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2010年アルゼンチン映画。
ブエノスアイレスに住む主婦マリアが、パーティの用意をするシーンで話は始まります。
食事を作り、ケーキを焼き、親戚や家族をせっせともてなす。
それがマリア自身の50歳の誕生日パーティだというのだから驚いてしまう。
彼女がいかに有能な主婦で、甲斐甲斐しく尽くしてきたということがよく分かります。
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このマリアという女性、顔立ちは美しいのですが
髪型といい、着ている服といい、非常に地味な雰囲気なのです。
日本の女優で言うと、山岡久乃(古ッ!)みたい。
情熱のタンゴの国アルゼンチンにおける、この地味なヒロインにまず驚かされます。
まあそりゃ、日本にだって叶姉妹みたいな人もいる訳なのですが。
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マリアは夫から愛され、息子たちも立派に成長し、幸せな日々を送っているのですが
どこか物足りない、という気持ちも持っている。
そんな彼女がジグソーパズルに出逢い、自分の才能に気付き、どんどん嵌っていく。
そして同好の士と出会い、二人でジグソーパズル大会を目指すことになる。
この相手が人品卑しからぬ紳士で、しかも独身の富豪なのです。
マリアの気持ちを尊重し、敬意を払って優しく接してくれる。
世間知らずのマリアは最初警戒しながら、次第に心を許し、ほのかな恋心を持つようになる。
マリアの気持ち、物足りない感、閉塞感というようなものは、
同じ年頃、同じような境遇の私には、痛いほどによくわかります。
ただ、この監督の描き方というのは、あくまで控え目なのです。
突然世界が輝きだす訳でも、ファンファーレが鳴り響く訳でもない。
淡々と日常をこなし、せいぜいシャワーで身体のすみずみまで洗ったり、
着る服が僅かにお洒落になるくらいか(それでも地味なんですね、この人は)。
そして二人は国内大会で優勝し、ドイツでの国際大会への切符を勝ち取るのです。
その優勝した日、ついに二人は身体を重ねるのですが…
その後マリアが取った行動は
物足りないようでもあり、肩すかしを食らったようでもあり。
それは控え目で賢明な選択であるともいえますが
あるいはマリアのずるさ、したたかさを表しているのかもしれない。
結局マリアの自分探しの旅に、富豪紳士も利用されただけなのかもと思います。
マリアの人生というジグソーパズルを完成させる為の、その一片に過ぎなかったのかと。
派手な映画ではなく、むしろ地味すぎるくらいの作品です。
しかし、地球の裏側にも自分と同じような気持ちを抱えた女性がいて
笑ったり悩んだり泣いたりしているのだなあと思うのは、中々楽しいものです。
「幸せパズル」 http://www.shiawase-puzzle.com/