は5月末日をもって終わる。特に解析してブログで公開する必要性もない。

 京都は感染者0値の日が11日間続いているので、ウィルスの最長潜伏期間2週間に近づきつつあり、外部から持ち込まない限り、京都市内に新型コロナウィルスは存在しない。

 緊急事態宣言解除後は、メディアが報道しているように経済回復まで長い時間がかかるとは、私は全く思っておらず、恐らく、かなり早い速度で経済回復をしてゆくと推察している。その論拠が株価の上昇。さらに各国政府が大型の財政出動をおこなってきたので市場はお金が余っている。低金利政策が市場を刺激してゆくだろうか。

 さて、元々私は家のアトリエで仕事をしていた。全てがインターネット上だったからステイホームといわれても影響は皆無。それより社会が大変静かで、人のいない京都は大変素晴らしく、これが古都の静寂感だと通巻した。だから実をいうとステイホームの間は充実の日々だったのである。

 ただトレーニングセンターが3月から休み、4月からは喫茶店もマッサージ屋も休み・・・、といった具合に気分転換ができないのは少し悲しいものがあった。そこでAmazonで本を注文し、その知見で小説:小樽の翆を執筆する時間は、とても充実の限りであった。今思うと、そんな時間が懐かしいし、もっと続いていてもよかったが・・・。

 ふと考えると、ステイホームのなかで充実した1日が過ごせるツールを普段から用意しておくことが必要だと思われた。こちらは幸いにして官能小説を書いていたし、透明水彩絵具で魚の絵を描いたり、普段しなかった家の片付けをしたり、食べたい時に食べたいものを調理し、寝たいときに寝る不規則な毎日を過ごしていた。こんな好き勝手な事ができて、しかも時間を気にしないで過ごせたのも、大変素晴らしいステイホームの時間だったことに気づかされた。

 感染症は、感染している人間と遭遇しなければ感染はしない。遭遇してもバリエールを付けていれば過半は防げるだろうと考えている。

 実を言うと宣言期間中に、蒸し暑い初夏の眩しい街へ散歩に出ていた。人が歩いていないのだから感染の心配もない。そんな宣言期間中の街歩きの画像もストックができたので、時折ブログにアップさせよう。季節柄、虫干しといったらよいか・・・。

 

京都市下京区・東山区

NIKON Df、AF MICRO NIKKOR60mm/F2.8

2)ISO280、焦点距離60mm、露出補正0、f/4、1/4000

3)ISO900、焦点距離60mm、露出補正+1、f/4、1/4000

4)ISO4000、焦点距離60mm、露出補正+1、f/8、1/4000

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番外編436. 新型コロナウィルス10.まとめ

2020年05月20日 | analysis

 

 新型コロナウィルスも緊急事態宣言解除時期であり、ようやくクラスターが追跡できる感染規模に縮小してたということであり、感染が終息したわけではない。いつもの推移と現状をみながら、最後に2つ指摘事項と、現在の感染状況を俯瞰してみよう。

 

1.何故日本人は重要なことを最初に説明しないのか?

 重要な事とは、発症期ではなく潜伏期にウィルスの放出量が最大となる可能性が高く、従って発症者をみつけるのが困難であること。そこがこれまでのウィルスとは異なっていること。

 私は、既に5月2日の私のブログ「番外編432. 新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数の推移について その7.日本と韓国の比較考察」のなかで、「図4.感染構造の仮説モデル」をあげて、これが潜伏期感染だという仮説をたてた。

 私は、どうして隔離しているにもかかわらず感染者が次から次へと出現するのだろう疑問に思った。だから私なりにデータ解析をしながら、感染量が最大になる時期が、これまでよりは前にずれており、既に潜伏期で感染が起きていたとする仮説を提案した。そして保健所や国がおこなっていることは、今回のウィルス感染とは、すべて逆方向の対応ではないかと違和感をブログで指摘した。当時の図版を以下に再掲しておく。

図1. 感染構造の仮説モデル(5月2日ブログから再掲)

 

 だが、これは仮説ではなく現実だった。図1にあげたのは、国立国際医療研究センター、国際感染症センターが示した感染構造(注1)が図2である。

 

図2.COVID-19とSARSの感染構造(注1)

 図2は、新型コロナウィルスとSARSの感染構造を比較したもので、新型コロナウィルスは潜伏期にウィルスの感染量(排出量)が最大になり、潜伏期感染をしていることがわかる。従って発症を自覚してからPCR検査を受け隔離される現在の保健所のシステムでは感染を防御できない。他方でSARSは、発症期にウィルス排出量が最大になるので、それから隔離しても感染を防ぐことができた。

 私は、このような図がメディアで報道された記憶はない。

 そんなことを知らないのは、あんただけだよ、国民はみんな知ってんだから、という理屈なのだろうか。

 おそらく感染症の治療をしながら、こうした構造がわかってきたと思われる。つまり潜伏期感染であれば、誰が感染したかはわからないので構造的に捉えられない。だから人と人との接触を8割減とする施策がなされたと理解すべきだろう。

 新型コロナウィルスには、そうした方法しかなかったということであり、保険・医療の従事者達は、潜伏期感染によってワクチンのない現状下では、今ある保険所・医療システム、そして治療方法が効果が少ないことを理解しながら、対処療法を続けきたと考えられる。

 ならば、そのことを国は最初に国民に説明したらどうですか、というのが私の意見。少なくとも警戒宣言発令時には、わかっていた知識である。そんな重要な事を最初にいわないとする経験を、これまで随分としてきた。

 

2.何故国内技術を最大限活用しないのか?

 2時間で自動で検査ができるPCR検査キットは日本製だった。だが日本政府が認めないままヨーロッパで活躍したが、日本で使われることはなかった。そんな日本の技術の流出があった。

 WEBのYAHOO!(注2)ニュースによれば、「ヨーロッパで多用されている2時間で検査ができる全自動PCR検査システム試薬キットは、日本の開発ベンチャー企業プレシジョン・システム・サイエンス社(千葉県松戸市)が製造し、仏エリテック社から販売されている。海外では既に数多く使われてきた実績があるのに日本では使っていない。PCR検査自体は保険適用がされたが、そのために医療機関と都道府県との契約が必要となるなど新たに制度の壁もでてきた。そして日本は、利権構造、既得権益、岩盤規制、官僚主義、お役所仕事で雁字搦めになっているため、肝心の技術をもちながら、それを拡大し利用できなかった」、と報じている。

 プレシジョン・システム・サイエンス社と日本政府の関係の悪さがうかがえる。ベンチャー企業だから、天下りを受け入れないとか、普段から厚生労働省との関係がないとか、つまり利権構造に組しない関係性の悪さがあったのだろう。だからこそベンチャー企業といえるのであるが。今は京都の島津製作所が1時間で検査可能な製品開発をおこない、試料の一部無償提供をおこなっている。

 最近政府がビックデータを活用して感染症のソフトウェアを作ろうと関心を寄せている。つまり感染したら、氏名は伏せるが(管理者は知っている)、位置情報でどこにいるかを詳細(寝室にいれば彼女と抱き合っていることもわかる精度の情報)に示し、感染者が接近したらブトゥースをつかってアラートを鳴らすというものだ。プライバシーの課題があるので今後政府で検討したいとするものだ。

 私にいわせれば。そんなものはビックデータを扱う企業がアプリを開発すれば済む話で、政府が介入することではない。情報は一端公開すれば、どんな制度の縛りや名目を付けてもWEB上から消え去ることはない。個人が自由とクリエイティビティを発揮できる、そこにPCの開発者アップルの基本姿勢があり、今PCを政府が国民管理に使おうとしているのは、アップルの精神に反しているだけではなく、国民の意識にもそぐわない。私達が使っているのは、個人を基本としたPersonal computerであって、政府が管理するGovernment computerではないのだ。

 そもそも潜伏期感染で、本人自身がわからないまま、ビックデータを駆使して何がわかるんだろうか。わかる事は1つだけ。感染経験があるか、そうでないのか、それによって差別を形成する構造につながってくる。

 

3.政令指定都市を有する都道府県別感染者数累積値の推移

 感染者数累積値を示した。累積値であるため図の線形が低減することはあり得ず、右肩上がり、もしくは水平、にしかならない。その水平に近づくということは改善傾向が顕著になってきたということを示している。

 日本にウィルスが持ち込まれたルートは大きく2種類あった。1月〜2月にかけて武漢ウィルスが持ち込まれたクルーズ船。これだけであれば、緊急事態宣言まではゆかなかった。そして3月中旬に欧米各国がおこなった都市封鎖で、日本への帰国者によって持ち込まれたヨーロッパ型ウィルス。これは感染力が強く一気に日本全体に拡散した。いずれも日本の防疫体制の構築が大変甘く、そして遅かったことになる。

図3.政令指定都市を有する県別感染者数累計値の推移(単位:人)

 

4.政令指定都市を有する都道府県別1日あたりの退院数/入院数の現状について

 当該日の退院数/入院数の割合を過去2週間分を示したもので、数値が1未満は入院数が多く、1以上が退院数が入院数を上回り、改善方向にむかっている。また#DIV/0!は、分母の入院数が0値のためExcelではこのように表記されており、これも改善傾向を示している。それらの値を右欄に示し、合計値を安全日日数として示した。

 私のブログ(5月14日)と比較すれば、安全日の日数が大きくなっており、特に10日以上ある自治体が、北海道、宮城、千葉、静岡、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、熊本であり、改善傾向が見られる自治体である。これらの自治体は緊急事態宣言が解除されることを裏付けている。

表1. 1日毎の退院数/発生者数(5月4日-5月17日)

 

5.まとめ

 私は、何故隔離されているのに感染者数が増えるのか?。そんな素朴な疑問から、ギゼックさんの本(注3)を読みつつ感染症を勉強しながら、毎日厚生労働省が発表する数値を手元のExcelに取り込み解析していた。本来なら、こんなデータはExcelファイルで提供されてしかるべきである。

 それでも集計し少し解析したので私なりの解釈が得られた。それが潜伏期感染である。私が感じた違和感(ブログ5月7日、番外編433. 新型肺炎感染者数の推移について その8.)もそこから発生してきた。従って唯一の対処方法は、人間の行動を停止させ、三密回避しかなかったことになり、政策の論拠が理解できた。そして発熱後4日間後にPCR検査をするなどの施策は、既に手遅れ策でしかないことがわかりつつ、陽性者の発見が進められてきた。その後に続く医療も、当然対処療法しか方法はなかった。

 こんな時にWEBサイトをサーフィンし情報をかき集めようというのは、文科系の手法である。そんな論拠が薄く情報の過誤も確認できないまま他人のディスクールに惑わされることなく、自らの手で解析することで、そして自らが納得してゆくことによって、過度の情報がもたらす不安は取り除けた。そのための知識は、高校生までの知見で十分だった。

 最近手元にある多変量解析ソフトだけでは不十分であり、数式処理システムのMathematicaが必要かなと思う。ただ感染症のモデル式ソフトがあれば、データを投入すれば結果は出てくる。第2波に備えて、そんなシミュレーションもしたかったが時間もつきた。このシリーズも一応終わりとする。

 それは、新型コロナウィルス感染が終息したということではなく、感染が人間の眼で捉えられる規模まで数値が低減しただけ、という意味である。

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

 

注1.COVID-19新型コロナウイルス感染症について、国立国際医療研究センター、国際感染症センター:忽那賢志、PDF版

注2:https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200509-00177769/

注3.ヨハン・ギゼック著、山本太郎・門司和彦訳:感染症疫学、昭和堂、2017

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番外編434. 新型コロナウィルス9.補遺 データサイエンスの視点

2020年05月14日 | analysis

 

 新型コロナウィルスについて書くべき新たな知見はないが、新型コロナウィルスのファースト・アタックは、終わりかけの兆しがみえてきそうだ。少し書き忘れた事などを私なりに加筆しておこう。

 

1.感染症疫学の基礎知識について

 感染症疫学(注1)が教えるところの1つに基本再生産数がある。一人の人間が何人の人間に感染させるかとするもので以下の数式によって算出できる。

 基本再生産数(R0)

β:1回の接触あたりの感染確率、発症率

k:ある時間あたり1人の人間が集団内で平均何回の接触をするか

D:感染症毎に決まっている感染期間

R0=β×k×D

これによって基本再生産数(R0)が1以下ならば感染は終息させる方向にあり、1を越えれば感染拡大となる。感染症の伝統的な数式である。

 現在は、実効再生産数を算出するので、これは確率微分方程式(注2)によって導き出されている。従って各都道府県の感染状況から今後どうすればよいかは、既に試算されているし行政の対応にも反映されている。

 

2.データサイエンスの目線

 既に数理モデルを扱う研究者提言のなかで、感染を停止させるタイムリミットが3月26日頃としていたことである。それは人間が制御できるタイムリミット。そして4月9日頃から極めて厳しい都市封鎖と移動制限以外に終息方法がないタイムリミットだった。日本は4月7日に緊急事態宣言を発したので、タイムリミット2日前だからセーフだというのは文科系政治家の考え方であり、数値にはアローアンスがあるから厳しい都市封鎖や移動制限をしてもよい時期だった。宣言が遅かったとすることは私の過去ログでも書いた。今、その遅さが医療崩壊を一部で起こし始め感染を長引かせている。日本政府の決断が2週間遅すぎたのである。

 感染は、今どこから日本にやってきたか。当初武漢発だった感染も今は、250万人と推定されるヨーロッパなどからの帰国者が第1の候補にあげられる。これによって感染力が強いヨーロッパ型のCOVID-19が日本に持ち込まれた可能性がある(注3)。当初帰国者は2週間空港近くのホテルで待機、ただし滞在費用は全て自己負担とする無責任政策のおかげで、感染は日本国内に容易に入ってきた。既に横浜港クルーズ船下船後の2週間待機をしなかったとする苦い経験を、ここで活かすことができなかった。これは失策といってよい。むしろ政府としては滞在国に留まれと指示し、金銭支援を日本政府が速効で行う方法があったと思うが、出国でクレジットカード会社名を記載していないから、これは今後の課題か。

 幸いだったのは、電気、ガス、水道の基本インフラのセクターから感染者クラスターが発生しなかったことである。特に水道がとめられたら我々はペットボトルに頼らざるを得ないし、そんなのは1日で店頭から姿を消すだろう。電力で感染者クラスターが発生すれば運転不能に陥り全産業が停止する。産業活動が停止するということは再起不能を意味する。

 さらに高齢者が多い農業関係者への感染拡大がなかった。感染していれば農産物の供給不足を招く場合もあったし、物流関係者でさえも感染の可能性はあった。現時点では、そこまで感染拡大がされていないのは、少し安堵した次第である。実は、こうした感染者数拡大や他の産業セクターへの影響力は、既に数理モデルで予測されていたのである。

 私は新型コロナウィルスとの関わりが「長期戦だからウィルスと共存できる新しいライフスタイルを」という政府の考え方には少し甘さを感じている。というのも私はウィルスとの共存などあり得ないとする認識だ。たった2週間でよいから全ての日本の活動・移動を止め都市封鎖を行い自宅待機に徹した方が終息は早く確実だったのではないかと考えている。それは2週間であれば十分可能実行でき経済への影響も最小限だったはずだが、ゆるい宣言で2ヶ月という長い時間は、社会的影響の大きい政策でお茶を濁したわけだから、今後もウィルスは随時拡大する可能性を持っている。そのときは、再度警戒宣言が出されるであろう。これで終わりではないのである。

 ウィルスを消滅させるか、私達がウィルスに消滅させられるか、この二者択一とする説(注4)を私は支持しますね。感染症拡大防止モデルの数式の一例を図1に引用しておく。いまはこうしたシミュレーション・モデルで近未来を予測してゆく

表1.感染拡大防止モデルの数値シミュレーション(注5)

 

 

3.政令指定都市を有する県別感染者数累積値の推移

 今の私の理解ではあまり役立つ図ではないが、ブログで毎回アップさせているので政令指定都市を有する16都道府県の感染者数累計値の推移を図1でみてみる。

 ようやく東京の上昇が緩やかになり少し改善傾向、大阪、兵庫、千葉、埼玉、神奈川、愛知、福岡も水平の線形に近く改善傾向がみられる。東京も含め各都道府県全体にわたり改善傾向がみられるというのは初めての出現だ。だがまだ終息が見えているわけではないので、現在の特別警戒宣言自治体は5月31日まで解除されない可能性が高い。それ以外の自治体、図でいえば宮城、新潟、静岡、岡山、熊本は、5月半ばから宣言解除可能だということが図からわかる。

 日本の感染者数が他国と比較して桁違いにすくないとする指摘は、国会で野党から質疑されていた。それはもちろん検査数が少ないからだとする事なのだが、日本の人口(1.2億)1.5万人の感染者に対して、イタリア(人口6,000万人)で22万人の感染者を発生させているから確かにバラツキが大きく、その国会質問には一理ある。仮に検査から漏れていて2週間以内に発症すれば、それは感染者累計値に反映されるから、2週間経過して感染者数に低減が見られなければ漏れているとみてよいが、現在は低減傾向にある。従って日本の感染者数は、実数値に近いと判断している。おそらく島国とする立地が幸いしたと今日時点では判断しておく。

 振り返ると3月24日以降から、各都道府県とも感染者が一気に増加幅が大きくなっている。この要因は前述したように、3月14日にスペインが都市封鎖したのをはじめ、以後フランス、ドイツ、米国、英国と続いた時期である。数理モデルでは3月15日頃ヨーロッパに滞在し感染性の強いヨーロッパ系ウィルスに感染した日本への帰国者が、感染ルートとなっていることをつきとめている。従って潜伏期間をすぎる3月24日以降、日本全国に感染が拡大していったわけである。その頃の図の線形の急上昇は、そうした傾向をよく表している。当初私費で近隣ホテルでの2週間隔離をおこない、以後国は強制隔離に切り替えたが既に対応は遅かった。クルーズ船といいヨーロッパからの帰国者といい、検疫の対応が極めて遅すぎたのである。その結果日本国内に感染が広がってしまった。そこには前例のない事態に遭遇し、突然頭を切り換える能力が必要だが、役人には無理な能力なのだろう。

図1.政令指定都市を有する県別感染者数累計値の推移

 

4.政令指定都市を有する都道府県別1日あたりの退院数/入院数の現状について

 政令指定都市を有する都道府県別現在の1日あたりの退院数/入院数について、過去2週間の推移をみたのが表2である。緑字は値が1以上は、発生数より退院数が大きい。また青字の#DIV/0!はExcel固有の表記で、分母の入院患者発生数が0値であり退院数が大きいことを示している。赤字は欠損値なので無視。以上の集計を右欄に示し、これらの合計値を記入したのが安全日日数である。1週間前の値(5月7日ブログ)と比較すると安全日が増大し、感染拡大は改善されている。特に値の大きい宮城、新潟、静岡、岡山、熊本は、5月半ばで宣言解除とする傾向が読み取れる。また政令指定都市を要する都道府県以外では、茨城県を除けば、すべてが解除の方向に向かうと予測できる。特別警戒宣言都道府県では、京都は退院数8日と最多で発生数0値が登場してきたので、同様に5月半ばで宣言解除をされてもよい状態だが判断は国や自治体がするだろう。その他は5月末まで解除が続くということが、この表から読み取れる。

表2. 1日毎の退院数/発生者数(4月29日-5月11日)

 

5.その他

 12月から中国が感染発症以降、厚生労働省発表データを毎日Excelに取り込んでいた。もちろん単純集計や数理モデル、あるいは気候や湿度などの環境や都市のアイテムが異なる複数データ並べて多変量解析をおこない、環境側の感染発生要因をさぐろうと考えていたからだ。しかしこれは、後日でもできるだろうと考えている。それよりも、マスメディアのよくわからない情報に一喜一憂するぐらいなら、自分で情報を整理した方が理解しやすいからだ。

 それにデータサイエンスの力量を思い知らされた。今は精度がよくなり、論理設定が適切であれば、かなりの精度で予測できるようになってきた。まさにデータサイエンスで救われた思いがする。

 一般にウィルスは気温28°を越えると活動が不活発になってくる。このあたりの相関関係はあるだろうと思っている。ではなぜインドやアジア地域で発生するか。それは暑さ以上に三密空間だからだろう。であれば日本では、いまの3密回避の対策を続ける限り、すぐに第2波がやってくる可能性は少ない。もし第2波があるとすれば気温が下がる秋以降だろう。そのころまだワクチンがどの程度出回っているだろうか。

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

 

注1)ヨハン・キゼック著、山本太郎・門司和彦訳:感染症疫学、昭和堂、2017。ハーバード大学教養課程クラスの教科書であり、感染症の基本的事項について概説している入門書。

注2)横浜市立大学教授大学院データサイエンス科教授:佐藤彰洋、COVID-19情報共有 https://www.fttsus.jp/covinfo/research/

注3)COVID-19情報共有 https://www.fttsus.jp/covinfo/timeseries-discussion/

注4)COVID-19情報共有  https://www.fttsus.jp/covinfo/remarkable-comments/

注5)COVID-19情報共有 https://www.fttsus.jp/covinfo/numerical-simulation/

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番外編433. 新型肺炎感染者数の推移について その8.

2020年05月07日 | analysis

 

 前回のブログ(5月2日)で、感染が納まらない原因を私なりにあきらかにしたので、この問題は2年後ぐらいの終息を目指すほかなすすべがないし、これ以上ブログで書く話題もないが、感染拡大の過程で私が感じた違和感や幾つかの知見をまとめつつ、国内感染状況を付した。

 私の結論は前回のブログ(5月2日)であきらかにしたように、新型コロナウィルスは潜伏期感染をしている可能性があること。現在の検査・隔離は、発症期からの対応である。だから潜伏期からの感染が漏れ広がっているのではないか。そのことを韓国の事例があきらかにした。つまり韓国のシステムは、潜伏期感染に呼応しつつ発症期の感染をも抑えつつ感染初期を制した。だから今日から学校も再開し普段の日常生活に戻っている。今後に多くの示唆を与えてくれる。

 振り返れば昨年末私は、FaceBookで中国武漢の市場から新型ウィルスによる感染者7名が発生したとする記事を読んだ。その後武漢市内に感染が拡散し、着々とウィルス感染は速いスピードで世界中に広がっていった。そのとき潜伏期感染とする中国からの情報がWEBサイトにアップされていたし、そうした認識が私の頭にあった。

 

1)潜伏期感染ではないのか?

 感染が拡大してくると、政府が帰国者センターを設け、 発症後37.5°以上の熱が4日間続いたら連絡をとりPCR検査を受けよとする施策を聞いたとき第1の違和感を感じた。あらっ!、潜伏期感染ではなく発症期感染なのかい?。さらには検査まで4日以上待たされる、もっと悪いことに発症者は自宅待機という大変危険なことを発令した。そんな国の制度や社会が、私の潜伏期感染とする認識とは、真逆の方向へ動き出した。

 

2)拠点は分散してこそ意味があるのではないか?

 第2の違和感は、帰国者センターのように情報拠点を1本化したことである。インターネット社会では、情報拠点が分散されているからこそ大量のデータを同時並行処理ができ、こちらの方が結果として早く、情報共有はインターネットで密に結ばれているから、1つに拠点化する意味を失っているのが現在の一般認識だ。拠点を1つに集約すると、例えば大量の人々の問い合わせが同時期に集中し、電話がつながらないという事態を引き起こすなど、拠点が機能不全に陥ってしまう。その間にも感染者、発症者は感染をひろげつつあるわけだから、急ぐときに拠点化する意味は全くない。

 

3)当初検査体制はあまりにも貧弱だった。

 第3の違和感は、当初PCR検査は国立感染症研究所でのみ検査ができ、検査可能な数量は大変少なかったと記憶している。横浜港クルーズ船のように結果が出るまで2〜4日位の日数がかかったのである。検査は急ぐべきなのに、随分と時間がかかるなと思われた。

 

4)診療所こそが最大の防衛線だったのではないか? 

第4の違和感は、私達の身近な医者の大元である日本医師会が感染の講習も設備もなく及び腰であったことだ。つまり感染に対する研修も受けておらず設備もないというお粗末さだった。実はこうした町の診療所が感染防止の多数の拠点になり得るのではないか。

 

5)布製マスクに効果があるのか?

 第5の違和感は、政府が布製マスクを全国民に配布したことだ(私の手元には届いていない)。ウィルスが相手ならば、粒子の小さな布製マスクは体内侵入をゆるしてしまうだろう。それ以外のマスク、例えば防塵用マスクも塵の粒子がウィルスより大きいので効果はない。つまりサージカルマスクでなければ対ウィルス効果はないというのが私の認識だ。というのも感染発症者が普段からマスクを着用していたとする記述を自治体の感染者情報のサイトでよくみかけたからだ。多分抗ウィルスマスクではなかったのだろう。

 

じゃあどうすればよかったのか。

 

1)診療所こそが検査の拠点

 先ず最初に政府がやることは、日本医師会と連携し、かかりつけ医の感染症研修と診療所設備の模様替えであり、そのための費用を補助することだ。次いで検査期間の短い検査キットを全国の医師達に配布することだった。その準備に2週間程度の時間がかかろうとも、その時点ではまだ感染者数は韓国以下の値だったのである(値が逆転するのは4月20日)。急げば十分実現できた。そうした検査態勢を整え、かかりつけ医のもとで、感染の疑いのある人間を次々と検査して抽出してゆけばよい。厚生労働省の医療施設動態調査(2018年)では、全国の診療所数101,505件(歯科を除く)と記載されている。この10万件の診療所が同時に検査にあたれば、1診療所で5件/日と想定しても、50万件/日のPCR検査が実施できたのである。それは現在の検査能力をはるかにしのぐことになる。診療所こそが感染期からの対応拠点なのだ。

 実際韓国では、診療所で500人/日の感染者を毎日発掘していったのである。感染の疑いを申しでれば有料で検査すればよいだけの話である。これを日本が2月末迄頃から実施していれば、韓国より早い時期に感染の終息をみたことはデータから理解できるし、十分時間があったわけである。日本は事前の準備がなく、大いに出遅れたのだ。

 

2)政府・自治体は文科系の方法ではなく数理モデルで予測し対応する

 現象が起きてから問題点をみつけ、それから協議して対策をこうずる過程を順々にふんでゆく文科系の方法は時間がかかりすぎ、速度感ある対応が不可欠な感染症対策では何の役にも立たない。やはり近未来の現象を数理モデルで予測し、準備する時間を算出し行動すべきだ。今はそんな文科系国家のおかげて全てが後手に回っていたので、ようやく数理モデルで緊急事態宣言を出す頃には、最後の手段という性格が濃厚だった。

 いくら医療従事者達にエールを贈ろうと、防護服は洗濯して使い回しで、N95もないという医療現場は、既に相当疲弊しているにもかかわらず、それでも頑張れというのは、武器はないが竹槍で頑張れと、いうのと一緒であり、第二次世界大戦中の町にあふれた標語(欲しがりません勝つまでは)のようでもあり、背筋が寒くなる思いがする。

 

3)抗ウィルスマスクは効果があるだろうけど・・・

 第5の違和感のマスクによるウィルス防御だが、鳥取県のモチガセが製造販売しているバリエールのマスクが有効。バリエールには医療従事者が着用するN95があるが、これは呼吸がしにくいので私達が日常使うのには難がある。そこで同社から少しグレードは落ちるが抗ウィルス用バリエールというサージカルマスクが発売されている。政府が国民全員に配布するなら、これでしよう。

 だが効果があることはわかるが、町のなかでは、通常のマスクすら手に入らない現象が起きている。家電メーカーが量産しているにもかかわらず、絶対量が足りないのか、買いしめているのか、手に入らない原因は不明である。そんな面倒な社会ならば、こちらは手作りでいいんじゃない!、という意見に1票いれる。祗園でもご贔屓筋に配布する手ぬぐいでマスクを手作りしている。既製品マスク離れである。実にお寒い流通機構だ。そのうち余って大量に出てくるのだろうけど、そのときは国民の意識が変化しているのだから遅いぜ。

 

4)重大局面で政府・官僚機構がいつも後手になるのは歴史の必然

 振り返れば、福島原発の事故でも、全てが後手に回り遅れに遅れ甚大な被害をだした。阪神大震災では、大災害を官邸が認識したのは12時間後であった。第二次世界大戦では米国に送った宣戦布告の翻訳が遅れ、真珠湾攻撃後にそれが米国に伝わったのである。大きな出来事が起きれば、常に遅れに遅れて予想外の結果となったのが日本政府や官僚達の歴史なのである。重要な場面で何故日本政府や官僚機構は、遅れるのか、それをいつも繰り返すのか、それは日本政府と官僚達の悪しき伝統的気質とさえ思われる。だからトップが交代しても何も変わらない。

 

1.政令指定都市を有する県別感染者数の推移

 図1で感染者数累計値の推移をみれば、前回と大きな傾向の相違はみられない。つまり感染が蔓延している構造に変化はないが各自治体によって少しバラツキがみられる。さらに今後に期待できるのは、ウィルスは気温28°以上で活動が低減する。だから7月〜9月が唯一の外出期間なのか。それが終わればワクチンが国民に浸透するまでは、再び感染蔓延状況下に戻るのだろうか。

 図1は、16の都道府県の感染者数累積値の推移をみたが、二桁代が北海道、東京、神奈川、大阪であり、今後も緊急事態宣言が継続される自治体だろう。

 それにしても東京の感染拡大が収まらない。朝日新聞5月6日朝刊でみると、感染者数累積値が最大値順に、世田谷区415人、新宿区336人、港区289人、杉並区215人、大田区197人と続く。都心の千代田区は31人と低い。風俗街がある新宿区が多いのはわかるが、住宅の多い世田谷区が何故最大値なのか。地元情報を聞くと、広域商店街は他所から来たビジターも含め人出があるようだ。戸越銀座、三軒茶屋、玉川、神楽坂・・・。つまり広域商店街には、品揃えが充実した広域集客食品スーパーがある。そうなると広域商店街等が今の感染源になっている可能性も考えられるのだが、はたして実態はどうなのだろうか。さらには新宿区のメディカルセンターで30人の院内感染発生したとする情報もある。難儀な東京である。

 他方で1週間前から0値または低値推移が続くのが、宮城、新潟、静岡、岡山、熊本であり、緊急事態宣言を解除してもよい自治体である。実際には、基本再生数が1以下であれば宣言解除になるだろう。その他の自治体は、今後2週間以上新規患者数が低値で推移し、基本再生産数が1以下になれば、これらも宣言対象外になってくる可能性はあるのだろう。それが愛知、京都、広島である。その他はこれまでの実績からするとしばらくは宣言下が予想される。もちろん実際には、専門家達がそのあたりを数理モデルで試算し判断するでしょう。その感染症流行の抑止条件は・・・

(1-p)R0<1→p<1-1/R0  R0:基本再生産数、p:予防接種率

予防接種率は0だが、抗体のある人間の数をpとして算入するのか・・、だがそんな情報があるのか。だからexcelで組むのは放置したままになっている。

 

2.退院数と発生数の比

 16都道府県別に直近2週間の、1日退院数と1日発生数を比較してみた。値が1以上であれば退院数≧発生数であり緑で示した。また#DIV/0!は、分母の発生数が0値のためのexcel固有表記であり、これも退院数>発生数の関係をみたしている。そこでこの2つを合算した値を安全日と称し合計値を右欄に示した。また1未満であれば退院数<発生数となり黒字で示し非安全日の自治体である。尚赤字は元データの欠損値である。

 合計値をみると安全日2日以下と5日以上とに二分されている。安全日2日以下は、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫が該当し、それ以外は安全日5日以上である。

 さらに直近2週間の1/2の7日以上安全日がある自治体は、宮城、新潟、京都、広島、岡山、熊本の6自治体である。14日頃に政府の緊急事態宣言の見直しがあるので、このような推移を続けてゆけば宣言解除の自治体となる。東京などとともに特別宣言指定をうけている京都は、14日時で制限を解除される可能性があるのではなかろうか。

 

3.その他

 最近ニュース報道をみたら武漢型ウィルスから今はヨーロッパ型ウィルスが蔓延しているとする報道を聞いた。はてそんなタイプ分けをするほどウイルスの特性がわかってきたのだろうか。もちろんそれらの型の定義は報道されていないから、メディアの報道は、そんな風説ばかりだ。だから公開された情報を自分で集計し考察し、幸いにも結論をえた。そしてこの程度の単純構造(都市計画の立場からみればだが)だと、今後新しい構造なり知見が生まれるとは考えられない。

 だから8回続けた新型コロナウィルスに関する記述も、これ以上私が語る必要がないので終わりとする。しばらくは、荒唐無稽な官能小説の執筆で、ステイ・ホームしていようと思う。

 

バリエール抗ウイルスマスク 左側が医療関係者の使用しているN95、私は通常右側を使用している。

 

京都市清水寺

SONYα6600、SEL3.5-5.6/18-135mm

ISO640,焦点距離78mm,露出補正-0.7,f/5.6,1/125

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番外編432. 新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数の推移について その7.日本と韓国の比較考察

2020年05月02日 | analysis

 

 都市計画・設計の研究教育をしてきた立場から、新型コロナウィルスの感染に関して厚生労働省が公開しているデータを用いて考察してみた。というのも都市の分野では、都市の人間行動を集団として扱いデータ処理し構造化してゆく方法がある。新型コロナウィルス感染も都市や人間行動と密接に関わり、集団としての様相を呈している点で類似性が高いからだ。

 新型コロナウィルス感染の緊急事態宣言4週間目にはいり、厚生労働省から、当初80%の人と人との接触をさける行動についての指針がだされ、これまでの第3回成果報告がなされた(1)。第3回調査では412()-13()で調査され、全国値50.88%、東京59.57%、大阪52.32%、最大値は東京、最小値は鳥取県の38.22%となっている。感染者数が多い都市ほど人と人との接触を避けようと行動していることはわかるが目標値の80%に遠く及ばない。

 緊急事態宣言は56日迄であり、多くの店が6日以降の開店を予定している掲示を見かける。本当に6日に解除されるのだろうか。厚労省のデータを見る限りにおいては、今日時点で無理であるといわざるを得ないし、むしろ1ヶ月以上延長される可能性があることを示しているデータだ。

 そこで、私なりに厚労省発表データを検討しながら、考察した。以下の1章では政令指定都市を抱える都道府県の感染者数累積値の推移、1日ごとの新規発生感染者数の推移を示した。2章では、過去に感染症蔓延の経験がある韓国と日本との比較をおこなった。3章では、何故感染が納まらないかについて考察した。

 

1.政令指定都市の時系列感染者数累計値の推移

  表1に、緊急事態宣言開始時からの新規感染者数推移を、政令指定都市を有する都道府県ごとにまとめた。430日時点で3タイプに分けられる。タイプ1の二桁代は、北海道(38)、埼玉(15)、東京(47)、神奈川(27)、大阪(44)、福岡(20)である。タイプ2は、宣言の期間中高い値を示してきたのが低値に落ち着きつつあるタイプで、千葉、愛知、兵庫、である。タイプ3は、安定して低値で推移しているのが、宮城、新潟、静岡、京都、広島、岡山、熊本である。

 以上のことから、タイプ1は宣言継続。タイプ2は期間短縮で宣言継続、タイプ3は宣言解除、と都道府県によって政策が異なる可能性があると考えた。他方で各都道府県が民間ホテルを借り上げているとする法的事情があれば、すべて宣言継続の可能性もある。そんな例は、例えば東京や沖縄等多数に及ぶ。

 従って宣言が全国一律に延長される場合と、地域によって宣言継続の有無が別れる場合、さらには全国一律に宣言解除は、本日時点のデータや前述の報告を合わせて考察すると、今日時点で解除は考えられないと私は判断した。

 図1で、そうした政令指定都市を抱える都道府県の感染者数推移を図化した。直近では比較的勾配が緩いところも目立つが、解除までゆくかどうかは、疑問を感じるというのが本日時点での判断だ。

追伸:政府は緊急事態宣言の1ヶ月延長を表明した。(5月1日)

表1. 1日あたりの新規感染者数推移(単位:人)

図1. 政令指定都市別新型コロナウイルス感染症の陽性患者数累計の推移(単位:人)

 

2.日本と韓国の感染者数の推移について

 G7各国と中国の感染者数の国際比較は、推移の線形が前回のブログでアップしたものと変わらないので割愛する。そのかわりに、過去に大規模感染を経験した韓国、そして日本との、今回の感染者数累計値の推移比較をしたのが表1である。

 表1では、1月下旬の感染者数累計値は、日本が124日以降、1,4,4,7,9,12人・・・と続き、韓国は、2,4,4,4,7人・・・と続き、感染初期は日本と同様の推移をしてきた。それが顕著に変わるのは、221104人、251,146人と急激に増大している(22-24日は厚労省のデータ不在)。感染者がいきなり増大していることは、その倍以上の検査ができる体制があったわけであり、次々と感染者やそのルートを発見していったものとみられる。

 その結果直近の値(429)でみると、日本236人増、韓国4人増と歴然とした差がでてきた。日本は69ヶ月経過してもまだ終息していないが、韓国は69ヶ月で終息している。しかも緊急事態宣言といった都市や人間との行動を抑制せずに社会的影響を最小限に留めて成し遂げているところは、私達に知見を提供している。

 図2では、韓国は感染初期に大規模な検査態勢を設け1日当たりの新規患者数は急増したが、以後大きく低減し終息に向かってる。これに対して対照的なのが日本であり、欧米諸国同様に都市の活動を抑制しつつ対応してきたが、新規患者の増大、ピーク、低減という複数の山が、連続しつつ、次第に低減して終息を目指そうとはしている。韓国と日本のデータは実に対照的な推移の様相を示している。韓国と日本の感染者推移には、こうした顕著な推移の違いが見られる。こうした推移を概念的に示したのが図3である。

 そうした韓国のコロナウィルスへの対応方法をWEBの記述(2)から以下に引用しておく。

 

「■韓国は新型コロナの大流行にどう対応してきたのか  

 韓国では、感染が拡大した都市を封鎖する中国の方式を採用せず、情報の開示、国民の参加、検査の拡大という形で取り組んできた。ウイルス感染が確認された各患者の接触相手を調べ、その関係者に検査の機会を提供したのだ。政府当局は、感染者の過去14日間の動きを、クレジットカードの利用履歴や監視カメラの映像、携帯電話のデータなどから割り出し、それを政府の公式ウェブサイトに掲載している。また、新たな感染者の出現時には、その地域に居住あるいは働いている人々に警告メッセージを送付する。こうしたやり方をめぐってはプライバシーの問題が指摘されているが、それでも希望する個人に検査へのアクセスを提供することを可能にしている。検査費用は約16万ウォン(約14000円)。ただ、感染の疑いのある個人(感染が確認された患者との接触がある人)は無料で受けられる。

 さらに図2は、韓国と日本の1日あたりの新規感染者数推移である。オレンジが韓国、青が日本のヒストグラムである。日本と韓国とで差異があることがわかるだろう。最初に数多くの検査を実施し感染者を数多く発掘してきたので患者数は急増してきた。その後患者数は日毎に低減し、現在では日常の生活に戻っている。そうした状況をこのヒストグラムがよく示している。それによって医療負担が過度になることなく時間の経過ともに終息への過程につながってきた。それは日本とは真逆の推移傾向である。

どうやって大人数を検査したのか

 韓国では1日に15000件以上の検査が可能となっており、11日時点での実施件数は22万件に上る。指定のクリニックは500か所を超え、それには患者と医療従事者との接触を最小限に抑えるドライブスルーの施設40か所も含まれる。」

 韓国は、積極的にPCR検査をおこない、感染者を発掘してゆき、そうした情報を積極的にWEBサイトで公開してきたのである。そして囲い込みと同時に感染に懸念がある人達のPCR検査を積極的におこなってきた。」

 

表2. 日韓の感染者数累積値の比較(単位:人)

図2.日本と韓国の1日当たりの新規患者数の推移(単位:人)

図3.日本と韓国の感染者数推移の概念

 

3.新型コロナウイルスの感染構造について

 韓国が何故感染の終息ができたかということは、新型ウィルスのとらえ方、検査・隔離時期などが、日本とは異なっていたからだと推測する。図4は、そうした構造の違いを仮説モデルとして示した。感染量とは、人間の体内に蓄積されたウィルス量の概念である。

 有症潜伏期重複型は、最初の患者の有症状態と第2の感染者の潜伏期とが重なる構造となり、有症状態の感染者を次々と隔離してゆけばよい。現在の日本の感染者発掘・隔離の体制もこれに従っている。だがこれは過去の伝染病の対応方法を敷衍しているだけだろう

 これに対して有症潜伏期乖離型は、最初の患者の有症期と第2の患者の潜伏期とがズレていると仮定すれば、その背後には患者の感染量の時期が左側にずれており、潜伏期から感染を開始していることになる。空港での防疫で無症状感染者を発見しているというのは、こうした構造が考えられるからだ。図でAと示した範囲の感染は、感染量が潜伏期にかかっているのだから、検査・隔離はしておらず、実はこのAのところから感染者が漏れ出し拡大していったとする構造である。

 そうであれば、韓国がその流れ出した部分を、多大な検査量、インターネット活用による情報公開といった方法で、感染者の疑いがある人間達の発掘をしていったのではないかと考えられる。つまり未検査未隔離の隙間の期間を埋めていった可能性が考えられる。こうした漏れたAの部分を埋めなければ感染はいつまで経っても納まらないことになる。従って韓国の新型コロナウィルスの感染対策が効果をあげた背景には、ウィルス自体が潜伏期からの感染可能性を持ち、そのため近所の診療所で検査が受けられるといったシステムなどによって感染リスクを低減し、インターネットで情報の受発信(注5)、といった幾つかの方法がAの部分を埋めていったと考えられる。そうであれば韓国の対応から、学ぶべき知見は多そうだ。

図4.感染構造の仮説モデル

(4月30日記)

 

1)「第4回「新型コロナ対策のための全国調査」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11109.html

2)AFP BB news

https://www.afpbb.com/articles/-/3273107

注3)日本ではプライバシーに触れるという理由から、どこで感染したかとする情報を市名以外は公開しない。私達国民が知りたいのは、誰がではなく、どこで(例えば具体的な店名、感染者がいた日時)感染者が発生したかという情報だけで十分である。それによって感染者と同時刻に同場所にいた可能性があるとする申し出は多々あった。いみじくも日本の首相の詭弁(注4)に代表されるように、保健所に相談したが濃厚接触者ではないので検査を断られたという。国民が知りたかったのは、そうした情報であり、国民の懸念を拾い上げる事は、新たな感染ルートの発掘につながる可能性もあったと考えられるが、政府・保健所はそうした好機を逸した。

注4)4月下旬のNHKニュースによれば、「PCR検査を陰性承認の書類として使って欲しくないですね」と首相は発言した。しかしそれは、政府が情報発信をしないので町から得た情報をもとに、感染者と同時刻、同場所にいたとする懸念材料があるから検査を希望したというのが国民の真意であって、感染リスクの高い保健所にわざわざでかけるほど無知な国民はいないと思いますが・・・。こうした政府・自治体の不適切な対応で逃した感染者も存在すると考えている。韓国では非濃厚接触者は有料で、全国500カ所の診療所で検査できた。

注5)かねてより日本政府の情報受発信は下手くそである。そればかりか民間企業に委託して公に個人が特定できなければよしとして位置情報を多活用している。しかしそれは、知ろうと思えば個人を特定できる情報であり、こちらは戦前の特攻警察のような管理をされているイメージもある。そうした管理情報の受信はするが、国民の些細な懸念材料には関心がないようだ。自治体の相談係は、助言はするが国民の懸念材料をすいあげ情報化しているのだろうか。やはり政府や自治体がインターネット・サイトを設け国民参加のフェーズがあるべきだろう。政府が国民の情報受信といえばFBやツイッターからというのでは、お寒い限りだ。

 

京都市東山区

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番外編431. 新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数推移について その6.

2020年04月29日 | analysis

 

 このブログで使用している新型コロナウィルス感染者数の定義は、PCR検査棟等による陽性確定数(症状有無確認中)であり、厚生労働省の定義に従っている。従って重傷・軽症を含む陽性患者数を感染者数とし、その累積値を時系列で図示したのが図1であり、グラフの線形は右肩上がりか水平だけであり、論理的に右肩下がりにはならない。そこで実数値の推移をみるものとして入院数についてみたのが図2である。さらに世界の感染者数推移をみたのが図3である。さらに4月7日以降の日本と世界の1日単位の新規感染者数推移をまとめたのが表1である。これらを用いて日本の緊急事態宣言3週間目の新型コロナウィルス(COVID-19)の状況をみてみた。

 

1.政令指定都市の時系列感染者数累計値の推移

 図1で時系列感染者数累計値をみた。この図からみられる結論ははっきりしている。緊急事態宣言後も感染者数は一定の割合で増加しており、オーバーシュートは防いでいるのが唯一の効果。しかも終息への出口がみえる可能性は少なく、いまだに私達は蔓延期のまっただなかにいる。直近の感染者数は最大値側から、東京(3961人)、大阪(1523人)、神奈川(963人)、埼玉(823人)、千葉(793人)、北海道(650人)と続きいずれも増加傾向だが、増加幅は小さくなってきている。今回の新しい現象として、増加傾向ではあるが直近の値が低減している自治体が複数出現している。これがあと数日続けば宣言の効果だと言い切れるだろうが、現時点では一時的現象にすぎない。感染者の潜伏期間は、最大2週間だが、実際には数日程度と認識している。であれば、宣言期間内に感染しているケースも相当数存在している。その理由はわからないが、人との接触8割減は達成されていないとみられる。当然効果が出るのが遅いといわざるを得ない。そうなると宣言延長の可能性もありえる。ただし自治体によってバラツキがあるので、宣言を受ける、受けない、とする自治体もでてくるだろう。

図1. 政令指定都市別新型コロナウイルス感染症の陽性患者数累計の推移(単位人)

 

2.政令指定都市の現在入院数の推移

 図2で見るとおり一定の割合で直線的に右肩上がりの増加を続けてきたが直近になって増加傾向が緩んでいる。ここが今回の新しい傾向だ。直近の値からみると最大値側から東京(3883人)、大阪(1231人)、神奈川(816人)、埼玉(765人)、千葉(672人)、兵庫(527人)の順である。さらに広島(128,-1人)と低減しており、感染拡大が押さえらつつある可能性をうかがわせている。こうした傾向があと数日続けば感染拡大の出口が見えてくるだろうと推測する。また都市間にばらつきが見られるということは、やはり宣言解除は都市ごとになされる可能性が高い。だが、そうすると解除された都市に人々が移動し、そこからさらなる感染を拡大させる可能性が出てくることも考えられる。こうした人間の行動予測が難しいところだろう。

図2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移グラフ(単位人)

 

3.世界の感染者数(累積)の推移

 全体的な大きな傾向は、前回と変わらない。米国が突出して線形の増加をし、ついでEC諸国が値は低いながらも線形増加である。さらに低値なのがカナダ日本となる。海外では、日本より一ヶ月早く、そして厳しい都市封鎖をしてきたが、その結果オーバーシュートは防いでいるが、それ以外の効果が見られない推移である。だがドイツの値が直近になって低減しだした。この傾向が続くと、終息への入り口が見え始めるだろうが、これについてはあと1週間後をみないとわからない。

図3. G7国家+中国の新型肺炎患者数(累積)の推移図(単位人)

 

4.新規感染者数推移の日本と韓国の比較

 感染者数推移の累計値を当該日から前日日の値を減算すれば、当該日の感染者数になる。そこで表1で日本の宣言期間時の新規に発生してきた感染者数推移の国際比較をしたのが表1である。人口1万人単位で指標化してあるので比較することが可能だ。期間の前期から後期にいたり、日本は低減傾向への推移が見られ、海外は中国を除けば、各国とも低減方向へ推移しているもののバラツキがみられる。そうした差が何に起因するかは、ここではわからなかった。また各国の統計の取り方の違いもあることは申し添えておく。

表1,人口1万人あたりの新規感染者発生数推移(単位人)

 

4.いくつかの問題点の指摘

 海外の感染者数が我が国より長い期間、そして厳しい都市封鎖をしているにも関わらず低減しないし、低減したとしてもその速度は遅い。私は都市計画・建築が専門だから、ある種専門外の見方である。ただ都市計画に関わってきたから、都市を集団で解析する手法は理解できる。そんな立場から4つの素朴な疑問点をあげておこう。

1)PCRの国民全数検査

 よく話題にされる全数検査だが、今後短期間に国民全員検査をおこなうことができれば感染者数はさらに増え、感染者全員を隔離できる施設があれば感染は直ちに止まるだろう。要はそれが今の日本の社会で可能ですか?、ということだ。

 日本のPCR検査数は、厚生労働省のHPで公開されており、1月15日〜4月21日までの検査人数累積値は107,430人であり、この10.3%が陽性者だと記載されている。この値を踏まえると全数検査による陽性感染者数は12,000,000人と算出できる。それをすべて検査し隔離し治療することできるのか?。大づかみに試算してみる。

 検査技師を育成するのに2年程度の時間が必要であり、人間の能力は簡単に促成できない。さらに現在の全病院の医療施設のベッド数約18万(注1)、全てのホテル・旅館の客室数が160万室(注2)、その他の宿泊施設を加えても最大200万室以下。つまり、新たに発生する1.2千万人の陽性者を全員隔離し治療することはできない。つまり全員検査・隔離は、現在の日本では不可能という結論になる。従って効果のあるワクチンの登場を待つほかないのが現状である。お寒い日本の現実がある。

 既にこのブログでも書いたが、PCR検査の的中率は70%とする自衛隊中央病院の医療レポートもあり精度は高くない。さらに検査を受けた人間が検査後に感染したら、複数回の検査が必要になる。したがってアメリカで実施しようしている抗体検査が有力視されている。これによって抗体のある人間が除かれる。その割合は日本ではわからない。

 現在、検査は、国立感染症研究所。検疫所、地方衛生研究所・保健所、民間検査会社、大学、医療機関でおこなわれている。

2)潜伏期間感染について

 感染症疫学の分野では、感染した瞬間から症状が現れるまでの期間を潜伏期間という。新型肺炎は、これまでの肺炎から類推すれば、そうした潜伏期間の感染は低いだろうというのがこれまでの見方である。だが潜伏期であっても感染したとする報告が中国であげられ、また日本でも無症状病原体保有者の発生が検疫で報告(注3)されている。 

 もし潜伏期間内で感染したとすれば、症状を発症した後で患者を隔離する現在のシステムでは、感染を食い止められない。つまり日本の防疫体制はすべて無効となる。感染者数推移の値が低減しないのも、こうした潜伏期感染があるのではなかろうか。それが社会的に多数いことは予想できるし、実際に潜伏期間中に感染させている可能性だってありえる。ただそれをどうやって抽出するかは、行政も本人自身もわからない。だから防疫手段は、唯一全員マスクなのである。それしか防御方法がないのも現実である。

 そのマスクもおそらく業務用に備蓄されている可能性がうかがえるので、生産量を増やしている割には一般の流通ルートにのらないし、それでは私達の手元に届かない。もちろんアベノマスクなど届く気配もなく、こちらはバリエールのマスクで防御している。

3)ウィルス変容

 ヨーロッパの感染者数推移をみていると、都市封鎖時期が我が国より早いにもかかわら感染数が多くあまり低減していない。そうした要因を考えると、ウィルス変容を疑わざるを得ない。それはウィルス自体が感染過程で構造を変えてゆくことを意味している。感染者数の増加や死者数の増加が顕著であれば、ウィルス変容の可能性もあるのではなかろうか。そうなると、これまでの防疫や治療体制だけでは対応できない。だから変容する前に早期に感染蔓延を終息に向かわせるべきだろう。感染に関する行動は、すべて急ぐのである。

4)日本は何故遅すぎたのか?

 WHOが3月12日にパンデミック宣言をだし、直ちにヨーロッパ諸国が都市封鎖を開始した。海外の動向を見ていた専門家ならば数理モデルで我が国の感染状況の予測は見えていたはずである。そうした数理モデルを用いれば、保健所や医療施設がどれぐらい機能不全になるかもわかっていたはずである。今の数理モデルはかなりの精度で予測できるようになってきた。だから緊急事態宣言が最初に出された7都府県は数理モデルで感染拡大が予測されていたわけであり、実際そのとおりになっている。

 我が国が都市封鎖より緩い緊急事態宣言を発令したのは、WHOの宣言より1ヶ月近く遅い4月7日であった。G7国のなかでは、初動期対応で致命的に遅れていた。遅れたということは、経済の停滞が長期間に及び回復さもさらに長い時間を要する道を日本が選んだということになる。だれもそんなことは望んでいないが、結果はそうなっている。その要因は科学上の知見を素早く活用し、数字で物事を探ろうとする政治や自治体ではなかったこと、つまり文科系組織だったことに起因する。

 そんな文科系管理者達の科学認識が欠落していたといってもよいだろう。感染症は、最初に科学の認識と知見と方法と行動を用いて速度を持って蔓延を阻止してゆくことが必要であることは最初からわかっていた。それが速やかな実行に移せず緊急時という認識を忘れ制度にしがみつく文科系ガバナンスに遅すぎた要因がありそうだ。そして日本は、まさに油断していたわけである。そして同じ過ちをまたやってしまった・・、あの1973年のオイルショックの時と同じように、街からマスクや消毒薬やトイレットペーパーまでが消えていたのだ。数理モデルという科学で物事を追求しない文科系国家は、忘れやすく懲りない連中達だと、いつも思う。

 

データ依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国外の発生状況、2020年1月29日〜4月27日 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html

(注1)厚生労働省:医療施設動態調査(H30年末)

(注2)厚生労働省調べ:観光経済新聞,2018年11月17日

(注3)厚生労働省:新型コロナウイルスに関連した無症状病原体保有者(*)の発生について

京都市東山

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番外編429. 新型肺炎感染者数の推移について、その5. 緊急事態宣言2週間後の状況について

2020年04月22日 | analysis

 

 新型肺炎の緊急事態宣言がウィルス潜伏期間の2週間をすぎた。これによってどのような効果がでたのか、について政令指定都市がある県別の感染者数累計の推移、同入院患者数の推移、世界の感染者数の推移、日本と世界との比較の4視点を厚生労働省のデータでみてみよう。

 

1.日本の感染者数累計値の推移

 最初に全体の推移をみとみよう。政令都市意都市を有する県別感染者数累計値を図1で示した。全ての自治体は増加傾向であり、東京、大阪、神奈川の順に並ぶ。大阪や神奈川が宣言がなされなければ、東京のような線形になることが推測できる。それが押さえられているとみれば、緊急事態宣言の効果だと思われる。

 特に京都を境に上下に線形の形が異なる。上は順次増加する傾向であり、都市の中に感染が蔓延している状況だろう。下は推移が横ばい傾向であり、感染クラスターが囲い込まれているとする違いあるとみられる。そうした囲い込みも次第に、上の線形に近づいてゆく。つまり感染ルート不明の感染者が増大し都市の中に感染が蔓延してくるとする変容過程があるのだろう。上を蔓延型、下を拡大型と呼んでおこう。

 次に緊急事態宣言が発令された4月7日以降の、感染者数累計値の前日比を表1で示した。特に110%を超える値は赤字で示した。4月7日頃は赤字の自治体が多かったが、2週間の経過で多くの自治体が100〜106%代にあり収斂し、値も減少していることがわかる。そのことは緊急事態宣言の効果だといえる。また現在では100%以下の自治体が見当たらないから、終息にむかっているわけではない。また各自治体によって値にバラツキがあるために、警戒宣言解除を全国一律に行うべきかどうかは検討を要するだろう。

図1.政令指定都市別新型コロナウイルス感染症の陽性患者数累計の推移(単位人)

 

表1.政令指定都市がある県別新型コロナウイルス感染症の累計患者数の推移(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)

 

2.日本入院患者数の推移

 前述の図1は累積値だから、図の線形が右肩下がりになることは論理的にあり得ない。感染者数が維持または低減すれば線形は水辺になる。そこで低減傾向が示せる入院患者数推移をみたのが図2である。京都府を除けば、初期に緊急事態宣言を受け入れた自治体は、いずれも増加している。入院期間の長期化が背後にあるのだろうか。

図2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移グラフ

 

3.世界の感染者数(累積)の推移

 G7国家を中心に感染者数の推移をみたのが図3.であり、前日比をみたのが表2である。これらを用いて世界の感染状況についてみてみよう。

 米国の増加が止まらない点は、2週間前と同様である。ここで2つの見方があることを指摘しておきたい。1つはもちろん感染蔓延の傾向である。2つはPCR検査による陽性患者発見数でもある。クラスターという概念は感染拡大期の考え方であり、蔓延期で適用できる考え方ではない。EC諸国をみると米国ほどの急激な増大ではないが、やはり感染患者数が大きく増加している蔓延傾向であることに変わりない。ただし表2の前日比でみると、4月初期と比較すれば値自体は低値に向かっている。このことが都市封鎖解除の検討がなされていることを裏付けているのだろう。また中国は唯一100%以下なので、感染が終息に向かっていることがわかる。

 その中国の感染者数推移だが、2月10日40,171人(128%増)、同14日63,851人(142.99%増)人、17日(110%増)、18日72,436人(102.67%増)と1週間で、グラフの線形がいきなり水平に向かうというのは異質だと思われる。解析者の経験でみれば、7万人規模の感染者が1週間程度でこれほど大きく低減するのだろうかと疑問がわく。本来ならばもう少し緩やかな曲線で低減してゆくはずだが、この変化は極端だ。こうしたことが、中国政府の情報操作、武漢感染症研究所の暴露、独自のワクチンを持っているのではないか、武漢は本当に終息したのか・・・、といった様々な憶測を生み出す元凶となっている。感染拡大の当事国は、理解できない疑問を世界に投げている。

図3. G7国家+中国の新型肺炎患者数(累積)の推移図

表2. G7国家+中国の新型肺炎患者数(累積)の推移図

 

4.人口1000人当たりの感染者数の日本と世界の比較

 各都市及び国は、人口規模が大きくことなるので平準化する必要がある。そのために人口1万人あたりの感染者数を算出したのが、表3である。最大値から、スペイン、フランス、米国、英国の順となり、いずれも20人/10,00を超えている。他方で中国が0.594人/10,000人と低値で、0.594という値は感染が終息にむかっていることを伺わせている。

 日本の政令指定都市県をみると欧米ほどに値が高いわけではない。それは感染規模が欧米諸国とは桁違いに小さかったといえよう。それは小さい規模で、感染爆発もよく押さえられてきたということがわかる。

 人口千人辺りの感染者数が、100%以下になることが感染が終息向かう兆候である。今の日本の状態では、感染数は低値になりつつあるが、拡大傾向の中にいることに変わりがない。仮に宣言効果がなけば、宣言の一ヶ月程度の延長や、解除後の再度の宣言の発令もありえるだろう。だからあと2週間の過ごし方が意味をもってくることになりそうだ。あと2週間じっと我慢して生活や経済などを素早く復旧させてゆくか、もう経営的に我慢ができないから店をあけた結果、感染者が増えて再度閉鎖に追い込まれる事態になるか、どちらの道を進むかは日本人全体の選択枝の問題である。私なら人との接触8割減を目指して前者を選択しますね。感染規模が欧米と比較して低値ですんだことを鑑みれば、それだけ早く回復できる可能性が日本は高いと思います。

表3. 人口千人あたりの感染者数世界比較

 

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国外の発生状況、2020年1月29日〜4月20日 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html 

 

京都市東山区

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番外編427. 新型肺炎、京都府の事情 その4.

2020年04月12日 | analysis

 

 一昨日の報道では、京都府が緊急事態宣言を国に要請していた。一番わからないのが感染経路不明者が8割といるする報道だが、サーベリングできない理由があきらかにされていない。おそらく近県、他県からの観光者か学生の拡大ルートだとは推測できるが、論拠不明である。

 そこで、手元のデータで考察してみた。

 表1は、これまでこのブログでも発表してきた、厚生労働省がまとめているデータに基づき、政令指定都市別感染者数累計値の当該日:当該日の前日、とを増減率で示したものである。ここで私は2つの指標を設けた、感染患者数累計値が200人以上の自治体、増減率が110%を越える感染者数、とである。この2つの基準を超えているものを赤字で示した。

 先ず感染患者数累積値が200人以上こえている自治体が、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の8都道府県。200人というラインは、データから見て下位と数値上のひらきの差が現時点で大きいと判断した。

 次いで今日4月6日〜8日の3日間で、感染者数累計値増減率が110%を越えている自治体が、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、京都、大阪、兵庫、広島、岡山、福岡の12都府県。これも110%というラインの前後の値のひらきから判断し、このあたりで2群にデータがわけられるという理由で設定したものである。いずれのラインも本日時点でのラインであり固定的なものではない。

 以上2つの基準を満たす自治体が、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪の4都府県となる。もちろんこれは国の仕分ける基準が報道されていないので、あくまでこのブログ上の仕分けである。実際には、現在7都府県が緊急警戒宣言都市に指定されている。京都市は感染者数が今日時点で200人以下だが、これを越すと国の警戒宣言に該当してくる可能性が高くなる。

 つまり京都府は要警戒都市ではある。また増減率でみると110%以下の日が続いている愛知県も同様である。京都府は感染患者累積値で基準以下、増減率で基準値以上。この傾向が逆なのが愛知県で、感染患者数で基準値超え、増減率で基準値以下、となる。したがって、どちらかの値を超えれば、国の非常事態宣言を受けることになるというのが、このブログでの判断である。

 京都市民としては、どちらかの指標が基準値以下でとどまって欲しいと思われる。つまりギリギリで踏ん張れといいたい。

 そうなるとこのデータにでていない深刻な京都の状況、おそらくサーベリングできない感染者数が8割に登ったというのが要請理由だが、それは、データが公開されていないので、このブログでは考察できない。

京都新聞4月11日WEB版の社説は以下のように述べている。

「私権制限も伴う緊急事態宣言は、感染拡大防止へ最後の手段である。その対象地域に加わることの意味や理由、暮らしへの影響などについて、知事は具体的に語らなければならない。京都での感染がどんな現状にあるのか、科学的根拠を示す必要もある。同じく対象地域入りを求めた愛知県の動きに便乗したとみなされれば、府民の理解は得られまい。」

 私は、北海道が独自の宣言で一定の効果をみていることを考えれば、数値から見れば府独自の宣言の可能性があると考えている。ただし宣言には、いつから、いつまでとする期間の提示が必要である。終わりの日時が見えているからこそ、府民も努力しようという行動に結びつく。今後の感染者数増加次第で国の緊急事態宣言を受け入れる可能性もあるだろうけど・・・。それは京都が、大阪府、兵庫県との近接県だから関西の圏域で規制した方が効果的だとする別の考え方の導入だろう。

 また「緊急事態と同等」とする府知事の言葉は意味不明。同等なら緊急事態宣言を既に受けて入れているはずだし、そうしていないのであれば同等ではない。そんな論旨のない言葉を行政が発するあたりに、京都市民の共通認識なのだけど、いいかげんな行政の街京都、という言葉を思い出す。

 府知事といい京都市長といい、どうも愛知県の申請に便乗したとする報道の見方もあり、私にいわせれば腰がすわっていないと感じられる。今日時点での考察になるが、もし発令するならば北海道のように、そして既に愛知県が発令したように、自治体としての緊急事態宣言だろう。先ずは、週明けの京都府の感染状況をみてみたいと思われる。

 

表1. 政令指定都市別感染患者累積数

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国外の発生状況、国内における都道府県別の患者報告数

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10521.html

 

京都市清水寺

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番外編426. COVID-19に関する主要国感染患者数累計値の推移について その3.

2020年04月09日 | analysis

 

 4月8日19時に7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡)の緊急警戒宣言が政府から発令された。

 この行く末はしばらくおいといて、G7国家に中国を加え患者数推移をみたのが図1である。

 図1には★印で都市封鎖を開始した日付をいれた。具体的には、中国武鑑(1/23)、イタリア(3/9)、スペイン(3/14)、フランス・ドイツ(3/17)、米国NY(3/22)、イギリス(3/23)である。これを前提とすれば、各国の感染患者の発生数が低減するのは、4月の中・下旬以降となると予想している。したがってまだ都市封鎖の効果は出ておらず、感染患者数はほぼ一定の線形で増加をしている。

 最近のヨーロッパでは、死者数や入院患者数値が低減しだしたとする報道もあり、今後感染患者数が低減する可能性もあるのだろう。だが現状では患者数の低減はみられない。都市封鎖の効果があるのか、ないのか、もう少ししたらわかるだろう。

 最下値は日本の感染患者数である。日本の値が著しく低値なのは検査方法の違いによるものだとみられる。例えばドイツの検問のようにランダムにドライバーに検査を実施する方法であれば、当然発見される患者数は増えることになる。これに対して日本は後付けで報告された感染者からクラスターを発見してその周囲を囲い込むようにウィルス検査をしているので、当然ドイツなどに比べれば検査した数も発見された患者数も低くなる。

 言い換えれば日本では、まだ発見されない、そして自らが気がついていない隠れ感染者が欧米諸国より多いということになると推測できる。そんな状況で自粛規制がどれほどの効果があるかは、1ヶ月後にわかるだろう。

 

 表1は、感染患者数累積値であり図1の元データである。最初の値が1以上になった時点で感染患者が発生し始め、そして赤字で示したのが都市封鎖日である。解除されれば黒字に戻している。各国の封鎖効果と感染患者数累計値がわかる。

 この表から中国武鑑市では、最初に2019年12月29日に7人の発症をみて、25日目の2020年1月23日に同市の都市封鎖をおこない、感染拡大がとまったのが64日目の3月19日、102日目の4月8日に同市の封鎖解除をおこなうことができた。封鎖期間は77日間、発症から終息まで3.4ヶ月を要した事がわかる。

 欧米諸国も概ね最初の発症から30日以内に都市封鎖をおこなっており、日本だけが発症(1月22日)から76日目に都市封鎖よりは、規制が緩い緊急事態宣言を発している。

 仮に日本に中国同様の期間を設定すると、25日目の2月16日が封鎖開始日、102日目の5月2日が封鎖解除にあたることになる。しかし実際の封鎖開始日は、76日目の4月7日であり中国に遅れること51日である。

 このことを考えれば日本の対応は、あまりにも遅い決断、緩い規制、少なすぎる検査数、のどれをとっても中国や欧米諸国と比較すれば、それらの国以下の低水準であることがわかる。はたして遅すぎた日本の警戒宣言がどの程度の効果を持つかは疑問点が多いし、今後を考えると警戒宣言の延長や、複数回の宣言が出される可能性を予想せざるを得ない。いずれにしろ、遅すぎた宣言、緩い規制、少なすぎる検査数が、今の懸念材料ではなかろうか。

 さて、こうしたデータを通じて得られた知見は、死者数を伴う拡大する感染症の場合は、最初の国内発症から1ヶ月以内に都市封鎖などの施策、都市封鎖期間は80日〜90日、発症から収束まで3.4〜4ヶ月とする感染症の施策上のガイドラインがみえるのではなかろうか。中国のデータは信頼性に欠けるが、それでも封鎖と解除の日にちは報道されているので、中国なりのMaxの感染状態下で国家的な統制をおこないつつ、この日数がかかったということは理解されよう。

 

図1. G7国家+中国の新型肺炎患者数(累積)の推移図

 

表1. G7国家+中国の新型肺炎患者数(累積)の推移表

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国外の発生状況、国内における都道府県別の患者報告数2020年1月29日〜4月7日   

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10521.html

 

京都市東山区高台寺

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番外編425. 政令指定都市がある県別新型肺炎感染者数の推移について、その2.

2020年04月05日 | analysis

 

 木をみて森をみる、という言葉がある。

 木とは一人一人の人間の事であり、森とはそうした人間達の集団である。ところで、森をみるという言葉に私は関心を持つ。というのも私が大学で教えてきた都市計画は、まさに森をみる、つまり集団の学問だからだ。そんな研究者の立場は、少ながらずこうした新型肺炎の拡大に関心をもっている。

 さて私の関心を持つある現象が起きた。

 それは、横浜港クルーズ船で陰性と判定され、社会に戻ったころ陽性で隔離されたケースがあった。こうした要因は、その後の社会で感染されたのか、PCR検査の精度はどれほどのものか、の2点に疑問が発生する。

 そんなことを考えていたら興味深い報告を発見した。横浜のクルーズ船の感染者104症例の治療に当たったチームの治療経過だ。その一節を引用しよう。

「・・・入院時、無症候性陽性者41.3%、重症例26.9%・・・退院確認時の2回連続のPCR検査も、1度目は陰性であるにもかかわらず、2回目が陽性となる症例を数多く経験した。PCR検査の感度はさほど高くないのではないかと考えられた。明確な検討はできていないまでも、感覚的には70%程度ではないかと思われる。・・・当院で経験したクルーズ船からの症例の約86.5%は軽症のまま軽快した。しかしながら13.5%の症例に酸素投与が必要であった・・・」

出典:自衛隊中央病院感染対処隊診療部:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)について

https://www.mod.go.jp/gsdf/chosp/page/report.html

 このことから我が国は、CTを併用して診断の精度をあげてきたので、諸外国と比較しても感染数がひくいことがわかる。さらに軽症患者が相当数いることである。しかし誰が軽症のなのかは経過観察を続けないとわからない。そのあたりに新型肺炎の複雑な特性があるといえよう。

 報告にあった検査精度が70%程度とは、陽性、陰性の他に、疑似陽性、疑似陰性がおり、疑似陽性者は隔離されるとしても、疑似陰性者は私達の回りで暮らし、そのことが健康である場合も、また今後陽性に変わる場合もあるとする社会的な入れ子構造だとみられる。

 こうした事情が感染を社会的に複雑なものにしている。つまり隔離病棟にいても健康な人がおり、発熱が続き入院したくても待たされるジレンマが生じる。それが伝え聞くに及び、噂や憶測や妄想を伴って社会へ拡散し、論拠のない話がWEBサイトをはじめとして大量に発生してくる。だから現在は、陽性であっても自宅待機で発熱が続いたら入院隔離という手段が執られている。

 さてブログ2回目の日本政府の感染者数の報道発表データを以下にまとめた。前回報告同様に全体の大きな傾向は変わらない。つまり感染は拡大基調にあり、特に東京が突出し大阪がこれに続こうとしている。感染経路が比較的把握できていれば、まだ社会的には拡大期だ。次の蔓延期だと保険所・医療の崩壊状態になる。そして北海道の入院患者数が、ゆるやかに低減を続けている。やはり早期に警戒宣言を道庁が発令したのが好結果につながっている。

 今日は、新しい表3を加えた。

 表3は、各県の人口規模が違うので患者数だけで一律に論じることはできない。そこで人口のバラツキを揃えるために人口1000人当たりの感染患者数を算出したものである。表の最右欄がそれである。合わせて国別の値も下段に表示した。

 先ず政令指定都市をおく各県の指標値をみると、最大値から東京(0.051)、愛知(0.039)、大阪(0.035)、北海道(0.034)、兵庫・京都(0.030)となっている。

 さらに先進主要七ヶ国あたりと比較すると、最大値からみると、スペイン(2.187)、イタリア(1.824)、ドイツ(0.937)、フランス(0.877)、英国(0.493)、米国(0.065)、中国(0.057)、日本(0.019)の順となる。スペイン、イタリアが大変深刻な事態であることはわかり、ヨーロッパ諸国では、既に拡大ステージから蔓延ステージにはいっている。

 日本政府が、非常事態宣言出すのはまだであるとする判断は、1つにはこの表が頭にあるからだろう。たしかに他国より指標値は低いが、それだけの理由で傍観していてよいのかとする第一の疑問。そして属地的な傾向がつよい感染症を人口1000人単位で換算することが適切かとする第二の疑問が発生する。

 既にアメリカでは指標値が低くても非常事態宣言下にあり外出制限と入国制限を設けている。感染源である中国は、オーバーシュートをしても14億の人口規模が背後にあるため、人口1000人当たりの数値は米国より低い。このようにみてくれば、こんな数値は参照するのに値しない。

 さて日本政府は、感染者数が1万人を越えないと警戒宣言を発しないのだろうか。そもそも警戒宣言自体が罰則もなく自粛要請程度であり、その程度で有効なのだろうかと疑問に思うが、もったいぶるほどの施策ではない。

 それに患者数は、保健所や医療現場の崩壊が起きれば、数日で1万人規模の感染者となるだろう。それを低減な値に押さえているのが日本の医療現場であり、保健所や行政の囲い込み作戦や自粛要請だ。今の段階で少なくとも東京都は、期限を定めて2週間の警戒宣言(海外と比較すると罰則もなく極めて緩い宣言ですが)を発すべきだと私は考えている。

 北海道の事例は、早く宣言をだし人の移動を制限したほうが、感染者数の増加を抑えられることを教えてくれている。この先オーバーシュートが予測される場合には、東京は、明日にでも非常事態宣言を出すべきであり、その方が感染収束後の経済などの社会の復旧もすみやかにできるだろう。新型肺炎に関する施策は、早ければ早いほど効果的であり、遅いほど効果は薄いということだ。

 新型肺炎は、時間との闘いであって、オーバーシュートする前に素早い決断と実行が不可欠だ。だから人口1000人当たりといった数値に、私は意味があるとは思われない。そんな施策が手遅れでなければ効果も上がるだろう。だがもし手遅れだとしたら策がない。つまり日本は、スペインやイタリアのようになる可能性を高めるだろう。

 先ずは、現状の感染を瀬戸際で低値に押さえ込んでいる日本の医療関係者、保健所関係者、自治体関係者にエールを送りたい。まさに"頑張れ、ニッポン!"なのであるが、既にそんな悠長な事がいえる時ではないということが、表図から読み取れるのではなかろうか。

 

表1.政令指定都市がある県別新型コロナウイルス感染症の累計患者数の推移(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)

図1.政令指定都市別新型コロナウイルス感染症の累計患者数の推移

 

表2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)2020年3月19日〜3月28日

図2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移グラフ

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国内における都道府県別の患者報告数2020年1月29日〜4月2日   

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10521.html

          

          表3.人口1000人当たりの感染患者数

(記:2020年4月4日)

 

京都市

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番外編424. 政令指定都市がある県別新型肺炎感染者数の推移について、その1

2020年03月31日 | analysis

 

 新型肺炎の感染が今後どうなるかを予測するとき、これまでどのように推移してきたかを探るのが唯一の手がかりだ。そこで厚生労働省が報道発表しているWEBサイト「新型コロナウィルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」では、国内全体の状況について閉庁日を除き患者数のデータが毎日発表されている。

 合わせてこのサイトでは、2020年1月29日より都道府県別の累計患者数を掲載し、同年3月19日より、この内訳状況のデータをアップさせるようになった。

 そこでこのブログでは、感染者数が顕著な政令指定都市に着目した。現在20都市16都道府県がそうである。そこでこの16都道府県の推移について国のデータをもとに集計してみた。

 厚生労働省のデータは時系列ではないのでWEBサイトから数値を拾い出し、時系列で、この政令指定都市かせある県別に累計患者数の推移をデータベース化したのが以下の表1の累計患者数の推移である。さらにこれを図化したのが図1である。累計値である以上、水平もしくは右肩上がりのグラフにしかならない点に注意されたい。水平推移は、同値か低減(低減はグラフには現れない)している場合、患者数が日々増えてゆけば右肩上がりの増大となり、この傾きが急であれば、急激に患者数が増えてゆく状態をあらわす。

 図1は、3月28日に一様に急激な増加傾向を示したのが、(27日人数:28日人数)でみたのが、東京都(227人:368人)、大阪(136人:192人)、愛知(147人:164人)、兵庫(87人:125人)、千葉県(54人:126人)である。

 表1及び図1は、累計値のため実数値の推移がわからない。そこで同省が3月19日より公開している政令指定都市別日別入院感染患者数を元にして作成した経緯が表2の入院感染患者数推移である。これは患者数累計から退院数等を減じたもので、現在の入院感染患者数を示している。この推移を図化したのが図2である。これらの表図の方が最新傾向を示している。

 図2をみると、2020年3月28日時点で入院感染患者数が増大しているのは、最大値側から(27日人数:28日人数)で示すと、東京都(193人:327人)、大阪府(111人:142人)、埼玉県(51人:106人)、愛知(90人:103人)、兵庫(80人:99人)、千葉県(42人:60人)の順でありいずれも増大推移である。これに対して低減推移が北海道(47人:44人)が顕著であり、いち早く緊急事態宣言(2月28日〜3月19日)をおこない感染防止効果をあげていることがわかる。それら以外の他の都市は、増大も低減も値の変動が小さい。

 このことから、増大推移タイプ、減少推移タイプ、そして入院感染患者数20人以下と42人以上との間に開きがあり、推移傾向も異なっていることから入院感染患者数20人のところに破線をいれ、これ以下を低値水平移動タイプとした。つまり増大推移タイプ、減少推移タイプグ、低値水平推移タイプの3タイプに分類できることがわかった。

 現時点では、この破線以下であれば感染数も少なく拡大もしていない自治体である。そこでこのタイプの政令指定都市をあげると次のようになる。

静岡県・宮城県(1人:1人)、岡山県(1人:2人)、広島県(3人:3人)、熊本県(7人:7人)、さらに今後数値が低減すれば新潟県(17人)が含まれる。他方で今後このタイプから増大傾向に転じつつあるのが京都府(20人:24人)、福岡県(10人:19人)となる。また3月28日時点で入院感染患者を発生していない政令都市以外では、岩手、山形、富山、鳥取、島根の5県がある。

 つまり北海道を除けば、その他の自治体は終息の過程には全くあらず、いまだ拡大基調であり、終息への道筋もみいだせない状況だといえる。

 そうなると政令指定都市ごとの感染患者数にあわせた施策が必要である。特に東京都の値をみると患者数が急激に増加しており、自粛で効果がでるのか疑問視される。ロックアウトは、外出禁止のみならず交通機関をすべて遮断。飛行機、鉄道、自動車、そして東京に通じる道路は細街路にいたるまで、物流の車以外は、すべて2週間、遮断する位の政策が必要だと東京都は考えたのだろう。

 さらに今後低値水平推移タイプの自治体が安全かというと必ずしもそうではなく、表1をみると低値の自治体にも感染患者数が次第にゆるやかに増えてゆく様相がみてとれる。政府専門家委員会が指摘しているように新型肺炎感染は、終息まで今後もしばらく続く。感染の速度をできるだけ遅らせながら時間を稼ぎ、ワクチンの登場を待つほかないのが現状である。

 

 

表1.政令指定都市がある県別新型コロナウイルス感染症の累計患者数の推移(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国内における都道府県別の患者報告数2020年1月29日〜3月28日   

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10521.html

図1.政令指定都市別新型コロナウイルス感染症の累計患者数の推移

 

表2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移(無症状病原体保有者を除く)(単位:人)2020年3月19日〜3月28日

依拠:厚生労働省WEBサイト、新型コロナウィルス感染症の状況と厚生労働省の対応について、国内における都道府県別の患者報告数2020年3月19日〜3月28日   

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10521.html

図2.政令指定都市がある県別日別入院感染患者数推移グラフ

(記:2020年3月30日)

追記

 通例の市販の消毒薬は、ウィルスを殺菌しない。

 手元にいくつかの消毒薬があるが病院で使われているウェルパスでも「ウィルスを不活性化に押さえる」という表記がボトルにあり、殺菌するわけではない。業務用のベンザルコニウム塩化物消毒液やオスバンSなども「大部分のウィルスに対する殺菌効果は期待できない」とボトルに書いてある。消毒薬は法令で設置を義務づけられているので飲食店などにおかれているが、効果は、効くかもしれないし効かないかもしれないというものです。

 バリエールN95のサージカルマスク。これはウィルスを95%まで除去。ただし息苦しいので長時間つけるものではないです。それ以外のマスクがどれほど効果があるかは、私にはわかわりません。しかし取りあえずマスクをつけていれば、水面下の感染者の囲い込みに貢献している可能性を期待したい。

 もう一つ感染者は、2週間以内の行動を調査される。そこで浮かび上がった密閉空間で滞留密度が高い部分を抽出し感染源と特定できると、その場に居合わせた人達全てを検査する。こうした囲い込みによって感染拡大は防げる。和歌山のクラスターの時は、法令範囲を飛び越えて、症状がない人達まで検査し隠れ保菌者を発掘できた。では隠れ保菌者が補足できなかったらどうするか。

  例えば、○月×日のぞみN号7号車に感染者が乗っていたことがわかったならば、そのことをテレビ報道し、同時期同車両乗客自らが保健所へ出頭してPCR検査を受けられます・・・、という施策やテレビ報道を、私は見たことがない。医療現場や保健所などと連携して、テレビを隠れ保菌者発掘による感染拡大阻止の手段として使う方法もあるだろう

 おそらく国は、既に患者発生数を少なくとも1週間前に予測していたとみられる。その予測式は、統計的推移では算出できないので、数理モデルで算出したと思われる。常微分方程式をはじめいくつかの数理モデルがある。日本感染症学会の学術論文をひけば、方程式があるだろう。気がかりならば数理モデルを使用して、皆さんで計算してみてはいかがですか。そのためのデータの一部を集約してみました。

 

京都市

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ZEISSの空気72. まだ続々・京都の冬 漏れちまったか・・・?

2020年02月22日 | analysis

 

 「小説:小樽の翠」をアップする予定でいた。

 テレビニュースをみていた。

 COVID-19が日本に入ってきたルートは、今のところ二つだけというのが救いのように思われる。一つは横浜港のクルーズ船、もう一つはチャーター便帰国者である。これら二つのルートの感染者が日本における一次感染とすれば、これらに関わった関係者が感染し二次感染、そして次第に国内にジワリと広がってゆく様相がみられる。ついにウィルスは、防疫の堤防を突破したのだろうか?。

 侵入ルートの一つ、クルーズ船の乗客。陰性であることを確認して下船していった。そうした下船者のなかで、陰性と診断されたオーストラリア人が本国で感染が確認されて隔離されている。海外では、日本から帰国した人間は、さらに14日間の隔離が義務つけられている。それが必要不可欠なのだ。クルーズ船の場合は、香港で下船した乗客が一次感染者とすれば、二次感染〜三次感染あたりだろうか。

 もう一つは、COVID-19の患者が北海道で発生したことだ。テレビニュースによれば、父と子供が感染し、ウーハンからチャーター便での帰国者だった。帰ってきたときは陰性だったという診断、そしてまずいことに、子供がいるという非科学的且つ非論理的理由で14日間の隔離を逃れ経過観察だったと報道されていた。それがメディアが伝えるとおりの事実ならば、経過観察でよいという随分と甘い行政の対応だったことになる。いったい経過観察の間に何人の人間達と接触し二次感染を広めたかは、報道されていなかった。これも防疫の堤防から漏れている。

 感染症は、そうやって、ウーハン、ウィルスの運搬者、これに接触した人々という順で感染症のセオリー通り、日本国内に広がっている疑いをぬぐいきれない。既に防疫の堤防は、超えられたのか?。

 だから私は、あっ!、漏れちまったか・・・?、と思われた。つまり現時点では、和歌山の例だけが三次感染まで進んでいるのを除けば、二次感染までしか発症していないが、今後三次、四次と感染が進むと、もう防ぎようがない。あとは個人で防御。旅で飛行機に乗るときは、サージカルマスク着用程度のことしかできない。それとてN95は呼吸がしにくいから、できるだけ避けたいところだ。もうフツーのエチケット用マスクでいいんじゃないとも思う。

 テレビをみていると、感染症の専門家の肩書きに名誉教授、特任教授が目に付く。つまり現役の研究者ではない。現役研究者はウィルス対応でメディアどころではないと推測。どんなに頑張ってもウィルス・ワクチンの開発には、少なくとも半年程度はかかるのではなかろうか。

 さて今後、感染経路のわからない3次感染者以降が登場したら、ウィルスは防疫の堤防を越えたとみてよいのだろうか?。そのあたりが流行するか低減するかの一つの見極め時だろう。

 さて、この問題も、もう少し時間が経過しないと、流行か収束かはわからない。

 もう、そんなことは他山の石として、明日こそ小説に戻ろう。今日は、筆の勢いで書いた部分もあり、アップ後の訂正が随分あった。

 

京都市、東山

SONYα6000、Carl Zeiss Vario-Tessar E 4/16-70mm

ISO100,焦点距離35mm,露出補正-0.2,f/11,1/60

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