参りました。
麻薬と貧困と暴力の、果てしない残酷物語。
直木賞・山本周五郎賞受賞。
何度も鳥肌を立てながらも550ページの長編を最後まで読んだのは、アステカ文明への信仰がこのストーリーにどう関わるのかを確認したかったからです。
3年前、コロナ襲来の直前メキシコに行った際に、私はアステカ文明についての本を夢中で読んだのでした。
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロは、対立組織との抗争の果てにジャカルタに逃げ、日本人の臓器ブローカーに出会う。日本に生まれ育ち、虐待された挙句に両親を殺した少年コシモは、その並外れた体格と格闘能力をバルミロに見込まれて、殺し屋として雇われる。アステカ文明への信仰を持つバルミロとコシモの人生が臓器シンジケートという闇の世界で交わり、破滅へと突き進んでいく…
1996年、麻薬カルテルに支配されているメキシコの田舎町から、17歳の少女ルシアが逃げ出す場面から物語は始まります。
ルシアの兄は、麻薬密売人の手を借りずにアメリカへの不法入国を企て、売人からむごたらしく殺されてしまう。
”両目を抉り出され、舌を切断され、手足を切り落とされて全裸で路上に転がされていた”というのです。
ルシアは南メキシコのアカプルコで稼いだ後、日本へと逃げ、暴力団員の男と一緒に住むようになる。
薬中になった彼女から生まれ、育児放棄されて学校にも行かずに野生児のように育ったのが、前述の少年コシモです。
”神殿、群立する巨大な階段ピラミッド、その頂上で夜明けからずっと儀式が執り行われていた。神々の為にいけにえが捧げられていた。いけにえはひたすら殺されていった。
神官たちは心臓をえぐり取った死体を、下へと突き落とした。神に食べられ、胸に穴の空いた死体は、長い階段を転がり落ち、待ち受ける係が首を切り落とした。首なしの死体を囲む人々が、腕と足を切り落とした。見ることも、触れることもできない恐ろしい存在に、いけにえの心臓と腕が捧げられようとしていた。
永遠の若さを生き、すべての闇を映し出して支配する、テスカトリポカ。”
(2016年大英博物館で)
テスカトリポカというのは、世界を創造し、アステカ神の頂点に立つとされる神。
私はこの神のマスクに以前、大英博物館で出会い、妙に心惹かれたのでした。
人間の頭蓋骨に黒曜石と翡翠のモザイクを貼り付けたという、なんとも不気味なマスクです。
そして神官が生贄の胸を切り開いて取り出した心臓を置いた、チャックモールという人型の台は、メキシコの遺跡観光のあちこちで見かけました。
メキシコの麻薬カルテル、インドネシアのヘロイン密売組織、中国黒社会の有力組織919、血で血を洗うような暴力組織が次々と登場します。
しかしそうした暴力組織よりももっと恐ろしかったのが、無戸籍児という法の穴を利用して作られた日本の臓器売買ビジネスであったとは。
アステカの人身御供と現代の麻薬カルテル、そして臓器シンジケート。
共通項は血なまぐさい残虐さか。
人間の怖さを思い知らされる小説ですが、最後にかすかな救いがあります。
『テスカトリポカ』
その残虐な内容に耐えられるか…
最後のかすかな救いがあるのなら…
ネット注文しちゃいました。
以前中国のドラゴンの凄い本がありましたが、私には読めないのかと諦めました。
一応メモしておき、いつか手に取ることが出来たらと思います。
凄い勇気!
感服しました。
是非感想をお聞かせくださいな。
面白いには面白いのです。
ただ、あまりにもグロくて残酷で…
読み終えるにはちょっと根性が要ると思います。