Zooey's Diary

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「少年と自転車」

2012年11月19日 | 映画


ベルギーのダルデンヌ兄弟監督が、03年に来日した折に聞いた、
施設に預けられた少年が親の迎えを待ち続けたという話に着想を得て制作されたという。
切ない作品でした。

12歳の少年シリルは、ある日突然、父親に捨てられる。
何の説明もなく。
彼はどうにも納得できず、ホーム(児童養護施設)にいても
ひたすら父親を探し求める。

父親というのが、どうしようもない無責任男。
たった一人の息子にひたむきに慕われても
受けとめるどころか、平気で裏切る。
息子の大事な自転車を黙って売り飛ばし、行方をくらます。

そんな男であっても、シリルにとってはかけがえのない父親なのですねえ。
他の大人に対しては散々生意気で反抗的な態度を取るくせに
ようやく探し当てた父親の前では借りてきた猫のように大人しく、
聞きわけのよい子どもになる。
なんとか親に捨てられたくないという思いが見られて
痛ましくなるほどに。
しかし父親は、俺には(子どもの)面倒を見切れない、もう来るなと言い放つ。



父親に捨てられたということがはっきり分かってしまったシリルは
自傷行為に走る。
街のごろつきの密売人に目をつけられ、犯罪行為に引き込まれる。
無垢な少年が堕ちて行く様が、ありありと見て取れるのです。
しかし、では愛情をこめて良くしてやれば少年は立ち直るかといえば
そこが子どもの難しいところ。
里親サマンサの愛情は空回りするばかり。



赤の他人で、たまたま週末の里親を頼まれた美容師サマンサが
何故あそこまで少年にしてやるのか理解できないという声もあるようですが
それはもう、彼女にも理解できないのではないか。
母性本能というか、彼女の一本気というか。
俺を取るのか、その子を取るのかと迫る情けない恋人も捨て、
少年の犯した罪の賠償金まで潔く引き受けるのですから。

最後に少年が高い樹から落ちるシーン。
死んだかのように見えた少年は、誰の手も借りず、よろよろと起きあがる。
汚れた衣服を手で払い、顔の泥を拭い、立ち上がって歩き出す。
それまで散々生意気な態度を取ってばかりで可愛気のなかった少年が
あまりにも無防備で痛々しく、抱きしめてやりたくなります。
そこで唐突に映画は終わるのですが
あそこで彼はそれまでの自分を脱ぎ捨て、
再生の道を歩き出したのだろうという、確かな未来を感じることができるのです。

2011年ベルギー映画  http://www.bitters.co.jp/jitensha/


コメント (3)
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