Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

今週読んだ3冊「革命前夜」他

2021年06月20日 | 
「革命前夜」須賀しのぶ著。
東西ドイツのベルリンの壁崩壊の時代に、東ドイツにピアノ留学をした日本人眞山は、ドレスデンの音大で自分の音を求めてあがく。
才能あふれる友人たちに翻弄される中、ある時、教会で神の啓示のようなバッハに出会う。
その美貌のオルガン奏者に心を奪われるが、彼女は国家保安省の監視対象だった。
当時の東ドイツの物資の貧しさ、監視社会の絶望的な窮屈さ、友人さえ信用できない裏切りにつぐ裏切りの恐ろしさ。
”この国の人間関係は二つしかない。
 密告しないか、するか。”
映画「善き人のためのソナタ」や「東ベルリンから来た女」「僕たちは希望という名の列車に乗った」などで、ドイツ人の監督たちが緻密に描いてきた、触れると手が切れそうな緊張感あふれる世界がそこにあって驚きました。
経歴を見る限り、特にドイツに関係があるわけでもなさそうな著者の取材力や想像力に舌を巻きました。
大藪春彦賞受賞作。



「ときどき旅に出るカフェ」近藤史恵著。
主人公の女性は、元同僚の店主が旅先で見つけてきた珍しいスィーツなどを再現して出すカフェを見つけます。
苺のスープ、ロシア風ツップクーヘン、アルムドゥドラー(オーストリアのハーブソーダ水)、ドボシュトルタ(ハンガリーのバターケーキ)など。
そういったものを食べながら、主人公や店主の周りの人間関係の機微が描かれます。
トルコのバクラヴァの章では、こんなにも甘い食べ物が世の中にあることを知って、店主のスィーツに対する罪悪感が軽減されたというくだりで笑ってしまいました。



「スーツケースの半分は」近藤史恵著。
幸運をよぶという青いスーツケースにまつわる短編集。
三十歳を目前にした真美は、フリーマーケットで見つけた青いスーツケースに一目惚れ、衝動買いをしてしまう。
夫に憧れのニューヨークに行こうと提案すると、休みが取れない、定年後でいいじゃないかと言われる。
引っ込み思案だった彼女は夫の反対を押し切り、NYへ初めての一人旅を決意する…。
旅は勿論、楽しいことばかりではない。
この短編集の中でも、旅、それにまつわる人間関係のドロドロも、著者はクールに描いています。
食レポでパリを訪れたライターの悠子が、友人から紹介された女性に会うシーン。
”この子は、会話に棘を潜ませてくるタイプの人間だ。一見にこやかだが、隙を見せたら攻撃するつもりなのが、わかる”といった具合。
旅という言葉を借りた、女性たちの生き方にまつわる短編集です。
そう、一歩踏み出せば、誰だって何処にだって行けるのだから。
コロナ禍の今となっては、夢物語になってしまいましたが…。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする