2011年アカデミー外国語映画賞&ゴールデングローブ受賞。
デンマーク、スゥエーデン映画、スサンネ・ビア監督。
デンマークの緑豊かな郊外に住む少年エリアスは、学校で陰湿ないじめを受けていた。
転校してきたクリスチャンはエリアスを助け、二人は急速に仲良くなるが
クリスチャンは、母を亡くした悲しみを爆発的な暴力に換えようとしていた。
「年中いじめられるままでいいのか?」
「おとなしくしているから舐められるんだ」
エリアスの父アントンは、アフリカの難民キャンプで医師として働いている。
平和主義の彼は、故郷に帰った時に公園で子どもを遊ばせていて
いきなり男に殴られても殴り返そうとしない。
「殴られた。だから殴った。」という息子に
「戦争はそうやって始まるんだ」と諭す。
アフリカの難民キャンプでは、毎日瀕死の重傷患者が運び込まれる。
腹部を切り開かれた妊婦、陰部を切り刻まれた少女。
それらは「ビッグマン」と呼ばれる残忍な悪党の仕業だったが
ある日、その「ビッグマン」が患者としてやって来る。
医師としてすべきことをする、と最初は黙々と治療に当たったアントンだったが
手術の甲斐なく亡くなった女性患者を凌辱する彼の言葉を聞いて我慢できなくなり、
出ていけ!と放り出す。
丸腰で放り出された悪党は、たちまち恨みに燃えた地元民に囲まれ、殴り殺される…
やられたらやり返すのか?
やられても我慢すべきなのか?
世の中には残念ながら悪い人間がいる。
善良な小市民として生きていても、いきなり理不尽な暴力が降りかかってきたら
我々はどうしたらよいのか?
時として怒りは理性を超えてしまう。
悪意に悪意で答えていたら、復讐の連鎖はどこまで続くのか…?
映画を観ながら、何度も自分に問いかけることになります。
残念ながら、映画は答えを出してはくれない。
ただ、暴力が根を張る世界に、善意が存在することも事実。
少年たちのゆるぎない友情、少年と家族との愛情、アフリカの子どもたちの笑顔。
我々は、それでも生きてゆける。
憎しみの先へと、歩き出すことがきっとできる。
恐ろしい暴力の世界から、希望の光を見い出させてくれる終盤は見事です。
しかし…
この文科省推薦版のようなこの邦題は何とかならないのでしょうか?
デンマーク語の原題は「復讐」、英語名は「in a better world」だそうです。
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