Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

寺岡清高/大阪交響楽団

2012年03月19日 | 音楽
 毎年楽しみな「地方都市オーケストラ・フェスティヴァル」。昨日は寺岡清高さん指揮、大阪交響楽団の演奏会を聴いた。

 この演奏会は当初は児玉宏さんが振る予定だった。ところが体調不良のため、急きょ寺岡さんに代わった。ウィーン在住の寺岡さんに電話が入ったのは、先週の金曜日か土曜日だったらしい。すぐに帰国して、プログラムの一部を変更して、16日(金)の定期と昨日の東京公演をこなした。

 当初予定されていたプログラムは凝りに凝ったもので、グラズノフ、ヘンゼルト、プフィッツナーを並べていた。寺岡さんはこのうちヘンゼルトを残して(これはソリストとの関係だろう)、フランツ・シュミットを入れた。フランツ・シュミットは2010年2月の定期で取り上げたので、準備ができていた。

 まずヘンゼルト。わたしには初耳の名前だが、実は寺岡さんも知らなかったらしい。家族に「ヘンゼルトって知ってるか?」と聞いたら、「ヘンゼルとグレーテル??」と言われたそうだ。

 アドルフ・フォン・ヘンゼルト(1814~1889)。ドイツ生まれのドイツ育ちだが、1838年にロシアの宮廷ピアニストになり、当地のピアノ教育に多大な貢献をした。ラフマニノフやスクリャービンはその孫弟子にあたるそうだ。

 演奏されたのはピアノ協奏曲。これはショパンのような曲だ。黙って聴かせられたら、ショパンと思うだろう。こういう曲を聴くと、ショパンといえども、突然生まれたのではなく、その時代の子だったのだと思う。ピアノ独奏は長尾洋史さん。男っぽい雰囲気の長尾さんがショパンに似たロマンティックな曲を弾く図は面白かった。

 次はフランツ・シュミット(1874~1939)の交響曲第4番。これは待望の曲だった。メータ指揮ウィーン・フィルのCDを何度聴いたことか。その後ウェルザー=メスト指揮ロンドン・フィルのCDも出たが、ピンとこなかった。わたしにはメータ盤でなければダメだった。

 ひょんなことで、その実演を聴く機会が訪れた。この曲は単一楽章の長大な交響曲だが、内容的には4楽章構成になっている。その緩徐楽章に相当する部分の、とくに後半が、CDの記憶よりも悲痛に演奏された。メータの演奏ではもっと甘美だったような気がする。

 寺岡さんはこの曲に東日本大震災一周年の想いを込めたそうだ。あの部分にはその激情が込められていたのかもしれない。
(2012.3.18.すみだトリフォニーホール)
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