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Zooey's Diary

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「キネマの神様」

2020年01月18日 | 

原田マハの父親が「しょうがない人」に出て来る父親だと知って
彼女の著による父親像を、どうしても読んでみたくなりました。
で、この本。
「長いあいだ書きたかった物語をようやく書き上げた」と原田マハが言うこの本は
まさにその父親についての物語なのです。


39歳独身の歩が、不当な理由で長年勤めた会社を辞めることになったところに、
父が倒れたという知らせが届く。映画とギャンブルが趣味という父親には、多額の借金があった。
その父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩は編集部に採用される。
そして父も、映画ブログを展開することになるのだが、やがて奇跡が訪れる。


”この物語は限りなく私小説に近い。もっと細かく言うと、導入部から三分の一はほぼ自分の体験に基づいて描いている。私の父は現在八十二歳だが、かつては大変なギャンブル好きで、そのためにいつも借金を重ねていた(中略)
確かにどうしようもない、けれどどうしようもなく愛すべき存在として、この父の人となりを書き留めておきたい。そんな思いがあった。”


そして残り三分の二はファンタジーであるらしいのですが、これが面白かった。
何より、映画好きな父親のことを書いているだけあって、映画の名前が次々に出て来る。
それが私も好きな映画ばかりで、読むほどにその情景が浮かんでくる。
その映画への愛と親子の愛(あるいは憎しみ)とが、見事に絡まっています。


惜しむらくは、歩がチラシに裏に書きつけ、それを読んだ父親が勝手に投稿したという感想文が、私にはそれほど感動的な文章には思えませんでした。
それを読んだ「映友」の編集長が惚れこんで、一発で歩を編集部に採用したというのに。
しかし、その後に出現する謎のブロガーと父親との、映画についてのブログ上のやり取りはつくづくと面白い。
映画館の何処かにいるという「キネマの神様」が、この親子にどんな奇跡を与えてくれたか?
それは是非、御自分でお確かめ下さい。


原田マハの父親は確かにギャンブル狂で借金まみれの、どうしようもない、
しかし原田宗典の小説に出て来る父親よりは、愛すべき人物でした。


父の人生に願いをこめて
キネマの神様

コメント
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