Zooey's Diary

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「リリィ、はちみつ色の秘密」 

2009年04月08日 | 映画
派手さは少しもないが、優しい陽だまりのような映画です。
心に深い傷を持つ少女の苦しみ、人種差別問題と、扱うテーマは非常に重いのですが…

幼少期に過失で母親を死なせたトラウマを抱える14歳のリリィ(ダコタ・ファニング)。
その娘に向かって、母親はお前のことを愛してなんかいなかった、
お前を捨てたんだ、と残酷なことを告げる粗暴な父親。
父親に反発し、母親の軌跡を求めて、リリィは家を出る。
黒人三姉妹のボートライト家に身を寄せ、養蜂を手伝いながら、
自分を愛し受け入れてくれる場所を見つけていく…

原作は、全米で450万部を売り上げたスー・モンク・キッドのベストセラー小説だそうです。
時は1964年の南部、その年公民権法が設定されたが、まだまだ差別は厳しく、
映画の中でも、リリィの家の家政婦(黒人女性)が街なかで白人男性から袋叩きにあったり、リリィと一緒に映画を観たというだけの理由で、黒人少年がリンチにあったりする。
リリィ自身には差別意識はないのに、彼女に関わることで、黒人に被害が及ぶ悲劇。

しかし、この作品で胸を打たれたのは
なんといってもリリィの苦しみと孤独、そして初めて人に愛されることによって
自信を持ち、再生していく姿です。
「アイアムサム」の中で幼く可愛い少女であったダコタ・ファニングがスラリと成長し、実際にも役の上でも14歳ということで、思春期の難しい役どころを熱演しています。
そして黒人三姉妹と家政婦の圧倒的な存在感(アリシア・キーズ、ソフィー・オコネドー、ジェニファー・ハドソンなど)、人種も立場も乗り越えた絶対愛。
三姉妹の長女オーガストが、リリィに言った言葉。
「この世は大きな養蜂場。大事なのは、ハチに愛を送ること。ハチも愛されたいのよ」

特筆すべきは、主要キャスト全員がノーギャラで参加したということ。
自らも親に捨てられた経験を持つ黒人女性ジーナ・プリンス監督が、費用が足りないことを申し出ると、皆、出演料を制作費に回すことを快諾したのだそうです。
その事実を知ると、また違った感慨が出てきます。
娘を傷つける父親や、黒人を眼の仇にする白人といった悪人、
リリィを引き取り愛する黒人といった善人とくっきりと描き分けすぎていること、インパクトにやや欠けるという不満はありますが、私はこうした、人間の内面、優しさや苦しみ、その葛藤を描いた作品が好きなのだなあとつくづく思うのです。

原題は" The Secret Life of Bees"、ミツバチの秘密の生態とでもいうような意味か。
邦題は、甘すぎる嫌いはありますが、作品のイメージがよく出ています。
リリィとオーガストがミツバチの巣箱に顔を寄せる優しく暖かい写真が、この作品全体を何よりも物語っています。

☆3.5

「リリィ、はちみつ色の秘密」
コメント (4)
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