飯守泰次郎さんの東京シティ・フィル常任指揮者としての最後の定期が終わった。1997年9月以来足かけ15年。人生のもっとも大事な時期をシティ・フィルとともに過ごしたことになる。ご苦労様でした。
この日は「チャイコフスキー交響曲全曲シリーズ」の最終回でもあった。演奏されたのは交響曲第2番「小ロシア」。全6曲の交響曲(マンフレッド交響曲を除く)のなかでこの曲を残しておいたのは、周到な計画だったのか。6曲のなかでもっともエンターテインメント性に富む曲だ。ロシア民謡があちこち登場して楽しませてくれた。シティ・フィルはこれが特別の演奏会だったせいか、張りのある、上気したような音で演奏していた。
後半はまずヴァイオリン協奏曲。ソリストの渡辺玲子さんがこの演奏会に花を添えてくれた。考えてみると、渡辺さんもデビュー当時から聴いている。昔の切れ味のよい演奏から、今はじっくり落ち着いた演奏を聴かせるようになった。アンコールにエルンストの「シューベルトの《魔王》による大奇想曲」という曲が演奏された。「魔王」のピアノ伴奏部分と声楽部分をヴァイオリン1本で弾く曲。盛んなブラヴォーが飛んだ。もっともわたしは「魔王」に不吉な予感を感じてしまった。
最後は祝典序曲「1812年」。合唱付きの版。合唱は東京シティ・フィル・コーア。もちろんこれは飯守さんの労をねぎらう出演だろう。
この日は全席完売だった。今まで入りのわるい会場で声援を送ってきた身としては、ちょっぴり皮肉を感じてしまう。全席完売とはいわないまでも、今までもっと入っていたら、またちがう展開があったかもしれない。
まあ仕方がない。飯守さんもシティ・フィルも、今後それぞれの道を歩み始める。飯守さんはさしあたり東京二期会の「パルジファル」が大きい仕事だ。以前演奏会形式でシティ・フィルとやったときもすばらしかった。今度も期待できる。
シティ・フィルは、周知のように、ガラッと個性が変わる人と組む。ポストは音楽監督。常任指揮者は空席なので、新体制は完成していないのかもしれない。そのへんの事情はわからないが、ともかくこの選択が成功することを祈るしかない。
最後に余談だが、ヴァイオリン協奏曲の演奏中に1階前方にいた年配の女性が体調を崩した。前方のドアから出ようとしたが、閉まっていたのか、出ることができず、真ん中のドアに行ったが、そこも出られず、後方のドアまで行ってやっと出ることができた。見ていて気の毒だった。
(2012.3.16.東京オペラ・シティ)
この日は「チャイコフスキー交響曲全曲シリーズ」の最終回でもあった。演奏されたのは交響曲第2番「小ロシア」。全6曲の交響曲(マンフレッド交響曲を除く)のなかでこの曲を残しておいたのは、周到な計画だったのか。6曲のなかでもっともエンターテインメント性に富む曲だ。ロシア民謡があちこち登場して楽しませてくれた。シティ・フィルはこれが特別の演奏会だったせいか、張りのある、上気したような音で演奏していた。
後半はまずヴァイオリン協奏曲。ソリストの渡辺玲子さんがこの演奏会に花を添えてくれた。考えてみると、渡辺さんもデビュー当時から聴いている。昔の切れ味のよい演奏から、今はじっくり落ち着いた演奏を聴かせるようになった。アンコールにエルンストの「シューベルトの《魔王》による大奇想曲」という曲が演奏された。「魔王」のピアノ伴奏部分と声楽部分をヴァイオリン1本で弾く曲。盛んなブラヴォーが飛んだ。もっともわたしは「魔王」に不吉な予感を感じてしまった。
最後は祝典序曲「1812年」。合唱付きの版。合唱は東京シティ・フィル・コーア。もちろんこれは飯守さんの労をねぎらう出演だろう。
この日は全席完売だった。今まで入りのわるい会場で声援を送ってきた身としては、ちょっぴり皮肉を感じてしまう。全席完売とはいわないまでも、今までもっと入っていたら、またちがう展開があったかもしれない。
まあ仕方がない。飯守さんもシティ・フィルも、今後それぞれの道を歩み始める。飯守さんはさしあたり東京二期会の「パルジファル」が大きい仕事だ。以前演奏会形式でシティ・フィルとやったときもすばらしかった。今度も期待できる。
シティ・フィルは、周知のように、ガラッと個性が変わる人と組む。ポストは音楽監督。常任指揮者は空席なので、新体制は完成していないのかもしれない。そのへんの事情はわからないが、ともかくこの選択が成功することを祈るしかない。
最後に余談だが、ヴァイオリン協奏曲の演奏中に1階前方にいた年配の女性が体調を崩した。前方のドアから出ようとしたが、閉まっていたのか、出ることができず、真ん中のドアに行ったが、そこも出られず、後方のドアまで行ってやっと出ることができた。見ていて気の毒だった。
(2012.3.16.東京オペラ・シティ)