Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/都響

2012年09月04日 | 音楽
 旅の記録の途中ではあるが、昨日都響の演奏会に行ったので、とりあえずその記録を。昨日は高関健さんの指揮で「日本管弦楽の名曲とその源流」シリーズの第16回だった。

 今回の日本人作曲家は松平頼暁さん(1931-)。作曲界の長老だ。開演前に松平さんと片山杜秀さんのプレトークがあった。これがすこぶる面白かった。内容を詳細に再現することはできないが、たとえばこんなくだりがあった。

 昔から言いたいことを言ってきた、というか、オブラートでくるむことができないたちだったという文脈で――、

 松平さん「そんなことを言うなら外国で言えと言われるんですよ。でもねえ、100パーセント同質のものが集まってどうするんだと。生物だってあえて異分子が混じっている。異分子が混じっていない種は滅びるんですよ。」
 片山さん「なるほど、それで頑張っておられると。」
 松平さん「いや、頑張ってなんかいないですよ。それしかできないから。それに生物だって、あるときにほんの一つの異分子から種は生き延びるけれど、大部分の異分子はね……(笑い)。」

 飄々として、気骨があって、歯に衣を着せない長老の肉声が聞けて楽しかった

 松平さんの曲は「コンフィギュレーション」の1と2(いずれもローマ数字の大文字で表記)、そして「オーケストラのための螺旋」が演奏された。前者(とくに1)はいかにも戦後のトータル・セリエリズムの曲。後者は演奏によってはもっと面白く聴けるかもしれないと思った。真面目すぎる演奏だったような気がする。

 プログラム後半はベリオの協奏曲第2番「エコーイング・カーヴ」。これがこの日の白眉だった。これが聴けただけでも価値があった。これは実質的にはピアノ協奏曲。オーケストラが2群に分かれて配置される点がユニークだ。ピアノを囲んで通常は弦楽器がいる場所に管楽器主体のAグループ。通常は管楽器がいるひな壇に弦楽器主体のBグループ。視覚的にも驚くが、聴覚的にも驚くべき変貌だ。曲の前半はエネルギーが渦巻くスリリングな音楽が疾走し、後半は大きく息をつきながらエネルギーが次第に減衰する。

 ピアノ独奏は岡田博美さん。この曲は岡田さんでなければ弾けないのではないかと思うほどの超絶技巧だ。その岡田さんと掛け合う都響もすごい。そしてこれらの人々のなかにあって的確に交通整理をした高関さんもすごい。
(2012.9.3.東京文化会館)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする