Zooey's Diary

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「Butter」木島佳苗事件

2021年06月15日 | 

2009年の木島佳苗の連続不審死事件を題材にしている小説というので、興味を持ちました。
若くも美しくもない容疑者に、男性たちは何故次々と殺されたのか?
スクープを狙って彼女を取材する女性記者、里佳は、拘置所にいる容疑者に何度も面会し、実家も訪問し、周りを丹念に調べ上げて彼女の心情に迫ろうとします。
東電OL殺人事件を描いた桐野夏生の「グロテスク」のようなものを期待したのですが、あそこまでの容赦のなさはなかったかな。
女の醜い部分を描こうとして、そのためらい傷に驚いて少々引いてしまったような印象があります。
とは言っても、欲望に忠実な容疑者と、取材する女性記者とその友人のコンプレックスまみれの内面をこれでもかとえぐって、ざらりとした後味の悪い思いが残ります。

”「男性は本来、ふくよかで豊満な女性が好きです。男性といっても、精神的に大人で裕福でゆとりのある本物の男性という意味ですが。痩せた子供のような体系の女性が好きだという男性は自分自身がなく、例外なく卑屈で、性的にも精神的にも成熟しておらず、金銭面でも余裕がない方が多いんです」
自分を受け入れない人間は視界に入れない。そうすれば、いつも自信満々でいられるという訳か。そうか、彼女につきまとう、樟脳のような匂いは、年配の裕福な男とばかり付き合っていた女特有のものだ。
どんなにブログで豊かな生活を見せびらかされても、少しも羨ましいと思えないのは、すべてが前近代的で、強者主導の記号化された富だからだ。”
これは、拘置所にいる容疑者の発言と、女性記者の思いです。

”「彼女を好きだというやつを、俺は同級生に一人も知らないんです。これだけ長い間、そばで暮らしていたのに、異性に好意を寄せられる姿を一度も見ていないというのは、ちょっと異常だと思いませんか?」
何の悪気もなく、彼は首を傾げた。
これだ、と里佳は目を見開く。
彼女が頑なに目をそらしてきたものの一つ。同年代の平均的な価値観を持つ男の、まっすぐで遠慮がないこうした評価だ。
同世代の異性の無関心は、最も辛いものだったのではないだろうか。”

こういった女の闘いが延々と続くのですが、最後がちょっと拍子抜け。
あくまでも木島事件を題材にしたフィクションということで、何処までが本当で何処までが創作なのか気になるところでもあります。
何故、題名がButterというのか?
それは読むと分かるのですが、バターと「ちびくろサンボ」に拘り過ぎているような印象も。
両者がしつこく出てきて、ちょっと食傷気味です。

「Butter」


コメント (6)
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