Zooey's Diary

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ジェームズ・アイボリー監督の「最終目的地」

2013年05月09日 | 映画


「眺めのいい部屋」「日の名残り」などを手掛けた巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督の
久しぶりの最新作と聞けば、これはやはり観ない訳にはいきません。
南米ウルグアイの、そのまた辺境の地オチョ・リオス、そこの古びた邸宅に暮らす
亡き作家とその妻、愛人、作家の兄とそのゲイの恋人。
そこに一人の青年が現れ、止まっていた時間が静かに流れ出す。

一冊の傑作だけを残して自殺した高名な作家。
その正式な伝記を書きたいと現れたイラン系アメリカ人の青年、オマー。
辺境の地にあって古びてはいても瀟洒な邸宅に暮らすのは
作家の妻(ローラ・リニー)、作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)とその娘、
作家の兄(アンソニー・ホプキンス)、その歳の離れたゲイの恋人(真田広之)。
その4人が一緒に暮らすって、どれだけドロドロした人間関係かと思ったのですが…



オマーは研究奨励金の為もあり、敬愛する作家の伝記をどうしても書きたい。
しかしこの青年、どうも自分に自信がなく、はるばる南米にまで来ても迷ってる節がある。
かたや屋敷に暮らす作家の遺族は、表面的には静かに暮らしているが
それぞれが孤独を抱え、人生に迷いがある。
オマーの出現により、その立ち位置が微妙に動き出したところに、
オマーを追いかけて恋人がアメリカからやって来る。
それがまた、自信満々でまるで空気が読めない女と来ていて…



その6人の掛け合い、やり取りがなんとも味わいがあるのです。
こんなに複雑な人間関係なのにあくまでも上品なのは
それぞれが矜持を持って生きているからか。
南米の緑したたる辺境の地、朽ちかけた邸宅、前世紀の遺物のような農園。
マダム然としたドレスを着た貫禄の未亡人、
少女のようなワンピースを着た儚げな愛人、
超然としているようで、恋人の人生を台無しにしたのではないかと悩む老人、
15歳の時から25年間彼と暮らしているというその恋人。
そこに飛び込んできた悩める男と、対照的なその彼女。
もの悲しいギターの音色に包まれて淡々と進む、上質な文芸作品です。
そういう意味では、実にジェームズ・アイボリー監督らしいといえるでしょう。

映画『最終目的地』予告編


最終目的地 http://www.u-picc.com/saishu/
コメント
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