Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「希望の灯り」

2019年04月18日 | 映画


ライプチヒの郊外、コストコのような巨大スーパーマーケットで
無口な青年クリスティアンは、在庫管理係として働き始めます。
首や腕に一面に入れてあるタトゥーを、長袖のシャツで隠して。
この男、とにかく喋らない。
最初のうち話しかけられても返事もしないので、口が利けないのかと思ったくらいです。

巨大な倉庫に高くそびえる棚、年中人工的な照明に照らされる庫内。
映画の場面は、ほぼこのスーパー内に終始します。
ワルツを踊るようにフォークリフトが通路を行き交い、「美しき青きドナウ」や
「G戦場のアリア」がそこに流れる。
いかにも訳アリの無口な青年と、武骨な同僚たち、影のある年上の人妻。
舞台は完璧に整えられ、そこで何が起きるのかと私は期待して待っていたのです。



そこで働く彼らは、ベルリンの壁崩壊後、東西再統一によって祖国を喪失したらしい。
しかし若いクリスティアンにはとりあえず関係なく、彼は来る日も来る日も荷物を運ぶ。
休憩室で自販機のコーヒーを飲みながら同僚と交わす言葉少ない会話、
賞味期限切れの食品を持ち寄ってのクリスマス・パーティ。
社会の片隅で生きる彼らの、つつましい幸せ。
不器用なクリスチアンも少しずつその世界に慣れていき、明るい展開を期待していた所に
足元をすくわれるように、悲しみが降りかかる。
彼らは押し黙り、しかしそこからまた、いつもの毎日が始まる。



ひっそりとした静かな映画です。
多くを語らず、観る側の想像に任せているという類の。
でも私は、主人公クリスティアンの心情に、もっと寄り添いたかった。
彼には家族がいるのかいないのか、どんな家に生まれてどんな風に育ったのか、
最初から無口だったのか、そうでなかったのか、
その青い瞳に、どういった悲しみをたたえていたのか、
そういったことが知りたかった。
つくづく私は、わかりやすい映画が好きなのだと思います。
年上の人妻役、何処かで見た顔だと思ったら、「ありがとうトニ・エルドマン」の
サンドラ・フラーでした。
原題は”In the Aisles"(通路で)。

「希望の灯り」 http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あっとビックリ「私のお父さん」 | トップ | 薔薇窓、よかった »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿